新春歌謡ショウ「歌え♪花組」


皆さま、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。<遅
…はい、そんなわけで今年も年が明けて最初の「サクラ」行事は新春歌謡ショウです。
いろいろありますでしょうが、私、如月紫水はとりあえず正月は一発笑っとけ!な感じで楽しんできました。(笑)
そしてお腹いっぱいに楽しんだ後は忘れぬうちにレポートに。(^^;;
でも、今回は時間がかかってしまいました(TT)

1月17日追記:なんとか、一通り完成を見ました!遅筆ですいませんです;;

1月21日追記:修正いたしました。賽鍵さん、クロさんありがとうございました!

えー…ということで新春歌謡ショウ「歌え!花組〜花組奮闘公演〜」全面バレレポートをお届けいたします。
これより下の文章にはサクラ大戦各作品やそれに関するあらゆるメディアのバレが存在すると思いますので、バレを気にする方はお気をつけください。m(__)m
今回のレポベースは…おそらく(?)初日です。それ以外は4日の夜公演とか5日の昼公演とか…あと、細かい所はブロードバンド放送で確認してあります。(楽日は別にしてありますので。)
もちろん、長文になります。(爆)

それでは、そろそろレポート本文に移りたいと思います。
最後までお付き合い頂けたら幸いです。



―――レポート本文―――――


前回の夏が冷夏なら、今年の冬は暖冬かもしれませんねー…と思うくらい比較的穏やかな気温の中、青山劇場へ。
またここに来れて嬉しいですよ。(笑…劇場としては厚生年金よりも青山の方が好きなので…キャパの問題はあるにしても;;)
会う人会う人と「明けましておめでとうございます」と新年のご挨拶。

会場前では恒例の挨拶回りも。今回は薔薇組もダンディ団も居ないて淋しいなぁ…と思っていたら親方と大神さんと、なんと武田がいるではないですか!!
え?飛び入り??ドッキリ???(爆)パンフレット見ればわかるかな??

中に入って早速パンフレットを購入。(今回は先行販売に並ばなかったんです。)
見ると武田は「ベロムーチョ武田」ではなく「火の用心」と書かれていました。あ、ダンディ団ではないだけであって、出演はするんですね。

今年の物販コーナーで一番賑わっていたのはもしかしたら「新宝島」の台本設定資料集の先行販売だったかもしれませんね〜みんなけっこう買ってました。
私も買いましたよ〜割としっかりしたつくりでした。

さて、買うものも買って席に行ってまずすることは、チラシチェック…の前に、初日は自分の席に慄いてみました。(笑)
おおお、前から2列目の真ん中あたりなんて、3年前の「巴里花組ライブ」以来だぁ…!(ちなみに、最前列はまだ未体験;;)今回の新春歌謡ショウは公演が進むにつれてどんどん席が下がっていくので(苦笑)今日は目を輝かせてばっちり見たいと思います!(爆)

で、一呼吸置いてチラシチェックです。(^^;;
でも今回はわりと薄めですね〜小さな「サクラ大戦物語〜ミステリアス巴里〜」のチラシと今回の公演のチラシと、DVD化決定!のお知らせチラシといつものavexから出ている情報誌「pam!」と…
あと、ファミリーマートなどにある端末から出せるデジフォトのお知らせと、ezwebのサクラの「着うた」サイト「うたう♪サクラ大戦」の宣伝ステッカーと、REDの作品である「ガングレイヴ」の新作のチラシと、これだけでした。
DVDの発売日が思いのほか早くて、お財布は痛いけれど気持ち的には嬉しい限り♪

さぁ、そうこうしている間に青山劇場からの間もなく開演とのアナウンスが。
もう、前説も公演の立派な一部なんですね〜

広井「どうも〜〜!!」

下手側の客席通路から箒を持って登場したのはお馴染みの掃除人の広井さん!!
通路を横切り、上手側の舞台に通じる通路を下り舞台へ。その間に、お客さんとのふれあいもありましたよ。お菓子をあげたり。(^^)
舞台に上がってご挨拶。

広井「いやいやいや、正月だよ。
   ね、ありがたいことです。
   …もう、皆さんわかってると思いますが、携帯電話。
   もう一度ご確認をお願いします。ね、まさか鳴るなんてことはございませんでしょうが。」

もう、今回は大分こちらも慣れたと踏んだのか、諸注意なるものはこの携帯電話ぐらいしかありませんでしたね。

広井「えー、掛け声拍手など、どんどんやっていただいてかまいません!」

とここで、お約束のように客席から「王子!!」と声が飛ぶ!

