さて。開演を知らせるブザーが鳴ると、会場内が明るいままマリアさんのアナウンスが。

マリア「本日はご来場賜り、誠にありがとうございます。
    これより、帝国歌劇団夏公演「新西遊記」を上演いたします。
    どうぞ最後まで、ごゆっくりお楽しみください。」

アナウンスが終わると、徐々に暗くなって幕が上がります。
紗幕が下りたままの舞台に、プロジェクターで大きく「新西遊記」と今回の公演ロゴが映し出されます。
はたしてどのような舞台なのか…ここからは台詞などは極力役名で表記します。

紗幕が下りたまま、舞台に照明が灯ると、そこに整列していたのは魔物の軍団!!
中央にボスが両手に剣を持った状態で仁王立ち。その後ろに軍団の旗を持って控える武田と西村。男性、女性ダンサー陣も旗や扇を片手に控えております。
紗幕が上がると、それらがゆっくりと一斉に動き出します。

魔物軍団「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ 人間どもを
     食らえ食らえ食らえ食らえ食らえ 人間どもを」

♪永遠の命

冒頭曲はこれでした。魔物軍団の舞がまたカッコいいこと!!
前奏の途中で、舞台中央の奈落から如意棒を構えた孫悟空(カンナ)が登場。魔物軍団の衣装が黒で統一されているのに対し、悟空の衣装は金色主体だったので、遠くから見ても解かりやすい対決、配置を見ることが出来ました。

悟空「♪おれは 悟空 石猿さまだ
    強い ちから 持って生まれた」

歌いながら魔物軍団と戦う悟空。悟空の棒術、魔物の剣術共に見事です!

悟空「だがしかし ちから 強くとも 命には限りがある
   どこにあるんだ (どこにあるんだ) 永遠の命
   三蔵様の (偉い坊主を)
   言うことを聞けばいいのか (食らえばいいのか)
   永遠の命が欲しい」

ここで高らかに歌い上げる悟空が張り出し舞台の奈落部分に立つとゆっくりと下へ消えていきました。
魔物軍団も素早く舞台の袖へと消えていきました。
替わりに下手から現れたのは4人の楽器奏者。全て打楽器系の楽器でした。軽快に奏でられる楽器の音と共に下手、上手から現れたのは青い中国服の二人の京劇役者さん!スピーディーなアクロバットは見事!
そして下手から女性の京劇役者さんが槍を手に登場。女性が主役ですね。暖色系の華やかな衣装に、頭には雉の羽…かな。(とにかく長くてよく風に乗る感じです。)ビシッと決めるポーズも凛々しいです!!

ここで披露された京劇はおそらく「擂鼓戦金山」かと…京劇に詳しいわけではないので憶測ですが(汗)
短縮版かも…?もしかしたら同じ衣装なだけで内容はまったく違うかも;;
この部分は一応「新西遊記」的には彼女は牛魔王の奥さんらしい…とも小耳に挟みましたし。あやふやでごめんなさい;;;;
このシーンの見せ場は槍を軸に女性役者さんがものすごい速さで回転するところかと!
決めのポーズもバッチリ決まると、拍手の中下手の舞台兼通路に下がって行きました。

演奏者たちも下手に再び下がると、今度は歌謡ショウ出演陣の見せ場!
男性の魔物軍団が舞台を右へ左へと横断するように宙返りなどのアクロバットを披露!
そして、再び全員がそろうと奈落から悟空も戻ってきました。

悟空「♪欲しい欲しい命が欲しい (探せ探せ探せ探せ探せ 坊主を探せ)
    俺は強いちから持ってる (食らえ食らえ食らえ食らえ食らえ 坊主を食らえ)
    欲しい欲しい命が欲しい (探せ探せ探せ探せ探せ 坊主を探せ)
    俺は欲しい (欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい) 永遠の命」

最後の「永遠の命」の部分はもの凄い歌い上げで、迫力がありました。
最後は悟空と魔物軍団が刃を交え、ボスと悟空の一騎打ちのポーズで止めて、幕。
しょっぱなからみせてくれますね〜彼らが求めているのは永遠の命。ただ、それを求める手段が違いますね。魔物の軍団は偉い坊主を食えば!と思っていますが悟空はそれ以外の方法を模索している模様。
この魔物同士の対立がこの後物語にどうからんでくるか…
と、そんなコトを考えていると一転して軽快な音楽が。紗幕が下りたまま舞台が明るくなると、上手の通路兼舞台から猪八戒(さくら)と籠いっぱいに食べ物を持った沙悟浄(アイリス)がやって来ました。
手ぶらでスキップしてる八戒に対して、なんだかお疲れ気味の沙悟浄。

沙悟浄「もうダメ、もう歩けない…」

八戒「まだ休んじゃダメだよぉ〜」

沙悟浄「もう疲れたよぉ〜〜〜!」

八戒が励ましますが、沙悟浄は張り出し舞台の上でぺたりと座り込んでしまいました。
やれやれ、と八戒も止まって汗を拭って小休止。籠から如雨露を取り出して頭のお皿に水をやる沙悟浄がかわいい。

♪天竺どこだ!?

