雲国斉の語りが終わると、舞台の簡易幕に「それから二十四年の歳月が経った…」とテロップ(縦書き)が映し出され、拍子木の音と共にそれがバサっと外れますと、そこは将軍家の屋敷屋根の上。
なにやら捕り物の最中。二人の人物が「芳流閣」とかかれた建物の屋根の上におります。一人が縄を持ち、もう一人は縄に巻かれまいと抵抗。
拍子木の音が鳴り終わりますと、二人が動き出す。

現八「犬塚信乃!
   お前が将軍家に献上した、この短剣「村雨丸」は真っ赤な偽物!(短剣を掲げながら)
   将軍家に存念があることは明らかなり!
   この犬飼現八が召し捕ってくれるわ!神妙にお縄につけ!!」

現八(李紅蘭)が縄に力をいれると、信乃(ソレッタ・織姫)も抵抗。

信乃「これは何かの間違い!
   私の言う事を信じてください!現八殿!」

現八「嘘などいくらでもつける。そのような言葉、信じられるものか!
   (腰に挿してある巨大十手を信乃に向ける)者ども!!」

現八の声で三人の捕り者が屋根の上から登場。

現八「そぉれい!!」

捕り者「はっ!!」

信乃、縄を振り払うと、取り囲んだ捕り者を睨み刀を抜く。

信乃「降りかかる火の粉は…払わねばなるまい!!」

信乃が動き出すと共に、なんと屋根もせり上がる。
高くなっていく屋根の上での立ち回り!次々と捕り者たちを散らす信乃。
最後の一人に太刀をあてる。

信乃「でぇい!」

捕り者「がぁ!!」

ドンっと持っていた棒で一度屋根を叩いて、退却。
再び信乃と現八の二人に戻る。にらみ合う二人。
双方同時に動いて刀と十手を交わらせる。
力の均衡が崩れぬまま、背中合わせになると、同時に異変に気づく

信乃「!?」
現八

二人同時に懐から玉を取り出す。

現八「玉が光った…!!」

同時に離れ、お互いの顔を見る。

信乃「何だこの輝きは…!!」

現八「まさか…おまえは我が兄弟…?!」

信乃「おお…!我らは兄弟であったか!!」

うむ。と頷き合うと、二人の動きが止まり、奈落から修験者(マリア・タチバナ)が登場
同じように光る玉を手に持っている。

修験者「ここに玉がある!
    光り輝く不思議な玉が。
    八つの玉がそろいしとき、この国に愛が満ち溢れると聞くが
    はたしてどうか。」

ドンドンドンッとドラムロールのように太鼓が鳴ると、信乃と現八が屋根の上に居る建物の扉が開き、中から他の剣士たちが現れる。
太鼓の音にあわせて見栄を切ると、紗幕が降りてきて、奈落部分にいた修験者のみが舞台に残る。
手にしていた棒でドンっと舞台を打つ。

修験者「我が名は犬山道節!
    俗世間を離れ、霊山富士に隠れ住む修験者だ。
    伏姫が北斗の神に帰依してから八つの年を三回り、十二の星を二回りした死後、二十四の年。
    八つの玉が兄弟を求めて輝くという。
    その時、我が分身ともいえるこの玉が(玉を掲げる)
    輝いた!!」

綺麗に見栄を切ると、奈落が下がり舞台から消える。
一拍の暗転の後、下手より旅人(親方)が辺りを見回しながら登場。その反対側から飛脚が登場。
きょろきょろしている旅人とすれ違いざまぶつかってしまう。

飛脚「バカヤロウ!ちゃんと前見て歩け!!」

旅人「ああ、どうもすみません…」

急ぎ足の飛脚はさっさと行ってしまい、旅人は変わらず辺りを見回しながらゆっくりと進む。
舞台中央辺りでまた別の女性(山沢のり)とすれ違う。

女性「…ちょいと旅のお方。」

旅人「ああ、はい。何でしょう?」

女性「これからどちらに?」

旅人「へぇ、これから浅草のほうにちょっと商売をしに。」

女性「そう。お気をつけて…」

会釈をして互いに歩き始めようとしたとき、思い出したことを告げるために、再び女性が声をかける。

女性「ああ、そうそう。
   浅草を下って、千葉の里見の領地に、入っちゃいけませんよ。」

旅人「そりゃまたなんで?」

女性が説明をはじめたところで、また別の旅人が下手より登場。二人の間を通り過ぎようとするが、話の内容が気になり足を止める。

女性「里見の領主、山下定包ってんだけど、こいつがとんだ悪党でねぇ
   あらゆる物に税金をかけるのさ。(指を折って数えながら)
   通行税、滞在税、水、食料、着物…
   でさ、そのお金をみんなのために使おうってんならまだいいけど
   全部自分の懐にいれちまってるのさ。」

旅人(親方)「へぇ…」

旅人「そりゃまたえれぇ悪党だな!」

旅人(親方)「しかし、山下定包様といえば、関東御支配役の…」

女性「だから、それだって賄賂でもって関東御支配役になったのさ。」

旅人(親方)「へぇ〜〜…!」

女性「あんたちも気をつけなよ。」

女性の忠告を素直に聞く二人。
最後に女性からの格言を二人背筋を伸ばして聞く。

女性「ここで、本日の格言。
   触らぬ神に祟りなし。…では。」

今度こそ女性が通り過ぎると、話を聞いていた二人が会話をはじめる。

旅人(親方)「ところで、あなたは…?」

旅人「ああ、あっしは軽業師をやってるんですよ。ほら!」

と、バク転を披露する軽業師。お見事!