広井「ありがとう!そうです!ね!
   もう、素晴らしいですね。歌謡ショウのお客様は。
   拍手は短く、歯切れよく。掛け声はスパッと!
   ね、うまいですよ。今歌舞伎だってこんなに声かかりませんからね。」

―――4日・夜――――

えー、一日間を置いて劇場に行きましたら、ここで追加されてました。
手拍子についてです。

広井「えー…それと、劇中の歌の部分ですが、手拍子。
   あの、今日のお客さんは静かに歌を聞きたいんだなって思ったら
   すっと手拍子は遠慮してください。
   もう、意地になってこんな(手を叩きつづける)になってる人もいますが、
   お見苦しいのでね、あ、今日のお客さんは乗ってこないなって思ったらぱってやめる!
   今年の課題、場の空気を読む。」

そうですね、大事ですよね、空気を読む能力ってのは。何事においてもね。

―――――

広井「えー…そんなわけでね。
   今年も、どうぞよろしくお願いします!盛り上がっていきましょう!!」

いえーい!と客席を乗せる広井さん!
今回は親方も出ないうちに終了か!?と思った矢先に下手から親方登場!!

親方「広井!」

広井「はい!」

親方「(舞台中央に歩いていきながら)お前、何一人で盛り上がってんだよ。」

広井「え、あ、いや、新春だなぁって…」

親方「ああ、新春だな。でも、お前の仕事は掃除だろ。
   な?」

広井「はい;;」

親方「ちょっとその前に…(法被の中から一冊の本を取り出す)
   こんなの売ってるって聞いたんだけどよ…」

親方が取り出したのは、この会場で先行発売されているあの本!!

広井「あ、知ってますよ。それ。」

親方「えー、「島宝新」…」

広井「逆でしょ!「新宝島!!」

親方、つい太正時代の読み方で読んじゃいましたね。(笑)

親方「広井王子作って、お前掃除人のくせになんでこんな本出してんだ!」

親方の鋭いツッコミに、広井さんたじたじ…かと思いきや?

広井「いや、違うって!それは、俺の遠い親戚の広井王子って人が書いたの!
   俺じゃないの!!」

そうきたか!(笑)
これには親方も苦笑交じりに納得?(^^;;
えーと、これで総合プロデューサーの広井王子と、掃除人の広井はまったくの別人だってことが証明されましたね!(謎)

広井「で、その遠い親戚の広井王子が出したのが「新宝島」台本資料集。
   去年やった、夏の台本ですよ。2幕の方の台本ですね。
   (ページをぱらぱらとめくりながら)設定資料本…演出アドバイスとか、楽譜もついてる!」

親方「おぉ、いいじゃねぇか。」

広井「いいっすよね、これ。
   ね、正月なんですから!(階段を下りて客席の最前列へ)
   お年玉でね、あげましょう。」

と、最前列の上手側の方に手渡し!!おぉ、もらえた方はラッキーですね!!

親方「太っ腹だねぇ。」

広井「あれ親方のですよ。」

親方「は?」

広井「楽屋の所に置いてあったやつでしょ?」

親方「あ、ああ持ってけって言われて…」

広井「あれ親方の分ですよ。
   ですから、親方は買ってください。あの、あっちで売ってますから。」

親方「あー…買うんだ;;」

親方、とんだ誤算でしたか?(^^;;
でも、ちゃんとプレゼントはプレゼントのままですよ。

親方「まぁ、いいよ!!
   それよりも、お前の仕事は掃除!
   掃除人なんだから!」

お、話題転換ですな。広井さんはぶちぶちいいながら足元を箒で掃いています。

親方「なんて言うの…掃除人には掃除人の分ってもんがあるでしょ!」

広井「なんですか、「分」って?」

親方「分ってのは、身の程とか、力量とかそういうことだよ。」

広井「あ、そうですか。身の程ですか。
   じゃあ、親方はあたしのことを身の程知らずとかそういう風におもっているんです?」

親方「そ、そうだよ…」

広井「いいですねぇ身の程知らず。」

予想外の答えに「え?」とひるむ親方。そりゃあ、普通は怒る所ですものね。

広井「いいですよ。無鉄砲。
   器が大きいと!ね?」

親方「別に、褒めちゃいないんだ!」

広井「褒めてないの?」

親方「褒めてないよ!だいたいな、お前はそんなちゃらちゃらして
   掃除人は掃除人の仕事をしなさいと!
   大体な、前説はお前の仕事じゃねぇんだよ!」

広井「あ!仕事じゃないんだこれ!」(^^;;