二番を省略した短縮版。いやぁ…魔物二人の衣装が可愛いです。(笑)いや、もの凄く。ほんっとに冒頭の魔物軍団と間逆に可愛いです。
振り付けはピ○クレディーを彷彿とさせるものでした。(笑…いやホントに。)

八戒「♪西の果ての 天竺というとこへ」
二人「♪経典をもらいに行くよ」

沙悟浄「ねぇ、その経典があるとどうなるの?」
八戒「この世が極楽になるって、三蔵様が言ってた。」
沙悟浄「極楽って?」
八戒「んー…誰もが等しく、心の安らぎを得られるんだって。」

二人「♪この世を照らす経典 人も魔物でも」
八戒「♪仏様の慈悲の光に 照らされる」
沙悟浄「♪仏様の慈悲の光に」
二人「♪照らされる」
沙悟浄「♪争いもなく」
    八戒「♪憎しみもなく」
        沙悟浄「♪この世が平和に」
二人「♪なるのだ」

二人でそれぞれの手を合わせて二人で合掌。頬を寄せて微笑む二人は、本当にかわいい魔物。(笑)
でも、曲が終わると同時に、ばたーっと崩れ落ちる二人。もうへとへとの様子。

八戒「も〜〜〜!
   三蔵さまも悟空のアニキもどこ行っちゃったんだよ〜!」

沙悟浄「もう、ようやっと食いもん見つけたってのに〜
    (へたり込んだまま右の方を見る)あっちかなぁ…」

八戒「(立ち上がって沙悟浄の後ろへ)あの山は万寿山!
   (逆方向を差して)こっちが平頂山!」

沙悟浄「(どこからか取り出したきゅうり片手に立ち上がる)ほぉ!じゃ、平頂山だ!」

八戒「どうして?」

沙悟浄「だって、へい!長さん、待ってたホイって感じだろ?」

片足を上げて、頭をぺしっと叩いておどける沙悟浄。(笑)

八戒「…なるほど!」

突然の思考だったらしく、八戒も納得の声が一呼吸遅れます。(^^;;
そんな八戒をよそに、手にしたきゅうりにかぶりつく沙悟浄(きゅうり本物だったんですね!)

八戒「よし、行こう!」

と、食べ物が入った籠を持つ八戒。そのまま下手の舞台兼通路へと向かいます。沙悟浄もきゅうりを食べながらその後を着いてきます。
八戒の「ヘイ、長さん待ってたホイかぁ〜気づかなかったなぁ〜」の言葉がなんだか印象に残ってます。(笑)
二人がいなくなると、紗幕が上がり別の場面へ。舞台の一番奥の背景を見ると、万寿山かな。
下手の方にはたくさんの村人が行列を作ってます。舞台には四つの三角柱(今回のこのセットは面白かったですよ。)がありその二つが朱色の扉を表し、その両サイドに「五荘館」と書かれた三角柱があります。
と、そこへ上手の舞台兼通路から小さな猿が登場!

悟空「あぁ〜〜…行けども行けども山ばかり!
   天竺はまだかよ〜〜…なぁ!三蔵様!」

悟空に続き、白馬に乗った三蔵(織姫)が登場!あ、体重減らしには成功したんですね。(笑)

三蔵「なんじゃ悟空。」

悟空「天竺、まだですかー?」

三蔵「天竺は西の果てにあるのじゃ。
   そう易々と辿り着けるものではない。」

悟空「そうは言っても、腹が減って一歩も動けませんよ〜」

この悟空はかなりお調子者なんですね。ここら辺の口調は何となくおどけた雰囲気です。
それに対して三蔵は真面目そうですね。座り込んでしまった悟空に「やれやれ」と溜息1つ。
すると、いいタイミングで三蔵が乗っていた白馬が嘶きます。

悟空「(馬の顔を撫でながら)おお、お前も疲れたよな。
   相当重いの乗せてるもんな。」(爆)

三蔵「こら悟空!…私は軽い。
   (そう言った途端足が震えだす馬)震えるな、馬!」

えーと、ダイエット成功してますよね?(^^;;
こんな調子で旅をしてるんですね。と、ここで悟空が五荘館前の行列に気付きました。

悟空「あれ?三蔵様、あそこ。あんなに人が並んでますよ。」

三蔵「本当だ…このあたりは信心深い人が多いんだね。」

良いことです。といった表情の三蔵に対し、悟空はもっと身近で切実なことを考えてました。

悟空「まさかあれ、飯の順番じゃねぇでしょうね?
   ちょいと、気になるんで見てきます!」

どうやら悟空は参拝ではなく、食料の支給の待ち列だと思った様子。
三蔵が頷くと、悟空は舞台の中央へと向かいます。この間に三蔵は馬から下りて、ゆっくりと悟空の後を追います。

悟空「なぁ!なんで並んでるんだよ。」

悟空が気さくに話し掛けますが、村人は全員で悟空を見た後、何も答えることなく首を戻してしまいました。思わずコケる悟空;;