旅人(親方)「ああ、ではご同業の方ですね。」

軽業師「そういうあんたは…めあって書いてあんのか?」

と、旅人が首から下げている箱に大きく書かれている文字を読む。が、それは読み方間違い。

旅人(親方)「違いますよ。(^^;;
       これはね、あ・め!飴屋でございますよ。」

軽業師「おお、そうか。」

あめ屋「ところで、これからどちらへ?」

軽業師「ああ、江戸に入って浅草の方へ行こうと思ってな。」

あめ屋「あ、それじゃあどうです?
    御同業のよしみということで、ご一緒に…」

軽業師「(一秒ほど考えて、パンっと手を打つ)行きやしょう!」

「いやいや、最近は物騒な世の中に…」とか話しながら上手へ。
すると、舞台が明るくなり紗幕の向こう側が見える。紗幕が上がり、舞台は賑やかな江戸の隅田川。桜も満開の小春日和。
祭りで浮かれるこの川辺に、上手から犬士の三人が…

小文吾「うわ〜賑やかだな〜〜!あ、団子屋だ!」

一人先に浮かれているのは小文吾(桐島カンナ)

壮介「感じるのだ、この近くに兄弟がいると…!」

角太郎「わかるよ…!」

小文吾とは違い、真面目な壮介(レニ・ミルヒシュトラーセ)と角太郎(アイリス)。

小文吾「そっか?
    おいらにゃわかんねぇな。それよりも団子だ!」

さっさと団子屋へ入ってしまう小文吾。

角太郎「あ、もう…!」

そこへ、太鼓の音と共に着物を着流した男(清流院琴音)が登場

男「お集まりの皆々様方、本日は隅田川桜祭りに、ようこそおいでくださいました!」

ドンドンドン!と太鼓の音や拍手で応える。

男「あっしは、この辺りを仕切っている関東松五郎と申しやす。
  以後、お見知りおきのほど。」

膝を曲げ、中腰状態で礼。

松五郎「今日は、この隅田川桜祭りを盛り上げる為に
    かの有名な旅芸人、あさけのさんをお呼びしました!」

「あさけのだって!」と沸き立つ人々。壮介、角太郎も嬉しそうに顔を見合わせる。

松五郎「それでは、さっそく登場していただきましょう。
    あさけのさん、どうぞ!!」

太鼓の音に迎えられ、桜の木の前にあった幕が開くと、その後ろからあさけのが登場。
松五郎にリードされ舞台中央へ。

松五郎「それでは、さっそくあさけのさんに歌っていただきやしょう。
    曲はご存知、「隅田川」!」

♪「隅田川」

よよいのよい!と手拍子を促しながら舞台の飛び出し部分で歌い踊るあさけの。間奏では太鼓も披露。
舞台の奥にあった大太鼓(新春で大神さんが叩いていた太鼓ですね。)と、普通の太鼓が一つずつ。松五郎とその手下(西村ヤン太郎、ベロムーチョ武田、大神一郎)と壮介、角太郎が代わりばんこで太鼓を打つ。
壮介、角太郎は太鼓を打っている時以外は手持ち太鼓で舞台を移動しながら踊りに参加。
小文吾は団子屋の中で手拍子したり踊ったり。
(あ、17日(夜)は扇子を広げて歌いだそうとしたとき、うっかり扇子を落としてしまい慌てて拾って歌うあさけのさんでした(^^;)

曲が終わると、あさけのに盛大な拍手。

松五郎「ありがとうございます。
    あさけのさんに、もう一度大きな拍手を!!」

松五郎の声で、一度収まった拍手がまたも鳴り響く。

小文吾「いやいやいや〜!
    やっぱり江戸の祭りはいいなぁ!華やかで!」

壮介「…!
   こんな所で浮かれている場合じゃないぞ!
   行くぞ角太郎。小文吾はそこで待っていろ。」

小文吾「あいよー!」

壮介…さっきまであんなに楽しんでいたのに、やっぱり真面目?(^^;;
壮介、角太郎を連れて下手へ。それを団子屋の前で見送る小文吾。(このとき、団子屋の半分を覆っていたすのこが外され、店の中にいた修験者が見える。)
続けて、踊り終えてあさけのが引こうとしたのを呼び止める。