ええっ!?てってきり仕事の一部かと思ってましたよ!(爆)

親方「大体、今回の稽古だって、全然稽古場の掃除しなかっただろ!
   本番だって、劇場の掃除全然やってないだろ。」

―――初日―――

ここで初日では広井さんがぽろっと「いろいろ忙しかったんだよ。「サクラ5」とか作らなきゃいけなかったんだから;;」と零してしまいました!(笑)
あっれー?遠い親戚の話では?(爆)
ええ、4日以降はこのぽろりは無くなってましたよ。(^^;;

―――――

広井「(階段の所に座りながら)だって、掃除なんかしてる場合じゃなかったんスよ。
   奮闘公演なんですから。」

親方「何が?」

広井「稽古場から面白かったじゃないですか。
   一緒に見ちゃって掃除している場合じゃなかった。」

サボり?(爆)いやいや、ホントは違いますけどね。(^^;;

親方「たしかに、今回の稽古は大変でしたよ!
   奮闘公演という事で…」

広井「ビックリしました!」

親方「頭が下がるでしょ!」

広井「はい、下がります。」

親方「な!だから俺たち裏方も、頑張らなきゃいけないと。」

広井「なるほど!
   なんだ奮闘公演っていうから、花組さんだけ頑張ってるのかと思った。」

親方「(^^;;
   違うだろ!」

広井「裏方も頑張るんだ。
   なんだ、言ってくれればよかったのに。
   早く言ってくれなきゃ。頭悪いんだからさ。」

親方「じゃあ言うよ。頑張るから!」

広井「頑張る、頑張る!」

親方「座ってないで立ちなさい!(広井さんを立たせる)
   えー…そういうことで…
   新春歌謡ショウ、花組奮闘公演!題しまして…
   「歌え!花組」でございます!!もう間もなく、開演でございます。
   最後までごゆっくりお楽しみください!」

広井「お楽しみください!」

2人で一緒に一礼をして、前説終了!(^^)
頭を上げると、親方を先頭に下手へと歩いていきます。
下手へ下がる寸前に広井さんが一言。「親方の頭はいいね、初日の出だ。」と言っていました。(笑)
坊主頭ですからね。

さぁ、場内も暗くなり、いよいよです…!
開演のアナウンスが入ります。

カンナ「みなさま――ふぇっふぇっふぇっ
    あ、入れ歯が…(笑)」

入れ歯っすか、カンナさん!?煤i ̄□ ̄;;

カンナ「えー、改めまして―――うけましておめでとうございます。
    人の始まりはアダムとイブ。国の始まりは大国主命。
    そして一年の始まりは新春歌謡ショウ!
    恒例となりました新春歌謡ショウ。申年の今年は、
    花組ふんどし公演!歌います!踊ります!笑わせます!さぁ、いよいよ開演です!!

    …おいおい!!誰かつっこめよ!このままじゃマズイだろ!!(大笑!)
    花組奮闘公演だろ!ふんどしじゃまずいだろ!
    ―――さぁ、花組奮闘公演、いよいよ開幕です!!」

な、長いアナウンスだなぁ(笑)
さすがカンナさん、最初からとばしてますね!(爆)

―――4日・夜―――――

本日はマリアさん♪

マリア「皆様―――うっふふふふふ…
    うけまして、おめでとうございます。(笑)
    人の始まりはアダムとイブ。国の始まりは大国主命。
    そして一年の始まりは、新春歌謡ショウ!
    恒例となりました新春歌謡ショウ。申年の今年は、花組奮闘公演で、ござる。
    歌って、踊って、笑わせます。
    心の準備はよろしいですか?では、開幕です。」

マリアさん、ちょっと陽気な路線でした。(笑)