悟空「おいおい!…飯か?飯の順番か?」

それでもなお食い下がる悟空ですが、村人は見た事も無い魔物に驚き、怯えるばかり。

村人(大神)「さ、触るな化け物!」

悟空「な、なんでぇ!おいら、人間に悪さなんてしねぇよ。」

ふんだ、と顔をしかめる悟空ですが、やっぱり普通の人は魔物は怖いんでしょうかね。
三蔵が舞台の上手で様子を窺っていると、突然ドラが響き、五荘館の扉が開き、中から二人の坊主(親方と金田先生)黄色の袈裟と紫色の袈裟の坊主が大層な籠に積まれた桃を両手に出てきました。

♪長寿の桃

魔物より魔物らしいメイクの坊主二人が、怪しくコーラスする歌でした。(笑)ミュージカル…音楽劇ならではの曲かもしれません。

二人「♪ここは五荘館」
坊主(親方)「♪命を救うお寺」
坊主(金田)「♪病を直すお寺」
二人「♪長寿の桃が咲く寺」

仰々しく登場してきた二人の足元にすがりつく村人たち。三蔵ははらはらと行く末を見ていますが、悟空は桃が気になってしょうがない様子。坊主の周りをうろちょろしています。

村人「♪私の目を」 村人「♪私の足を」 村人「「「♪私の病気を直してください」」」
村人(かえで)「♪命をください 長寿の桃をください」
坊主(親方)「♪命はお金で買うものだ」

足元にすがりつく村人(かえでさん)を一瞥して非情に言い放つ坊主。

坊主(親方)「まずは金だ。金はあるのか?」

村人(かえで)「……ありません。」

坊主(親方)「では命の桃はやれん。」

そんな殺生な…!と項垂れる村人ですが、また別の村人(大神)が坊主の前へと出ていきます。(今度は金田先生の坊主へ)

村人(大神)「お、お金ならあります!ここに!」

坊主(金田)「(村人が差し出した一枚の小銭を受け取る)ふん!こんなはした金で
       命の桃が買えると思うたか!この戯け者!!」

村人が必死に持ってきたであろうお金をいとも簡単に投げ捨てる坊主。慌てて拾いに行く村人を余所に、さらに桃をほしがる者が。えーと…1幕で山田警部をやってた方ですね。不自然なぐらい体中が震えて猫背になっています。

村人(警部)「お、お金!お金ならありますよ。
       ど、どうもすいませんね体の震えが止まらなくって(包みに入った中身を取り出す)
       ぎ、銀の、延べ棒です!」

坊主(親方)「おお、これはまさしく銀!」

これならいいだろう。と銀の塊を受け取ると、もう一人の坊主が桃を1つ男に手渡しました。

村人(警部)「も、桃だ!へへっ…」

他の村人が見つめる中がぶり、と一口口に含みます。すると、先ほどまでがくがく震えていた男の体の震えが止まりました!

村人(警部)「…震えが止まって、背筋がのびた!
       ばんざ〜〜い!!」

大喜びで上手へと走り去って行く村人。
桃の確かな効果を見た村人たちは、ますます必死で懇願します。
……でも、おそらくあの男は坊主と裏で通じてますね;;

村人(大神)「お、お願いします!!
       母の病気を治したいんです!(先ほどのお金を舞台中央で見せる)
       これで足りないなら…俺の命を差し出します!!」

両手を大きく広げて坊主の前で覚悟を決める村人。彼の母親と三蔵はその申し出に驚く。
しかし、坊主らはこれで等価交換成立とにんまり。

坊主(金田)「いいだろう、人間は桃の肥やしになる。(もう一人の坊主が桃を渡す)」

命と引き換えに命の桃を貰った村人。大事そうに抱えています。

村人(大神)「ありがとうございますっ
       (母親に桃を渡す)おっかぁ、これ食って長生きしてくれな。」

村人「お、おまぇ…!!」

坊主(金田)「さぁ来い!」

桃を渡し終えた村人の首根っこを掴んで寺の中に連れて行こうとする坊主。
息子が連れて行かれてしまう!桃よりも息子が大事…母親は必死で坊主の足にすがりつきます。

村人「お、お願いします!どうか、どうか息子の命は…!」

坊主(親方)「ええいやかましい!
       連れて行け。」

すがりついた手を乱暴に蹴り上げると倒れる村人に見向きもせずに連れて行こうとする坊主。

三蔵「お待ちなさい!!」

もう見てはいられない。三蔵が合掌しながら舞台中央の坊主たちの間に割って入ります。

三蔵「♪仏に仕える者が 命の売り買い嘆かわしい」
二人「♪いいじゃないか 命の売り買いなぜ悪い」
坊主(親方)「♪医者だって」
坊主(金田)「♪薬屋だって」
二人「♪金を取っている」
三蔵「♪それは世の中が間違っているのです」

正しい心を説く三蔵。ですが、なぜか坊主の言い分に荷担する者が。そう、悟空が納得したように坊主に近寄るのです。

悟空「♪なるほど坊主 いいこと言うね
    この世はなんでも 金、金、金だ〜」

三蔵「こら悟空!!そんな言葉に感心するな!」

悟空「♪いいじゃねぇか 人が生きてりゃ(村人に近づく)
    良い事も 悪い事もある
    全部良い事ばっかりじゃ そりゃつまらねぇ」

三蔵「仏の教えを馬鹿にするな!(合掌する)
   ♪南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏…」