小文吾「ああ、あさけのさんよ!」

あさけの「はい?」

小文吾「おいら、千葉の田舎もんだけどよ
    あんたの歌の良さはわかるぜ〜
    こう、魂に触れるものがあった!」

あさけの「ありがとうございます。」

小文吾「いや、すばらしい!!」

松五郎「さぁ、みなさん!ぱぁーっとやりやしょう!!」

酒、食べ物が出され、今まさに楽しい宴が始まろうとした時…上手よりお役人の無粋な声が。

役人「やかましいぞ!!
   許可なく祭りをする事は許さんと、関東御支配役、山下定包様のきついお達しだ。
   祭りは中止だ!!」

ずかずかと入り込んでいた三人のお役人。萎縮する人々。
松五郎、一歩前へ出る。

松五郎「ちょっと待ってくだせぇ。
    ここら隅田川界隈は、あっしら関東松五郎一家の縄張りでい!
    関東御支配役だかなんだかしらねぇが、そんな奴の横車
    いちいち聞いてられねぇんだよ!
    さぁみなさん!祭りを続けやしょう!」

人々に宣言すると、役人が刀を抜き、松五郎に切りかかる。
切られた松五郎は…

松五郎「いた〜〜い!痛い、痛い!!」

…素に戻ってますよ、琴音さん!!(汗)
すかさずカンナが言い聞かせる。

小文吾「親分!親分!」

あんたは親分役なんだ!と言い聞かせる。
そうだった。と思い出して立ち上がる松五郎。

松五郎「何しやがんでぇ。痛ぇじゃねぇ…かぁ〜〜〜…」

そのまま倒れる松五郎を慌てて支える子分。(もう大神さんはいなくなって西村と武田だけです。)
そのまま抱えられ、上手へ走る。
小文吾、役人を睨みつける。

小文吾「何しやがんでぇ。」

役人「逆らう奴は切り捨てよと、山下様のお言いつけだ。」

小文吾「そんなバカなことがあるかい。」

役人「貴様も松五郎の肩を持つならば切るぞ。」(切っ先を向ける)

小文吾「おもしれぇ。やれるもんならやってみな!」

役人、小文吾に切りかかる。
刃をよけた小文吾は、あさけのと背中合わせになる。

小文吾「危ねぇだろ!」

刀を振り下ろす役人。すると、小文吾を遠ざけて刀を受け止めるあさけの。

小文吾「あさけの…!?」

そのまま役人をあしらう。

役人「この…芸人風情が!」

残る二人も軽く受け流し、舞台中央で片膝をつき、ばっと手を広げる。
すると、音楽が鳴り、あさけのにスポット。黒子が現れあさけのの長い袖や飾り部分を外す。
身軽になったあさけのは、キッと見栄を切る。
すると、小文吾、あさけの、道節が懐から玉を取り出す。

小文吾「た、玉が光った…!!」

あさけの「我こそは犬坂毛野!!
     父を山下定包に殺された恨み忘れがたし!
     今ここに正体を露にし、定包に挑む!!」

睨みをきかせる毛野。役人の一人が思い当たる事があるのか、声を荒げる。

役人「貴様が山下さまの言っていた里見の犬か!?
   これは山下様にご報告なさねば。
   引け!…ええい、引け!!」

他の役人に指示を出して下手へ足早に引く役人たち。

毛野「待て!!」

その後を追って走り出す毛野。

小文吾「あさけの……あ!」

小文吾の声に気づかず行ってしまう毛野。

小文吾「あいつ…あいつも兄弟だったのか。」

そう呟く小文吾の後ろを棒で音を立てながら歩き去ろうとする道節。
慌てて呼び止める小文吾。

小文吾「ああ、ちょっと待ってくれよ!
    あんたも玉を持ってるんだろ?」

道節「…何の事かな?」

小文吾「この玉だよ!(小文吾、懐から玉を取り出し見せる。)
    おいらの父ちゃんは千葉の漁師で犬田文吾衛っていう、鯉釣りの名人だ。
    ある日、鯉のお腹からこの玉が出てきて、父ちゃんが死ぬとき、おいらにくれたんだ。
    おいらが持つとこの玉は不思議と光りやがる。
    そいで頭の中で声がするんだ。「他にも兄弟がいる。兄弟を探せ!」って…」

ここぞとばかりに語る小文吾。だが、道節は何やら印を組んで呪を唱える。

小文吾「あんたが通りがかったとき、その声とおんなじ声がしたんだ。
    この玉が、兄弟を呼ぶんだな…なぁ、あんたも…!」

道節「ふんっ!」(小文吾に術をかける)

小文吾「うにょ!?」

小文吾、玉を持ったまま猿のようなポーズを取らされる。(笑)

道節「先を急ぐのでな。御免。」

すたすたと行ってしまう道節。
術をかけられた小文吾はそのまま変な踊りを…(^^;;

小文吾「ぴんぴろぴんぴろぴんぴろちん!
    ぴんぴろぴんぴろぴんぴろ、ぽんぽこちん!
    …うわぁ!!(術が解けた)
    あいつ…なにやらせるんだ!?」

術が解けて我に返ると、幕の裏から松五郎が登場。子分二人を連れて、顔をしかめながら切られた所を抑えています。

小文吾「あ!親分!!
    大丈夫か?」

松五郎「平気ですよ、こんなもの…
    ほんの、虫刺され程度でぇ〜〜……」

…倒れてるじゃないですか!!(^^;;
慌てて支える子分二人。

小文吾「お、おい!ちょっと!
    早く医者に…」

松五郎「いや、そいつはダメなんですよ!
    医者には絶対かかるなって叔父貴の遺言でぇ〜〜……」

小文吾「んな事言ってる場合じゃないだろ!
    早く医者に…!!」

松五郎「ダメです!ダメです!いしゃはぁ〜〜……」

さすがに、三度目ともなると子分二人が強制的に担ぎます。

小文吾「早く医者に連れてけ!」

子分「はい!」

と、親分を担いで右に行く人と左に行く人が…親分、足が宙で開脚状態に。(笑)