―――5日・昼―――――

この日は織姫さん。

織姫「皆さま―――うっひゃっひゃっひゃっひゃ
   …うけまして、おめでとうございまーす!
   人の始まりはアダムとイブ。国の始まりは大国主命。
   そして一年の始まりは新春歌謡ショウ!
   恒例となりました新春歌謡ショウ。申年の今年は、花組奮闘公演でぇござる!
   歌って、踊って、笑わせまーす!
   心と体の準備はよろしいですか?さぁ、開幕でーす!!」

今回は各日そんなに変化は無いのですね。それでも、個性は出てますが。

―――――

さぁ、いよいよです…!
するすると暗い中幕が上がると、そこには桜吹雪をあしらった薄桜色の幕が貼ってありました。
チョンッ、と拍子木の音が響いたと思えば、どんどんと調子を早めてなんともまぁ、お正月らしいこと。
最後にもう一度チョンッと鳴らすと、ばさっと幕が真ん中から二つに割れて、その奥にはかえでさんと大神さんと花組が紋付袴姿でずらり!
最初の新春歌謡ショウの時よろしく、一列に並んでおります。
(下手から順番に、かえで、マリア、紅蘭、カンナ、アイリス、レニ、織姫、さくら、大神です。)

チョンッとまた一つ音が鳴ると、かえでさんが頭を上げます。

かえで「皆さま、あけましておめでとうございます。
    …♪劇場に夢が、ある 劇場に愛が…ある(笑)
    愛がある、他人事は思えません。」(笑)

たしかに、愛は、ありますね。(^^)
今回は歌と、そちらの名前を取り入れた挨拶なのですね〜

かえで「大帝国劇場副支配人、藤枝かえででございます!(礼)
    …新年改まりまして、花組よりご挨拶、口上を述べさせていただきます。」

深々とかえでさんが礼をすると、今度は隣りのマリアが頭を上げました。
どうやらこうやって順々に挨拶を述べて、その後はまた頭を下げた状態でまわっていくみたいですね。

マリア「あけましておめでとうございます。(礼)
    …♪一度だけの 人生 愛を…(ちらっとかえでさんを見て。(笑))
    知る 喜び〜〜
    …ロシアの雪をも溶かすような、皆さまの熱き血潮に
    春の、うららかな陽射しを感じております。マリア・タチバナです。(礼)
    歌謡ショウも、本年で8年目を迎えることと相成りました。
    これも一重に、皆様方の支えがあってこそ。
    花組一同、ますます精進いたしたいと思います。」

さすが、リーダーらしい、キリッとした口上!続いては、紅蘭です。

紅蘭「あけまして、おめでとうございます。(礼)
   …♪(手拍子をしながら)だから〜恐れない〜 失敗を恐れない〜
   おー!!(片手を上げて)
   …人生、いろんなことがおこります。崖っふちさきに、追い込まれることもあります。
   でも!前進あるのみ!!李紅蘭!
   今年も元気に行きましょう!!」

明るく元気!それが紅蘭、ですね。(^^)

カンナ「あけまして、おめでとうございます。
    ♪むすば〜れぬ〜〜 愛だ〜けど〜〜 この愛は〜永遠に〜〜〜
    ったぁ、なかなかいかねぇ。たぁなか…
    たぁ、なかなかいかねぇ。(笑)(浅く礼)
    ま、世知辛い世の中だけど、このサクラ大戦の舞台にゃぁ、ちゃぁんと
    (ちょっとかえでさんを指差して)愛がある、と思っている桐島カンナだ!
    今年も、よろしく!!」

カンナらしい、陽気な挨拶でした。しかし、今回は「愛」って、引っ張られてますな。(笑)

アイリス「あけまして、おめでとうございます!(礼)
     ♪病は気からと申します
     …みんなの気持ちを、くみ、とって、みんなを癒してあげましょう〜
     アイリスです!
     今年も、いっぱい楽しもうね〜〜!」(^^)

うんうん、アイリスは今年もかわいい!!(笑)

レニ「あけましておめでとうございます。(礼)
   ♪もう一度 思い出して あなたは主役〜
   …ミレニアム。は、もう古い。(笑)
   そんな昔のギャグを、いくらかずえてみても仕方の無いこと。
   …前を見れば、あ、れに見ゆるはあなたの立つ場所。
   レニ・ミルヒシュトラーセです!今年もどうぞよろしくお願いします!」