村人に「お前らだってそう思うだろ、な?」と村人に混じって調子付いていた悟空ですが三蔵が念仏を唱えると、急に頭を抑えて苦しがり舞台中央で転がりまわってます。

悟空「いててててっ!!!」

三蔵「もう許しません!そなたの頭にはめた戒めの金冠、緊箍冠を縮めます!!」

念を込める三蔵。キリキリと縮む金冠に流石の悟空も「勘弁してください!許してください!」とのた打ち回る。
悟空の許しをこう声に手を外し、戒めを解く三蔵。
息を荒げながらも立ち上がる悟空。

三蔵「もう…そなたと旅をしようとしたのが間違いであった!」

悟空「そんなぁ〜三蔵様ぁ〜〜(上手にいる三蔵に近づく)
   そんなに邪見にしたら、かわいそうじゃけん?」

がくっとコケる一同。(三蔵以外)わかる人にはわかる新春から引っ張ってきたギャグですね。「歌え!花組」でシルバーの衣装を着て歌ってたシーンですね。

三蔵「…わかった。
   それより、あの桃を皆に配りなさい。」

悟空「あいよ!
   おい、お前ら!その桃を渡せ!」

坊主(親方)「何を言うか、この猿!」

まぁ、もちろん素直に桃を分け与えるわけありませんよね;;

悟空「なんだとぉ!?見てろよ〜〜!」

かちん、と来た悟空は下手の方にあった五荘館と書かれた三角柱の影にあった大きな岩を掴み上げると堂々と持ち上げ、坊主たちの目の前で真っ二つに割る!!

悟空「おりゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

坊主「ひ、ひいぃぃ!お見逸れしましたぁ〜〜!!」

悟空の並外れた力を見た坊主たちはすっかり怯え、桃を悟空の前に置くと、寺の中へ一目散に逃げて行きました。

悟空「ほら、お前ら!桃だぞ!」

村人へと桃を差し出す悟空。その桃に一斉に群がる村人たち。悟空が「並べよ!並べ!」と言いますがそんな事は耳に入ってませんね;;
その中の一人が桃を手にすると、上手で様子を見ていた三蔵にお礼を言っています。
ですが、その人だかりの中から乱暴な声が。
悟空がもみくちゃにされてる僅かな隙に桃を奪ったガラの悪い男たち三人が舞台の前面に出てきて

「やったーー!!!俺達の桃だーー!!」

と二人が桃を抱え、一人が刃物を取り出して周りの村人を遠ざけます。

村人(かえで)「あああ、あの…
        あたしにも1つ、分けてくださいませんかね?」
        こ、これ(指にはめていた指輪を外す)
        母の形見の指輪です。これでどうか1つ…!」

荒くれ者「(指輪を見る)へっなんだこんな安物!!」

思いっきり村人にとって大事な指輪をいとも簡単に下手へと放り投げる荒くれ者。それを追って下手へと下がる村人かえでさん。
残った村人たちはただ後ろで怯えるばかり。三蔵も驚きとショックが入り混じった顔で見ています。

荒くれ者「「「っへ!金だ金!!金もってこーい!!」

悟空「ざけんなよ、てめぇら!!」

三蔵の行いを無にした荒くれ者たちに怒りを露にする悟空。どこからか取り出した如意棒で荒くれ者を懲らしめる!
荒くれ者も最初は応戦してましたが、悟空の強さに、アッサリ降参。

荒くれ者「か、勘弁してくれ!!」

悟空「いいや…お前ら全員許さねぇ!」

悟空が如意棒を振り上げる!が…

三蔵「悟空!!!……許してあげなさい。」

他の誰でもない、三蔵からの止めに悟空の振り上げた如意棒は所在無しに下げられ、どうにも腹の虫が収まらない悟空は如意棒を床に叩きつけます。
すっかり怯えた荒くれ者は悟空の前に桃を差し出すと、四つばいになりつつ後ろの、村人たちがいる所へ。
桃を持った悟空はしばらく桃を見て黙っていましたが

悟空「なんでぇ……こんなもの!!」

桃が巻き起こした騒動は、悟空が桃を村人たちがいる所に投げつけると同時に幕が下りました。
紗幕が下りる中「桃だー!!」と散らばった桃を桃をなおも求める村人がスローモーションで動いています。
紗幕の前に残ったのは、悟空と三蔵。

悟空「三蔵様、これが世の中だぜ。(如意棒を拾う)
   善なる行いが、必ずしも善なる心を生み出すとは限らねぇんだぜ。」

悟空のどこか諦めの色を含んだ言葉に、三蔵は目を泳がせながらも、手を合わせる。

三蔵「……それでも、人の善なる心を信じるのが仏の教えです。」

悟空「…なんでぇ、ちきしょう!」

三蔵の理想に、悟空は今一つ納得が行かない様子。
上手に走り去ってしまいます。三蔵は「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…」と念仏を唱えています。
ここでしばし暗転。
暗転の時間は短く、紗幕が上がり舞台に照明が入ると、また違う場所。今度は三角柱のセットの内、二本が広がって竹林になってました。(三角の一辺が折りたたみのセットになってたんですね。△__△こんな感じです。)その後ろには山々の風景が書かれた面が見えてます。
村人が行き交う中、一人…なんか変な人がいます。(笑)三又の槍を片手に、大蜥蜴の丸焼きを持ってる人なんですが…歩き方が赤ザメくんなんですよ。(大笑)
そこへ、上手の通路兼舞台から悟空と三蔵と馬が登場。五荘館到着時より、体力の消耗が激しそうです。三蔵は馬には乗っておらず、手綱を引いています。