松五郎「あ〜〜〜〜!!!
    おまたが、おまたがぁぁ〜〜…!!」

…思いっきり開脚してましたよね。(^^;;
慌てて子分達は上手へ親分を運びます。

小文吾「ちゃんと医者に行けよ〜〜!」

ちょっと不安そうに松五郎を見送ると、下手から何にも手がかりを得られなかった壮介と角太郎が消沈しながら戻ってくる。

角太郎「いないね〜…」

壮介「ああ…」

小文吾「(二人に気づく)おい!
    こっちは兄弟を二人も見つけたぞ!」

角太郎「ええ!?」

壮介「兄弟に会ったのか!?」

小文吾の言葉に、駆け寄る二人。

小文吾「ああ。一人はあの旅芸人だ!!
    名前を…犬坂毛野といって、山下定包に恨みを持つ者だって言ってた…
    声をかける暇もなく、向こうへ行ってしまった!!(下手を指す)
    そして、もう一人は…修験者だ。
    …あいつはいけねぇ。(笑)
    到底、兄弟とは思えねぇ!」

…変な術かけられてましたもんね。(^^;;
小文吾の発言に「やれやれ」と顔を見合わせる角太郎と壮介

壮介「なんとしても八つの玉が必要なのだぞ。」

小文吾「しょうがないんじゃない?」

壮介「しょうがないって…」

角太郎「え〜〜?
    努力したの〜〜?」

小文吾「失敬だな!したよ、努力は!」

小文吾の楽観姿勢に呆れる壮介と角太郎。
「それはそうと」と話題を変える小文吾

小文吾「ところで…壮介。
    金はあるか?腹が減った。」

角太郎「さっきお団子食べてたじゃない!」

小文吾「あんなのは、おやつだよ!
    ああいうの食べるよ余計に腹減っちゃうんだよ!」

壮介「…金はもう、残り少ない。
   今日の宿代がギリギリだ。」

小文吾の食費で?(爆)
突如経済危機に陥った三人をすくったのは角太郎の提案。

角太郎「それなら、ちょっと遠いけど我が家にお泊まりください。」

渡りに船とはこのこと。大乗りの小文吾。
壮介も異存ないようです。

小文吾「それいい!そうしよう、それに決定ー!!」

角太郎「では、暗くならないうちに急ぎましょう。」

角太郎を先頭に、上手へ移動し始める三人。

小文吾「角太郎。」

角太郎「ん?」

小文吾「ご飯いっぱい食べさせてね。」

角太郎「へへっ…いっぱい食べてね。壮介♪」

壮介「ん?!…ああ。」

小文吾「あれぇ〜〜??」

小文吾、軽くかわされてしまいましたね。(^^;;
舞台が暗転して紗幕が降りると、奈落から道節が登場。

道節「この世は金だ。名誉だ。権力だ。
   力のある者だけが全てを手に入れることができる。
   愛でさえ、金があれば手に入る。

   …だが待てよ。
   金で手に入らない愛もある…か?
   ふふっ……

   !そうだ…あの犬坂毛野を…
   うむ…!…うむ!
   くはははは…くははははっ…!」

…道節まるで悪役;;
そのまま奈落へ戻ると、上手から現八を先頭に信乃が現れる。
舞台中央へ移動しながら言葉を交わす。

現八「そうか、そなたも玉を持っていたのか…」

信乃「我らは兄弟なのですね。」

現八「ああ。
   …我が家は代々、里見家に仕える見張り頭であった。
   父は、金碗大輔様を逃がした事で、定包に切られた。
   私と母は江戸に逃れ、何とか命拾いしたが、母は心労が祟り
   私が七つのときに(懐に手を添えながら)この玉を残し他界した。」

身寄りがない事を知らされた信乃は「ご愁傷様です」という意味もこめて頭を下げる。

現八「…私は山下定包が憎い。
   いつか定包の悪事を暴いてやろうと、役人になり
   機会をうかがっていたのです。」

信乃「そうだったのですか…」

現八「お前も、里見家にゆかりのある者か?」

信乃「はい。
   わたくしの母は、金碗大輔の姉でございます。」

現八「なんと金碗様の…!(礼をする)
   やはり深い因縁だの。」

信乃「あの村雨丸は伏姫様の形見。
   里見の宝でございます!
   ですから、あの刀を将軍家に献上し、晴れて山下定包打倒のお許しをいただこうと…!」

現八「しかし、あの村雨丸は偽物ではないか。」

信乃「どこかですりかえられたのです!!
   !…そう言えば、先日宿を取らせてもらった。
   葛飾の赤岩道場…そうだ!湯浴みの時、なにやら妖しい気配を感じ、即刻逃げたのです。
   そうか、宝剣は既にすりかえられていたんだ!!」