おお、レニは合わせ技できましたね!お正月は、毎年さりげな〜くレニが光ってますよね。

織姫「みなさん、あけましておめでとでーす。
   …♪息も できないくらい〜 何かに、夢中になっていた〜〜
   サクラに夢中になるのは、まやかしじゃないでーす!
   サクラワールド本当に楽しいでーす!夢中になりまーす!
   ソレッタ・織姫でーす!今年も、大興奮でーーす!!」

織姫らしい、ラテン系のノリの明るい挨拶でした。(^^)

さくら「あけましておめでとうございます。(礼)
    ♪ひらりはらりと 夢〜膨らませ〜〜
    …ちさな夢も、見つづければ大きな夢へとつながります。
    真宮寺さくらです!今年も、皆さんと一緒にたくさんの夢を見ていきたいと思います!」

さくらも、綺麗に締めましたね。さぁ、最後になりました隊長です!

大神「あけまして、おめでとうございます。(礼)
   …♪風〜がそよぐよ フラフラ〜〜
   カリカリしないで気持ちを楽に、大好きなことだけ考えると…
   す〜〜〜〜〜〜……やまぁ!楽しくなってきたでしょう!?(笑)
   大帝国劇場支配人見習い、大神一郎です!」

お、モギリ役じゃなくなってますね!そうか、支配人見習いかぁ…と大神さんは長く間を置かずに締めに入ります。

大神「本年もどうぞ!!
   (全員顔を上げる)花組をお引き立ての程
   (左手を広げて)隅から(右手を広げて)隅まで!
   (両手を前方に持っていきながら)ずずずいぃ〜〜〜と!」
   <チョンッと拍子木の音。>
全員「御願い、奉ります〜〜〜〜!!!」

全員でもう一度深々と礼!ええ、こちらも頑張って今年も花組を応援していきます!!
初春の口上もビシッと決まりました!
チョンッチョンチョンチョンチョンチョンチョッチョッチョチョチョチョチョチョ…チョチョンッ
と拍子木の音と共に幕!!
いよっ花組!!



幕が閉まってから、間を置かずにぼーん…ぼーん…と低く鐘の音が響く中、幕いっぱいに照明で出来た雪がちらつきます。
小さく拍子木の音がすると、幕がするすると上がります。
そこは東京下町の土手。雪の降る中、一人の女性が土手の下で傘を差しながら人を待っている様子。
そこにやってきたのは、下手から土手の上から登場の三人組のチンドン屋。
先頭は青い着物に髷をした男。チンドン屋に欠かせない鐘付きの太鼓をしょっています。次にくるのは、ピエロのような扮装のサックスの男。最後に、派手な橙色の着物におしろいを塗った小太鼓の男。
少し物悲しげに演奏しながらゆっくりと歩いてきます。

そのチンドン屋が舞台中央に差し掛かったあたりで、女性が待っていた男が下手からバタバタと走りこんできます。どうやら、職人あがりのようですね。
男を見つけた女は嬉しそうに駆け寄るが、近くまで来たところで、つんっとそっぽを向いてしまう。随分長く待たされたようですね。
機嫌を損ねた女に、男はひたすらにあやまっています。
その姿勢に、女はそっと傘を差します。
思わず顔を見合わせて笑顔を交わす。

あ…と男が空に手をかざして上を見上げます。どうやら、雪が止んだようです。
女も、傘を閉じて肩に積もっていた雪を払います。その様子をみた男は、そっと首にかけていた手ぬぐいを、襟巻き代わりに女に巻いてやるのです。
2人は腕を組んで歩き出し、男が懐から出してみせた給料の入った袋を片手に仲睦まじく、下手へ走っていきました。

その様子を見守っていたチンドン屋たちは、上手寄りにある土手の階段を下って2人がいた土手下へ。
演奏も丁度、おわったとことですね。

先頭の男「年の瀬に、男と女しっとりと…」

サックスの男「薄いボーナス、熱い夜。」

お、うまくまとまりましたね。と笑いあうチンドン屋たち。

先頭の男「はははっ…いやぁ羨ましいねぇ」

小太鼓の男「浅草寺で除夜の鐘でも聞くんだろ。いいねぇ〜〜」

サックスの男「いいねぇ〜〜」

先頭の男「それに比べて俺らはよぉ、大晦日まで働き詰だよ。」

小太鼓の男「貧乏暇無したぁ、このことだな!」

サックスの男「ま、仕事があるだけましってもんよ!な。」

先頭の男「そりゃそうだ。(笑)
     …よし!今日はこの辺で終ぇにして、そこらで熱いの(おちょこを手で作ってあおる)
     きゅ〜〜って引っ掛けて帰ろうか!」