悟空「はぁ…ちきしょう、いつになったら飯にありつけるんだ!」

もうヘロヘロな悟空ですが、それ以上に消耗が激しいのは三蔵。ふらふらと倒れこんじゃってます;;

悟空「!三蔵様!大丈夫ですかい?
   酷い汗だ…ね、馬に乗りましょうよ。」

三蔵「いや、馬も疲れている。私は大丈夫だ……
   それより、天竺への道を急ごう。」

そうは言っても、体力はもう限界。

悟空「三蔵様!
   もう、なんか食わなきゃ歩けませんよ。
   (張り出し舞台を見る)あ、三蔵様。あそこで飯食ってる奴らがいますよ。
   ちょいと、分けてもらえるように頼んできますね。
   ここで待っててください。」

頷く三蔵。舞台には現在、先ほどの変な人(笑)と一組の夫婦がいます。
悟空が言ってたのは一組の夫婦の方ですね。握り飯食べてます。

悟空「なぁ!その飯、ほんのちょっとでいいんだ、分けてくれねぇかな。病人がいるんだ。」

とっても友好的に頼みましたが…うーんやっぱり一般人にとって魔物は恐怖の対象なんでしょう;;
逃げられてしまいました…三蔵もちょっとショックっぽい。
ですが、さっきの変な人は残っていて「ん!」とあの大蜥蜴を差し出しますが…

悟空「ありがとう。ってそんなもん食えるかよ!」

まぁ、悟空ならともかく食べさせようとしているのは三蔵様ですからね;;
ダメだとわかると、その人は「げひ!!げひ!」と言いながら竹林の後ろへと消えていきました。(笑)笑える人は笑えるネタでしたね。

悟空「はっ!?なんだアイツは?!」

たぶん、赤ザメくんの血縁者かと。(爆)

悟空「三蔵様…ダメでした…」

しゅん…と肩を落とす悟空に三蔵は馬を引きつつ近づいてきます。

三蔵「もうよいのじゃ。
   それよりも、天竺へ行って経典を手に入れるのじゃ。
   そして、永遠なる人の世の幸せを実現するのじゃ!」

悟空「本当に、みんなが幸せになるんですか?」

三蔵「なる!経典の照らす光によって!」

キッパリと言い切る三蔵。それに興味を持つ悟空。

悟空「見たんですかい?」

三蔵「いや。けど、信じておるのじゃ。」

悟空「なんだぁ〜…信じてるだけかぁ。」

確証の無い答えに、悟空はがっかりしますが、三蔵はそんな悟空に説きます。

三蔵「信じる心こそが大切なのだ。」

悟空「信じる心が大切ねぇ…いまのおいらにゃ、飯の方が大切だよ。」

まぁ、たしかにそうかも…(汗)とここで軽快な音楽が流れてきました。

♪ばかばかしくもありがたくも

一番のみの短縮版。三蔵との旅の行程を表しているようですね。出会う人に仏の教えを説く三蔵に、ふざけてまわる悟空。

悟空「♪ばかばかしくも ありがたくも 仏信じりゃ 幸せになると
    こいつはお気楽 極楽浄土」

三蔵「悟空!!」

悟空「♪ばかばかしくも ありがたくも 念仏となえりゃ 極楽に行ける
    お眼々がばっちり 開眼供養
    死んで花実が咲くものか 生きてりゃ面白いことだらけ
    ああ永遠に あら生きてたいよ
    うけけけけ うけけけけ うけけけのけ!」

最後は下手の方にいた村人に絡んで終了。茶化しまわってる悟空に三蔵が手を合わせます。

三蔵「仏の道を茶化すでない!!」

悟空「あいたたたたたっ」

再び金冠を絞められてしまう悟空。(^^;;
舞台中央でのた打ち回る悟空。「ごめんなさい!許してください!」と三蔵に謝り戒めを解いてもらう。
肩で息をする悟空ですが、実は三蔵の方がへろへろ…

三蔵「さぁ、天竺へ…行こぅ……」

バッタリを膝をつく三蔵。

悟空「三蔵様の方がよっぽど乱暴者だよ…
   って三蔵様!!何してるんですか!!」

一息ついて三蔵の方を見ると、三蔵は膝をついたまま周りの土を集めて掌に乗せて口を開いています。

三蔵「私は…私はこの土を食らってでも天竺へ行くのじゃ!!」

口を大きく開けて土を食べようとする三蔵!ですが、その手を間一髪の所で悟空に止められます。

悟空「ダメですよ!!そんなもの食べちゃ!!(三蔵の手についた土を払う)
   (そのまま三蔵の手を握る)わかりました…三蔵様の気持ちはよーく解かりました。
   おいら、心を入れ替えて頑張ります!」