現八「よし、早速調べに行こう。」

信乃「はい!」

信乃の言葉を信じ、確かめるために走る二人。
下手へ消えると、紗幕が上がり「赤岩道場」と書かれた額縁が飾られている建物が。

油屋「毎度どうも〜!」

上手から油屋(丘菊之丞)が油桶を持って登場。
桟敷の横(上手より)を通りかかったところで「どいたどいたどいた!!」と威勢のいい声で下手客席側の出入り口から岡持ちを持った魚屋が走りこんで油屋とちょうど反対側の桟敷横で止まる。

油屋「あら、魚屋さん。
   あんたもかい?」

魚屋「ああ。一角さんが魚持って来いってよ!」(岡持ちを軽く上げてみせる)

油屋「そう。(桶を椅子にして座り込む)
   この不景気だってのに、この赤岩道場は連日連夜の宴会騒ぎ。
   魚も油もたぁ〜んと使ってくれてねぇ。」

この時、油屋のすぐ横の席に座っていた人は、本当に話し掛けられていた気分になったのでしょうね。(^^)
実際に話し掛けていた日もあったみたいですね。羨ましいです。(笑)

魚屋「へへっまったくだ!」

油屋「あっといけない。
  こんな所で…(立ち上がり、桶を見せる)油売ってる場合じゃなかったわ。
  ごめんなさいまし。」

スタスタと客席横の出入り口へ向かう油屋

魚屋「油売ってって、油屋が油売らなくてどうすんだよ!?」

油屋「魚屋さんも、早くしないと鮮度落ちちまうよ。」

魚屋「へんっ
   お前はその下っ腹の油なんとかしやがれ!
   …ったく。さすが油屋だ、ベラベラと口が回りやがる。
   おおっといけねぇ!早くしねえと活きがいいのが台無しだ!
   (走り出す)すみやせーーん!おまっとさーーん!!」

――――――
20日はちょっと会話が変わっていたみたいです。

魚屋「お前ぇはその下っ腹の油何とかしやがれ!」

油屋「んもう、好きなら好きってお言いv」(^^)

……これも一つの恋話?(爆)

――――――

下手へ威勢良く走り去る魚屋。
と入れ違いに上手客席側の通路から、角太郎たちが登場。

小文吾「角太郎、まだ〜?」

角太郎「もうちょっと。」

小文吾「……まだ〜?」

角太郎「もうちょっと。」

壮介「…角太郎、ここか?」

上手よりの桟敷横の通路に上がったところで、壮介が赤岩道場を指す。
順々に舞台に上がる。

角太郎「そうさ。ここが我が家、赤岩道場だよ!」

小文吾「…しかし、お前名前は犬村角太郎ってんだろ?
    なんで赤岩道場なんだ?」

角太郎「わたしは捨て子だったんだ。
    それを父上が拾ってくれて育ててくれたんだ。」

角太郎の生い立ちをさらりと言われた二人は一瞬顔を見合わせる。

角太郎「わたしの名前は、守り袋の中に書かれていたんだって。
    父上の名前は赤岩一角。
    昔、里見家の剣術指南役だったんだ!」

小文吾「ええっ!?
    そうだったのか〜!」

ここでも里見家の縁を見つける。
やはり兄弟の縁とは深きもの。

角太郎「父上〜!父上〜〜!」

道場に呼びかける角太郎。
ほどなくして、道場の奥より、白髪の男(千葉助)が現れる。

一角「おお、角太郎。」

角太郎「角太郎、只今戻りました。」

一角「おお、おかえり。
   少し遅かったな。」

角太郎「父上、お友達を連れてきた。
    泊まっていただいてもよいか?」

一角「友達?」(壮介と小文吾を見る)

壮介「こんにちは。」

小文吾「こんにちは。」

壮介の方が丁寧ですね。

一角「ああ、もちろんいいとも。
   泊まっていただきなさい。」

角太郎「(^^)
    さ、上がって上がって!」

小文吾「ああ。」

頷きあって座敷に上がる壮介と小文吾。
角太郎もそれに続いて家に上がろうとすると、一角に止められる。

一角「ああ、角太郎。
   お前はお風呂の準備をしなさい。」

角太郎「あ、はい!
    (二人に向かって)ゆっくりしててね。」

壮介「ああ。」

角太郎、風呂場に行く為に下手へ下がる。

一角「ささ、座って。楽にして下さい。」

壮介「あ、はい。」

座敷に座る壮介。小文吾は欄干で庭を見渡す。
と、二人に隠れて一角が妖しい声を…

一角「…美味そうだな。」

小文吾「え?…馬が、どうかしました?」

一角「え!?
   ああ、いや…お隣りでな、河童の赤ちゃんが生まれそうなんだよ。」

小文吾「河童!?」

一角の発言に疑問顔を隠せない小文吾と壮介。
慌てて取り繕う一角。

一角「ああ、そんなことより!
   お腹、すいてないかね?」

小文吾「ちょうどすいてるんです〜!」(^^)