先頭の男の提案に、残る二人も「いいねぇ〜〜!」と同意を示しますが…

サックスの男「…と言いたい所だけどよ。
       早く帰らねぇと、かみさんに角が生えちまう!」(笑)

と、両方の人さし指を頭につけておどけて見せると、二人とも納得の声が。(笑)
ドンっと小太鼓を一つ鳴らして、結論を。

先頭の男「しゃぁねぇな。じゃあ、とっとと帰ぇるか。」

サックスの男「おう。」
小太鼓の男

全員の意見が一致して、さぁもう一曲流しながら帰ろうかと上手側を向いたと同時に、下手から澄んだ声と共に(笑)レニが登場!

レニ「すいません!」

先頭の男「はい。」

レニ「こんばんは。」

チンドン屋たち「こんばんは。」

レニ「このあたりで、拳銃を持ったロシア人の女の人見かけませんでしたか?」

レニ、そりゃ実直すぎるでしょ!(爆)チンドン屋たち、引いてますよ。(^^;;

先頭の男「拳銃を持ったロシア人の女…
     ぶっそうだね、おい;;」

レニ「とても。」

フォローになってないない。(^^;;

先頭の男「おい、お前見たか?(後ろの二人を見ながら)」

サックスの男「いや…」

先頭の男「お前は?」

小太鼓の男「いいやぁ…」

先頭の男「(レニのほうに向き直って)知らねぇなぁ。」

レニ「もうお蕎麦屋さんに入っちゃったのかなぁ?
   …すいません!」

レニの独り言を聞き流して行こうとした、チンドン屋ですがもう一度呼び止められて足を止めます。

レニ「このあたりに、遅くまでやってるお蕎麦屋さんがあるって聞いたんですけど、知りませんか?」

先頭の男「あ!富士子婆ちゃんのとこだろ!」

お、今度は脈ありだったみたいですね。

レニ「たぶん!」

先頭の男「お、丁度良いや。俺たちよぉ、その近く通るからついてきな!」

レニ「ありがとうございます!」

軽く礼をしてお礼を言うレニに、チンドン屋たちは「いよっ」と楽器を叩いて陽気な曲を演奏し始めました。
チンドン屋たちと一緒に軽く踊るレニがかわいい。(笑)
舞台を一周して、上手へ。その後ろをスキップでついていくレニ。

レニ「よろしくおねがいしまーす!」

…もう、毎度毎度、歌謡ショウのレニはめんこいですねぇ。(笑)
さて、誰もいなくなった舞台に一瞬の沈黙。それを破ったのは背中を丸めながらとぼとぼと土手の上を上手から歩いてくる一人の男。頭に手ぬぐいを巻いて、法被を着て、手には拍子木を持っています。

火の用心「火の〜〜よう〜じ〜ん〜〜……
     しゃっしゃりま〜〜せぇ〜〜〜……」

ああ、武田だ。(爆)
でも今回は武田であって武田じゃないんですよね。(^^;;
ゆっくりと「火の用心」を繰り返しながら舞台を上手から下手へ進んでいきます。
その舞台の中央付近に差し掛かったところで、土手下の下手からは紺色の法被を羽織った恰幅のいい男が、上手からは帽子を被って着物姿の痩せ型の男が歩いてきまして(最近歌謡ショウの常連顔になりつつある大前さんと塚田さんですね。)…すれ違った所でお互いに顔を見て「あ!!」

法被の男「鶴吉っ!!」

恰幅のいい男が痩せ型の若い男につかみかかろうとするが、それを何とか交わした若い男は脱兎の如く下手へ走り去る!!それを見失うまいと後を追う法被の男!!
…そんなことに目もくれない火の用心の男。上手寄りの所まで進んだところで一度足を止めて空を見る。

火の用心「…ああ、雪は止んだみてぇだな…
     ふぅ〜〜〜…今年はめっぽう冷える…
     さ、早いとこ家に帰って、熱いのを一杯やるか…」

気を取り直して再び拍子木を構えると、とぼとぼとあるき出します、が…

火の用心「火の〜〜よう〜じ〜ん〜〜……って痛っ!!」

あーあ、指を挟んじゃったみたいですね。(^^;;
ちょっと指を抑えながらなさけな〜く退場。(爆)

火の用心「火の〜〜よう〜じ〜ん〜〜……
     しゃっしゃりま〜〜せぇ〜〜〜……」

…さて、その火の用心の男と入れ違いに下手からカンナ(冬服)を先頭にさくら(冬服)がやって来ました!!