三蔵「悟空……」

悟空「(頷く悟空)…さ、三蔵様。立てますかい?」

三蔵の手を取って立たせる悟空。
と、そこへ下手の舞台兼通路から米と野菜をたくさん積んだ派手な屋台を引いた男四人組が登場してきました!(琴音さん、菊ちゃん、武田、西村)

商人(琴音)「お〜い、ここらへんで売ってくべ〜!」

♪お金だぜ!エブリバディ

隠し曲ですね〜ラップ調な部分もあり、調子のいい商人たちというイメージがよくわかります。(でも、ラップ調ゆえに4回目の公演でようやく歌詞が聞き取れました;;)

4人「♪お米に野菜に何でもそろう お金があればさなんでも買える」
商人(琴音)「♪大地耕し 種をまいて 水をやって それで実った食べ物を
       安く買って 高く売る」
4人「♪それ笑いが止まらない 笑いが止まらない」

三蔵と悟空の前で調子良く歌って見せる商人たち
ハラペコの悟空は商人たちに混じって(いや、商人たちのほうが勝手に巻き込んでるのかも;;)踊ってるので、野菜が手に入るんですが、それを三蔵に渡すと「それはいけない。」と屋台に律儀に戻してます。

商人(菊之丞)「♪人が人産みゃ飢えが広がる それでまたまた高く売れる エブリバディ!」
4人「♪それ笑いが止まらない 笑いが止まらない
    お米に野菜に何でもそろう お金があればさなんでも買える
    エブリバディ〜!」

上手の方でポーズを決める商人たち。
そこへ駆け寄る悟空。(三蔵は上手よりの舞台中央で馬と一緒に様子見)

悟空「なぁ!」

商人(琴音)「うわぁ!!なんだお前ぇは?」

悟空「この野菜、きゅうりの一本でいいんだ。
   あ、わけてぇ〜〜。あ、わけてぇ〜〜〜」

カンナ、小ネタかましますね。(笑)
これも赤ザメくんのネタですね。初日から数日は「皆さんご一緒に」と振って馬や三蔵様まで巻き込んでましたが、後半は琴音さんに「何一人でやってんだよ。」と突っ込まれてました。(^^;;

商人(琴音)「分けてってお前ぇさん金はあるのか?」

悟空「金は…無い!」

商人(菊之丞)「お金がなきゃそれは無理ってものですよ。
        ああ、あの馬と交換ならいいですよ。」

商人菊之丞がそう言うと、商人琴音が馬の前へと駆け寄って行きます。

商人(琴音)「おお、そりゃええべ!この馬と交換だ!」

三蔵「(馬と商人の間に割って入って)それはできません!!」

商人(琴音)「あら?できねぇってか。そりゃ残念だー
       んじゃ、さようなら。」

「さようなら。」と商人4人で同時に言うと、さっさと上手へと進もうとする商人ですがまだ悟空は頑張ります!

悟空「なぁ!頼むよ、ちょっとでいいんだよ!」

商人(琴音)「ああもう、わかった!わかった。
       そんじゃほれ、これやるで。な。」

あれ?意外といい人?籠に入れられたとうもろこしを掴んで悟空の方へと放り投げますが、悟空が掴む前にひょーいと野菜は商人たちの手に戻って行きました!(爆)
糸つきの野菜…なんだ、からかっただけか。(^^;;

商人(琴音)「あっはっはっはっは!
       ほしけりゃ金だ!金もってこーい!」

大笑いしながら、商人たちは上手の舞台兼通路へと進んで行きました。
再び舞台には悟空と三蔵と馬が残されました。

悟空「三蔵様…すいません。」

三蔵「もうよいのじゃ、悟空。」

悟空「でも、何か食べなきゃ…あ!飯といえば八戒と沙悟浄ですよ!
   奴ら食いもん探すって出ていってかれこれ三日だぞ!?」

そう、未だに逸れたまんまなんですよね;;
と、ここでまたまた曲がかかります。

♪見つからない?

このシーン「サクラ」では今までにないセットの動かし方をしていました。三角柱のセットがもの凄く活かされてました。四つとも山々の背景に替わると悟空や三蔵達の動きに合わせて動くんですよ。これで探し回ってる、動き回ってる雰囲気がよくわかります。

悟空「♪腹が減った 腹が減った
    飯屋はどこだ どこにある
    見つからない 見つからない!」

悟空と三蔵が上手の方をうろうろしていると、下手からは籠いっぱいの食べ物を持った沙悟浄と八戒が。(八戒が沙悟浄のお皿に水をやってて可愛いです。)
この歌は複雑です!童謡とかで追いかけて歌うタイプのものがあるじゃないですか。それと似たような雰囲気で次々に歌い手が増えて行くんです。
悟空が同じメロディーで歌いつづけますが、ここに八戒と沙悟浄も別歌詞で加わります。

悟空「♪腹が減った     腹が減った」
八戒・沙悟浄「♪アニキはどこだ どこへいった」
悟空「♪飯屋はどこだ    どこにある」
沙悟浄「♪どこにもいない」八戒「♪どこいった」
三人「♪見つからない 見つからなーい」