一角「あ、じゃあすぐに用意させます。
   (奥に向かって)おお〜い、お食事二人前頼むよ〜!」

仲居「は〜い」

一角「それじゃあ…」

この場を去ろうとした一角を慌てて呼び止める小文吾。

小文吾「あ!あの…一つ、大盛りで。」

一角「あ、ああ、はいはい。
   えー…そちらの方は?」

壮介「あ、いや、わたしは。」

一角「ああ、そう。
   (奥に向かって)一つは大盛りだよ〜!」

仲居「は〜い」

一角「それじゃあ、ゆっくりしてくださいね。」

小文吾「はい。」

壮介「かたじけない。」

座敷横の部屋に入っていく一角。
照明が落ちて、部屋の障子に影が浮かぶ。一角のはずの陰が、猫手になり妖しく笑う。
一角が部屋を通り過ぎると照明がもとに戻る。そのころ、二人は庭を眺めている。

小文吾「見ろよ、壮介。いい庭だ。」

壮介「ああ。」

仲居「おまちどうさま〜」

そこへお膳を持った仲居(山沢のり)が登場。
小文吾、欄干から足早に座敷へ。

仲居「ええっと…大盛りの方は…」

小文吾「あ!こっちこっち!!」

仲居「ああ、はい。」

それぞれの前にお膳を出す仲居。小文吾のお膳のご飯は半端じゃない山盛り。(笑)

壮介「早速のもてなし、かたじけない。
   …角太郎の分は?」

仲居「角太郎坊ちゃまは奥の部屋でお召し上がりになります。」

壮介「そう…」

小文吾「いいじゃねぇか。
    ほら、奴はおぼっちゃんだからよ。
    俺たちとはなんか料理の内容が違うんだよ。
    俺たちはこれで充分じゃないか!な!」

壮介「…ああ。」

小文吾「な、食お食お!!」

仲居が奥に戻り、箸を持つ二人。

小文吾「ん…ちょっと油臭ぇな。
    でも、ま。腹が減ってはいいクソは出来ぬって言うからな!」

お約束セリフ。(笑)
小文吾は勢いあまって立ち上がって食べる。

小文吾「う…う…うぅーー!!」

壮介「小文吾!?しっかりしろ、小文吾!!」(しゃがみこむ小文吾を支える)

小文吾「んーーー!!……おいちい。」

壮介「なんだ…脅かすな。」

本気で心配していた壮介は気抜け。
小文吾は立ったままお碗に手を出し、欄干でかき食べる。

壮介「小文吾、うるさいぞ。落ち着いて食え。」

小文吾「ん…ん…ん……」(かき食う)

壮介「行儀が悪いだろ。座って食えよ。」

壮介が呆れ顔で静かに食べていたそのとき、小文吾の動きが止まった。

小文吾「…!
    い、いかん…身体が痺れてきやがった……」

その場に崩れる小文吾。これはただ事ではないと、小文吾に駆け寄る壮介。

壮介「小文吾!?
   大丈夫か、小文吾!!?」

動きが取れない小文吾に妖しい笑い声とともに屋敷奥から一角が現れる。

一角「さぁて…今夜お泊りになる代金を頂戴しましょうかねぇ……」

壮介「何!?」

小文吾「あんた…角太郎の父親じゃないのか?!」

一角「角太郎は知らんのだ。
   わしが、赤岩一角を食ったことを!」

壮介「何だと!?
   貴様、何者だ!!」

一角「くっくっくっくっく…
   にゃーーー!!!」

一角の早変わりで猫の物の怪に。

小文吾「ああ!」

一角「はっはっはっはっは!
   我こそはこの葛飾に住まう妖怪、猫爺さまだ!!
   人間に捨てられた猫の怨念が我が体内に宿り
   妖力を持った猫妖怪となったのだ!!
   お前たちを食ろうてくれるわ!
   出でよ、我が手下ども!!」

猫爺の声で障子を破ったり庭の影から次々と手下が登場。
白に黒のぶち猫。…猫たち、ちょっとコミカルですね。
囲まれ危うし小文吾と壮介!
小文吾を屋敷の中へと運んだ壮介。

壮介「小文吾、しっかりと玉を持っているのだぞ!!」

小文吾「危ない!!」

壮介の背後から忍び寄る猫。
が、壮介はいとも簡単に振り払い、応戦する。
襲いくる猫をあしらう。

壮介「はい!はい!!」

草履で猫の頬を叩きトドメ。
訝しがる猫爺。

猫爺「何故だ!?
   毒の飯を食ろうたはず!」

壮介「子供の時より毒を食ろうて育ってきた。
   わたしに毒はきかない!」

猫爺「ぬぬぬ…!
   こうなったら!!
   …踊れ。」

壮介「えっ?
   うわっ!!」

猫の妖力にかかってしまった壮介と小文吾。
下手に壮介。上手に小文吾で猫踊りを踊る。

壮介「踊ってる…しかも間抜けだ…!;;」

小文吾「でもなんだか楽しいぞ♪」

♪猫踊り

「八犬伝」の中で一番のギャグシーン。
この振り付けがなんだか可愛くて好きです。楽しそうな小文吾と対照的な壮介の顔を見るのも楽しいですね。
踊りが終わると体力を奪われヘトヘトになった二人。舞台中央よりやや下手よりの所で息を粗く膝をつく。