カンナ「おい、さくら!」

さくら「はい。」

カンナ「どこなんだよ、その蕎麦屋ってのはよぉ!」

さくら「このあたりだと思うんですけど…」

カンナ「(足を止めてさくらと向き合う)だいたいさ…
    大晦日に年越し蕎麦の注文忘れるってのもどうかしてると思うよ?!」

う〜ん、カンナさんちょっといらだってます?(^^;;
さくらも、困った表情で返答。

さくら「だって、昨日まで年忘れ公演だったでしょ。
    で、今日は大掃除で…忙しかったんですよ、みんな。」

カンナ「…はい、それはいいとしよう。
    じゃあさ、蕎麦を買いに行くって出かけてった二人だよ。
    一人は…
    「両国なら、遅くまでやっている店が、あるわぁ」…」

さくら「誰ですか?」

うわ、さくらさんツッコミ早い。(笑)

カンナ「あれー!?わかんない?そっくりなのになぁ
    ほら、鼻にかかってふぁんふぁんって……もう、かえでさんだよ!!」

さくら「ええっ!?  はい、はい…」(^^;;

カンナ「あれー?
    それでもう一人はさ…
    「両国なら、遅くまでやってまーす!!」」

さくら「それは織姫さんです!」(^^)

お、こっちはさすがに即答ですね。う〜ん、カンナのモノマネ芸にも磨きがかかってきましたか?(爆)

カンナ「そう、いつも喧嘩腰のアイツだよ!なぁ、
    かえでさんと織姫が蕎麦を買いに行くって出かけていってかれこれ3時間だよ?
    どうして帰ってこないのよ!」

さくら「きっと何か事情があるんじゃないでしょうか…」

カンナ「事情ね、はい、わかりましたいいですよ。
    事情があったとしましょう。じゃあさ、蕎麦を買いに行くって
    出掛けてったかえでさんと織姫があんまり遅いから迎えに行ってくるって
    出てった二人、マリアとレニだよ!奴ら出てってからだって2時間だよ。
    あたいたち3時間待ってんだよ!?」

さくら「ああ、はい…」

カンナ「お腹すいちゃうでしょ!?お蕎麦伸びちゃうでしょ!!?
    (さくらに詰め寄りながら)それとも何かい?蕎麦の実でも栽培してるって
    テメェ言いてぇのか!」

さくら「へ、変ですねぇ…」(じりじり後ずさりながら;;)

カンナ「変ですよ!さくらとあたいがこうやってうろうろ探し回ってるのも変ですよ!
    たかが蕎麦なのによぉ!
    ……(2、3歩進んだところで身悶え)〜〜寒いっ!
    さくら!!どこなんだよ、その蕎麦屋は!!」

うわぁ、カンナさん相当気が立ってますねぇ(^^;;
さくらも必死ですよ;;

さくら「りょ、両国橋の近くの蕎麦屋だって言ってましたからねぇ!」

慌てて階段を上り土手の上へと出てあたりを見回すさくら。カンナもその場から手をかざして「もぅ、どこどこどこ〜?」とあたりを見回していると…

「どけどけどけどけぇ〜〜!!」

カンナ「あぁ、危ない危ない危ないあぶない!」

なんと、先ほど逃げていた若い男が下手からイキナリ登場してカンナと正面衝突!!
…ですが、力の差ですかね、男のほうだけがスッ転んでしまってます。(^^;;

カンナ「大丈夫かよ?」

「いってててて…(立ち上がりながら)
 なんでぇ気をつけろ!!」

カンナ「あぁ、悪ぃ悪ぃ。」

「悪ぃ悪ぃですんだら警察はいらねぇんだよ、このおたんこナス!!」

カンナ「……なんだとぉ〜〜!?」

冷静に聞いていたカンナも、売られたケンカは買います。(爆)
見るに見かねたさくらが、階段を駆け下りて男の後ろから抗議!