ふらふらと探しつづける4人。悟空たちが下手に来ると、八戒達は上手へ。すれ違いですね;;
セットが各人を隠したりしてるので、お互いに見当違いのところを歩き回ってるというのが一目瞭然ですね。
次のメロディーでは三蔵も加わります。

悟空「♪腹が減った     腹が減った」    三蔵「♪人を
八戒・沙悟浄「♪アニキはどこだ どこへいった」     救う道は
悟空「♪飯屋はどこだ    どこにある」         なぜ
沙悟浄「♪どこにもいない」八戒「♪どこいった」     私の前に現れぬ」
四人「♪見つからない 見つからない」

そしてまた上手と下手の立ち位置が変わるのですが、八戒達はそのまま下手奥へと下がって行きます。
そして…張り出し舞台の奈落からは新たな人物が!
ひょっこりと顔を見せたのは必要以上に真っ赤な舌(笑)の金角(紅蘭)と銀角(レニ)!金角が右、銀角が左側に立ち、二人の真ん中には真っ赤で大きな瓢箪が。<この部分のみ、画面いっぱいに広げてください;;

悟空「♪腹が減った     腹が減った」  三蔵「♪人を     金角・銀角「♪見つけたぞ! 見つけたぞ!
八戒・沙悟浄「♪アニキはどこだ どこへいった」   救う道は          偉い坊主を
悟空「♪飯屋はどこだ    どこにある」       なぜ             その名も三蔵
沙悟浄「♪どこにもいない」八戒「♪どこいった」   私の前に現れぬ」      玄奘三蔵
四人「♪見つからない 見つからない」                        見つけたぞ! 見つけたぞ!!」

「♪見つからない」と彷徨ってる一行とは正反対に手をつかみ合って喜ぶ金角と銀角。

銀角「アイツを捕まえて牛魔王様に突き出せば褒美がもらえるぞ!」

金角「そりゃいい!で、どうやって捕まえる?」

銀角「(瓢箪を触る)この紅葫蘆(こうころ)さ!
   こいつの蓋を開けて、奴の名前を呼ぶ。
   呼ばれた奴が返事をすれば、しゅっ…この中に吸い込まれる。」

銀角、動きの切れがいいです。(笑)

金角「そりゃいい!じゃあ早速…(紅葫蘆の蓋を外す)
   おい、三蔵!!」

悟空「なんだよ!」

上手で馬を休ませている悟空と三蔵に聞こえる声。でも、それに返事をしたのは疲れきっている三蔵ではなく、悟空!

金角「お前じゃない、孫悟空!」(違う違う!と指を振る銀角)

悟空「はい、そうですか。」

金角「って…」
二人「あーーー!!!!!」

銀角「あの猿が返事をしやがった!!!」

二人が叫んで指を指しますが後の祭り。強力な吸い込み力を見せる紅葫蘆に三蔵が腕をつかんだにもかかわらず悟空は吸い込まれてしまいます!
……とりあえず、紅葫蘆の蓋を閉める金角。(笑)

銀角「ど、どうする、金角?」

金角「まぁいい!銀角!
   (前を指差す)おい三蔵!こいつを返してほしくば
   平長山の蓮花洞までこーーーい!!」

「来ーーーーい!!」と銀角も言うと、二人を乗せた奈落部分がゆっくりと下へ。慌てて駆け寄る三蔵。

三蔵「♪返しなさい孫悟空を 返しなさい今すぐに」

金角「♪(ひょっこり現れて。奈落が途中で止まってるんですね。)
    慌てるな こいつの命しばらく預かった」

銀角「♪三蔵と こいつの命(紅葫蘆を差す)」

二人「♪交換だ〜!」

二人が大笑いしながら奈落に完全に消えると、三蔵が「悟空!!!!」と叫びますが、奈落から吹かれた煙(スモーク)に気圧されて強制的に舞台中央部分へ下げられてしまいます。
一人で馬を連れて歩き出す三蔵。目指すは平長山……って平長山と言えば、あの二人が向かったのも…
そう、下手から八戒と沙悟浄が再び登場です!

沙悟浄「♪やっと飯   飯を食えば   すごいんだ」
   八戒「♪見つけたぞ    アニキの力  (二人で籠を持つ)この飯を」
二人「♪食わせたい 食わせたい〜」

「アニキィ〜〜〜!!」ともうこちらも探すのにヘトヘトの様子。下手でさけぶ八戒と舞台中央でスライディングしてへばる沙悟浄。
けれど、沙悟浄の前には思いがけない人物が!お互いにビックリですね。

沙悟浄「三蔵様!?」

ようやっと会うことが出来ましたね!
ここで舞台が暗転。長い長い行程でしたね。でも、私は個人的にこのシーン好きです。全体を見ても良し、各人個別に見ていても良し。
さて、紗幕が下りた所で場面と人が替わり…上手の舞台兼通路から登場してきたのはあの商人たち!
琴音さんを先頭にひいひい言いながら屋台を押す武田と西村。最後に菊ちゃんです。
「頑張れ頑張れ〜〜」と励ましますが、ここは坂道らしく滑り落ちそうになります。危ない!