猫爺「はっはっはっはっは!」

猫爺が高笑いをしていると、どこからともなく小刀が飛んでくる。
しっかりと掴み取る猫爺。

猫爺「何奴!?」

下手、屋敷内より、角太郎が小刀をかまえて登場。

角太郎「犬村角太郎、見参!
    我が屋敷内での悪事は許さんぞ、バケネコ!!」

猫爺「にゃ!」

角太郎「ああ!それは、父上の着物…!!」

猫爺「お前の父はわしが食ろうたにゃ!」

角太郎「なに…!?!」

猫爺「お前ももうちょっと大きくなってから食ろうてやろうと思ったが…
   …しかたないにゃ〜〜。角太郎、お前もバーベキューにゃ!
   者ども!やれい!!」

猫爺の指示で角太郎に襲い掛かろうとする手下たち。

壮介「角太郎危ない!!」

すると、角太郎は空高く飛び上がり、空中回転しながら上手へ!!
……まさか第二幕でも飛ぶとは!!しかも回転!!空中前転!!すごい!!!
降り立つと、大歓声。

小文吾「いいぞー!角太郎、かっこいい!!」

声援を送る小文吾。壮介も拍手。
その雰囲気が面白くない猫爺は「うるさいうるさーーい!しゃーー!!」と二人を威嚇。
気を取り直して角太郎を挑発。

猫爺「それにしても、お前の父の赤岩一角は…
   あ!弱かったにゃぁ〜〜〜!!」

にゃあぁ〜〜!と周りも頷く。
角太郎、反論。

角太郎「父上は弱くない!笑うな!!」

猫爺「ダメな父親だから笑ろうたのにゃ!」

完全に馬鹿にしている猫爺。角太郎、怒り心頭。

角太郎「ダメじゃない!!父上は立派な人だ!
    血のつながらないわたしを、大切に育ててくれた!
    我が子以上に、大切に……それを、お前は!!
    うわあぁぁぁぁ!!!」

屋敷から庭に飛び出る角太郎。怒りの為、息が荒い。
対照的に嬉しそうな猫爺。

猫爺「憎め憎め!
   そうやって憎しみに満ちた人間の肉はこれまった美味いんだ〜〜!」

角太郎「!おのれぇぇ〜〜!!」

猫爺「にゃ!」

猫爺の手から飛び出た絡み糸が角太郎に直撃する。
その姿勢のまま舞台が真っ赤に染まる。三味線の音と共に、玉梓の首が登場。

玉梓「憎め憎め…!
   憎しみこそ、人間の本当の姿なのだ!!」

妖しい言葉を残し、玉梓は去っていく。
舞台の時が戻ると、角太郎がもがいている。

壮介「角太郎!!」

角太郎「くっ!!」

抵抗するが、手下たちにもつかまり、傷を負ってしまう。

壮介「角太郎!!」

二人も、僕を振り払い猫爺の襲いかかろうとするが、ここでも猫爺の妖力が。

猫爺「スローモーション!!」

妖力にかかった二人は、スローで動く。

小文吾「くぁ〜〜くぅ〜〜たぁろぉ〜〜…」(通常モードで言うと角太郎;;)

その間に手下たちに取りつかまってしまう。
術をかけた猫爺は…ボーリングのジェスチャー(^^;;

猫爺「はい!ノーマルモード!!」

元に戻ると、壮介はやじろべい姿(というより、「命」のポーズ?)勢で。小文吾は担がれた状態で(松五郎親分と同じような姿勢ですね。)

壮介「くっ…わたしを食え!そしてその二人を助けよ!!」

小文吾「いや、俺を食え!俺を食え!」

僕たちに勝手に手を股関節の間で行き来されられている為、今一つシリアスになりきれず笑いを取ってしまう小文吾。

猫爺「美しい兄弟愛じゃのう。
   だがな、そんなものなーーんも役に立たんのじゃー!」

小文吾、猫爺に開脚状態にされてしまう;;
危うし犬士たち!!と、そこへ助けが!

信乃「待て待て待てぇーーい!!」

猫爺「!…あっ待てとお止め、なされしは!?」

下手客席通路より信乃、上手客席通路より現八が走り来る。
桟敷横で止まる。

信乃「犬塚信乃!」

現八「犬飼現八!」

信乃「村雨丸の探索に参ったれば、なんとも妖しい空気!」(現八と共に舞台に上がりながら)

現八「噂に聞く、葛飾に住むバケネコとみた。」

信乃「おのれ…宝剣をネコババしたのはお前だな!!」

びしっと猫爺を指す信乃。
すすす…と信乃に近づく猫爺。信乃の人さし指に自分の指を合わせる。
ビックリして指を潜める信乃。
……「E.T.」ですか?(爆)

猫爺「ネコババではない!わしゃはネコジジイさまじゃ!
   わっはっはっはっはっは!
   あ、ブァカ!あ、バカ!!ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!
   (懐にさしてある小刀を触りながら)この宝剣はわしがもろうたにゃ!」

