A drunk
なあ、聞いてるか、マリア。
あたいはさぁ、華撃団に入って本当に良かったと思ってるんだ。
小さい頃から空手浸けでさぁ、普通の親子が羨ましかったって話は前にしたよな。
何で親父はこんなことばっかさせるんだ、なぁんて幼心に思ったもんさ。
でもさぁ、今になって考えるとさ、親父も不器用だったから、自分の子供にどう接して良
いか分からなくて、ああしたのかなとも思うんだ。
でさ、親父が死んでさぁ、色々と考えた訳よ。
あたいの技は何のためにあるんだろうとかさ。
親父は武道家として死んでいったわけじゃない。
でもさ、あたいは何て言うか、武道の為に生きるってのは、良く分からないんだ。
おい、マリア。寝るなよ。
酒は飲んでも飲まれるなっていうじゃねぇか。
おい、起きろって。
で、何の話だっけ。ああ、そうそう。親父の死んだときの話な。
で、何かさ、親父の死んだ場所に立ってみたらさ、人ってこんなに簡単に死んじゃうんだ
なって。あたいも同じように簡単に死んじゃうんだなって思ってさ。
あたい達の技ってそういうもんなんだなって。
でもさ、華撃団に入って、人のために何かできるってのが嬉しくてさ。
初めてあたいの技が生きたっていうのかな、そんな気がしたんだ。
親父があたいに残してくれた、この体と技で誰かの笑顔を守っていくことができるんだ
なって思ったらさ、親父には感謝しなくちゃなと思ったんだ。
マーリーアー! きーてるかーって!
ほら、まだクースー(筆者注 「古酒」のこと・泡盛を寝かせたもので、年代物は貴重であ
る)残ってるじゃねぇか。
せっっかく沖縄から持って帰ってきたてぇのに、残しちゃ駄目だーって。
マーリーアー! (そして話は始めに戻る)
END
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