商人(菊之丞)「もう…いつ来てもこの蓮花洞の坂道はきっつぅい!!」

商人(武田)「きついったってあんたなんもしとらんやん!」

まぁ、実際に屋台を押してるのは武田と西村の両名ですものね。(^^;;
張り出し舞台のところまで出てくると、そこで止まり芝居が進みます。

商人(琴音)「ままま、そんなにボヤくなよ。もうちょっとじゃねぇか。
       それよりこの買い占めた野菜と米を、早く金に変えようぜ〜。」

お金大好き商人、嬉しそうです。(笑)
うえっへっへっへと、あまり綺麗とはいえない笑い声を上げる商人たちですが、ふと商人武田は疑問に思いました。

商人(武田)「ばってん、どうして米と野菜なんです?
       肉は、買占めんとですか?」

たしかに、肉は1つもありませんね。そう言った途端、商人琴音さんと商人菊ちゃんが大げさなリアクション!!

商人(琴音)「肉!?肉はダメだ!!」

商人(菊之丞)「そうですよ!!
        例えば、あれ…ほら、親子丼!
        あれは…コケコッコー!ブスッて鳥殺して作ってるんですよ〜!!!」

「えええっ!?」と驚く商人武田と西村。……って知らなかったんですかい?(汗)
ちなみに、薔薇組コンビは「殺して作ってる」という事実に怯えた感じです。

商人(琴音)「あああ、それとな!トンカツ!アレもダメだ!!
       あれはな、豚(トン)を殺して作ってるんだ!」

商人(菊之丞)「(張り出し舞台の前面に出てきて)
        あたしぃ〜トン子ちゃ〜ん。チョーかわいくなーい?
        ブスッ!!ブヒィーーーーー!!!」

ブスってのは、もちろん刺された音ですよ。(^^;;
ますます怯えて驚く商人武田と西村。そして、肉の話はまだ続くのです。

商人(琴音)「あ、あと!牛丼もダメだ!
       あれも、牛を殺して作ってるんだ!」

商人(菊之丞)「ンモー!!あたしぃ〜モー子ちゃ〜ん。チョーかわいくなーい?
        ブスッ!!ンモォ〜〜〜〜!!!」

菊ちゃん…声真似うまいっすね。(笑)
まぁともかく。すっかり肉に対しての恐怖心が根付いた商人たち。

商人(琴音)「だから、肉はダメだぁ!!
       そんなことしてると…いつか、地獄に落ちるぞ!!」

商人(武田)「じ、地獄に落ちるととな!?」

商人(菊之丞)「そう!殺生は地獄、一直線!!」

ん…でも肉と言うよりは、その先にあるものに対する恐怖ですね。

商人(武田)「でも、野菜も生き物じゃないんとですか?
       これってば成長ばしとりますもんね。
       種から芽が出て、葉っぱが出て…」

殺生の話から、ふと疑問に思った商人武田。西村も頷いてます。が、屋台の上に置いてあった赤い扇子を取った商人菊ちゃんにぺしっと叩かれてしまいます。

商人(菊之丞)「このバカ!もう救い様〜〜の無いバカ!!
        これだから田舎者は嫌ですよ!」

商人(武田)「あ、田舎もん馬鹿にした。」

商人(菊之丞)「いいですか!お米がこうやって…歩きますか!
        野菜が(籠の中の野菜を掴んで)「コケコッコー」って鳴きますか〜?
        (野菜を戻して)自分以外の生命体を口から摂取して生命活動を続ける。
        それが(ばっと扇子を広げる)生き物。
        決まった!」

ええ、ばっちりです。(笑)
得意げに戻る菊ちゃんの言った内容を商人琴音さんが野菜を手にして引き継ぎます。

商人(琴音)「その点、野菜はいいよなぁ〜〜
       野菜はよ、太陽と、水と、大地と…う○こ。
       それさえあれば成長するんだからなぁ〜〜〜罪がねぇよ〜〜」

まぁ、肥料って事ですよね。(^^;;
たしかに間違ってないです。それを聞いた商人たちも「はぁ〜」と納得顔。

商人(西村)「なるほどぉ〜太陽と!」
商人(武田)「水と!」
商人(琴音)「大地と!」
三人「う○こ!」

「なるほどな〜〜!」と野菜を慈しむような目で「えらいなぁ〜」など感心する商人たち。

商人(琴音)「ああ、話はこんくらいにして、そろそろ行くべ。」

野菜を屋台に戻すと再び歩き出そうとする商人たちですが、一歩二歩進んだところで商人菊ちゃんが声を上げます。

商人(菊之丞)「ああ、でも…あたしたち悪徳商人もある意味…
        人を、食ってますよね?」

はっ殺生していて地獄一直線!?商人菊ちゃんの呟きに、商人琴音さんが低めの声で近寄ります。

商人(琴音)「おいおい…越後屋。」

商人(菊之丞)「え、越後屋?」

商人(琴音)「(肩に手をかけて)そちも相当の…猿よのぅ。」

商人(菊之丞)「…ウキッ!」

声真似をして答える菊ちゃん。思わず商人たちに笑いが湧き上がります。
「それ、行くぞ〜」と上手の舞台兼通路に歩いて行く商人たち。
商人たちが消えると紗幕の中の舞台に照明が入り、次のシーンへ。


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