馬鹿にされ、怒りに顔をしかめる二人。

信乃「おのれ!それは里見家の家宝!返せ!!」

二人同時に刀を抜く。

猫爺「あ!…抜いちゃいましたね?」

現八「問答無用!退治してくれるわ!」

刀を抜いて構える二人。
舞台の中央でがくんっと膝をつく猫爺。

猫爺「面白い。すんげぇおもしろい!(やる気無さそうに)
   じゃどっちからきます?こっちから?そっちから?」

信乃「でぇい!!」

あくまでお気楽な調子の猫爺。信乃、現八が切りかかってくるのを見事にあしらう。
そこに二人同時に切りかかる。あわや猫爺、切られるかというところで、妖力を放出。

猫爺「ええい!
   にゃーー!!(舞台、妖しい照明)」

信乃「うっ…!」

猫爺「我が妖力を持って、呪い殺してくれるわーー!!」

妖力を大放出する猫爺。
妖力で道場がボロボロに…が、隙をつかれ壮介、小文吾が猫爺の足を捕らえる。

猫爺「あれ?あれ?は、放せ!」

小文吾「放さん!」

壮介「放すものか!!」

猫爺を見据え、構える角太郎。

角太郎「父の…仇ーー!!」

一気に猫爺に小刀を突き刺す!

猫爺「ぐわぁぁ〜〜〜!!
   ……ぬぁ〜んちゃって!」

苦しいふりをするが、すぐに両手を頭の上に乗せ、ふざけたポーズをとる。
てい!てい!と足を抑えていた壮介と小文吾を蹴飛ばす。

猫爺「こんなもん、わしにはきかんのじゃ!
   にゃーー!!」

角太郎、壮介、小文吾はそれぞれうずくまって動かなくなってしまう。
何とか妖力の波動を避けた信乃と現八はそれぞれ猫爺に挑む。
僕たちの攻撃を避け、何とか現八が猫爺を捕らえる。

現八「信乃!」

身動きが取れなくなった猫爺の懐から村雨丸を取り返す信乃。
すっと信乃が村雨丸を抜くと、辺りに神秘的な力が満ち溢れる。猫爺の僕の動きが鈍る。

信乃「村雨よ、我が手に力を与えよ!
   …覚悟!!」

猫爺「うぉ!?」

猫爺に村雨丸を突き刺す信乃。
現八が手を放すと、猫爺は苦しそうに舞台張り出し部分に移動。

猫爺「ぐっ…あ…!!
   …ぬぁ〜んちゃっぐわぁぁ…!!」

再びふざけたポーズをとろうとするが、今度は本当に傷を負っているので無理なよう。
力なく猫爺を見る僕たち。
ふらふらと道場の座敷へ上がる。

猫爺「な…な…ぬぁ〜んちゃ…ぐはぁ!!」

三度目の復活ならず。(^^;;
本気で息も絶え絶え。けど、散りぎわは…

猫爺「お…お…お疲れ様でしたーー!!」

と、身体を大の字に広げてしっかりポーズを取って、道場の後ろへ散りました。
…最後までギャグか猫爺!!(笑)
手下たちも「お疲れ様でした!」と一礼をしてさっさと退散。

信乃「…なんとも恐ろしい敵だったな。」

現八「ああ。」

刀を納めながら呟く二人。
…おちゃらけてあんなに強かったですからね。(^^;;

現八「その力、まさに村雨丸。」

信乃「はい!」

信乃の言葉の真に現八は笑顔。
が、すぐに倒れた三人に気づく。

現八「大丈夫か?」

信乃「大丈夫ですか?」

信乃が壮介を、現八が角太郎と小文吾を起こす。
どうやら三人とも大事ないようだ。
気がついた角太郎は、二人にお礼を。

角太郎「あの…!
    父上の仇を取ってくださり、ありがとうございました。
    わたしは…」

自己紹介しようと口を開いたその時!
全員の玉が光り輝いた!!

現八「ああ…?!」

壮介「皆、玉を…!?」

玉を手に持ち、舞台中央へ集まる。(このとき、幕も下りている)

現八「信乃。伏姫さまと大輔さまが、我々を呼び寄せたのだ!」

ここで紗幕が降りて来る。
そして、一人一人自己紹介。

信乃「私は、犬塚信乃!
   八犬士が一人!」

現八「犬飼現八!」

角太郎「犬村角太郎!」

小文吾「犬田…小文吾!」

カッコ良く決めた三人に続いて、小文吾がしこを踏むような姿勢で、玉をかくっと顔前の高さに上げる。
その動きがこっけいで笑いを誘う。
そして、トドメは…

壮介「犬川壮介です。」

簡単に礼をして終わる壮介。
思わずこける兄弟たち。(笑)
が。それも一瞬の事。すぐに体制を立て直す。

信乃「なるほど。不思議なめぐり合わせで、こうして五人がそろいました。
   残る三人も必ずや見つけ出し、この世に仇名す山下定包の野望を打ち砕きましょう!」

全員「おう!!」

玉を一人一人前に差し出し、打倒・定包の思いを固める。
(まるで、野球の試合前などに選手が全員手を重ね気合いを入れているかのよう。)

全員「おお!!」

NEXT→
←BACK