さくら「ちょっとあなた!
    …ぶつかってきたのはあなたですよ?」

「なぁんだと、女だと思って下手に出てりゃあつけあがんじゃねぇぞ!
 怒るでしかし!!」

今度はさくらにガンつけ!フラフラと舞台中央あたりへと立ちます。

「おい、こちとらなぁ、この両国界隈じゃあちったぁ名の知れた大兄さんよ。
 …名前を聞いて驚くな。その名も高き、三ゾロの鶴たぁ〜!
 (すっとあぐらをかいて見栄をきる!)あ!俺のぉ〜ことよぉ〜〜!!」

うーん、カッコ良く決まったんですが……当のさくらとカンナは冷めた様子;;

さくら「…知ってます?」

カンナ「いや、知らねぇ。」(頭をかきながら)

さくら「全然わかりませんねぇ。」

カンナ「ん〜わかんないねぇ、だって、驚かないよ。
    こっちにはもっとすげぇ〜〜のがいるもん。」

え?とひるんだ三ゾロの鶴とカンナの目が合うと、カンナはにやりと笑ってます。(^^;;

カンナ「不死鳥の…クワッサリーだ!」

鶴「ク、クワッサリー?」

さくら「バンバンバンッ!って拳銃乱射しますものね、町中で。」

あのう、さくらさんも笑顔が怖いです。楽しそうで。(爆)
すっかりひるんでますよ〜相手。(^^;;

さくら「今ここに居たらあなたきっと撃たれてましたよ。」

鶴「え?いるの?どこどこどこ??」

立ち上がってあたりをきょろきょろと見回す鶴…そしてさくらさんの黒い笑顔はまだ続く。(笑)

さくら「この界隈にいると思うんですけど〜」

カンナ「おい!クワッサリー!
    三ゾロさんが会いたいってよ〜!!」

鶴「いやいやいや!滅相もねぇ!!
  …あ、痛い。お腹痛い。(腹を抱えながらすたこらと下手のほうへ走り出す)
  さっきの寿司があたったのかな…(ちらっとさくらとカンナを見て)
  あ、じゃあどうも…失礼します。」

ええ、もうすたこらさっさと逃げていく鶴を、可笑しそうに笑いながら見送るさくらとカンナ。(笑)

さくら「うふふ…クワッサリー!!」

カンナ「クワッサリー!!」

さくら「あはは…どこー?!」

あー…でもでも、2人ともそんなに調子付いて声高に叫んでいると……
ほぉぉうらやって来た!!ブリザード背負って土手上の上手からやってきましたよ!!夏服の彼女が!!

マリア「…呼んだ?」

怖い!怖い!!銃を構えてかっこいいんですけど、それ以上に怖い!!(爆)
2人ともすっかり震え上がっちゃってますよ;;

さくら「え?あ、いえ、それは…」

マリア「(すたすたと足を進めながら)…今、クワッサリーって言ったわよね?」

さくら「え〜〜…ど〜だったかなぁ〜〜;;
    ねぇ、カンナさん?」

カンナ「え?いや、あ、知らねぇな;;」

マリア「(中央少し下手寄りで止まる)…クワッサリーって火喰い鳥って意味。
    私のあだ名よ、知ってるわよね。」

カンナ「あれ?!そうだったっけか?」

マリア「…ロシアの雪を思い出すの……
    …だから嫌い。」

マリアさんが少しばかり身を縮めると、再びブリザードが。(爆)
なんだか、最近マリアさんはブリザードを起すという技を身につけましたな;;
このままさくらとカンナはのまれてしまうのか!?と思っていると、カンナが突破口を見つけたようです!

カンナ「あ!!(ブリザード収まる)
    そうだ、クワだよ、クワ!」

さくら「はい?」

カンナ「(畑を耕す動作をしながら)クワさ利用して畑さ耕すんだぁ〜って
    さくら、お前さっきそう言ったろ!」

さくら「あたしっ……!!」

カンナ「言ったー!!
    あたいが蕎麦の実でも栽培してんのかって聞いたらよ、
    お前が見事な仙台弁で」

さくら「ええっ!?」

カンナ「そりゃあ見事な仙台弁で、クワさりようして畑さ耕すんだぁ〜〜」

カンナの必死の言い訳を、上手寄りの土手の上で腰をかけて眺めるマリア。そして、その言い訳に畑を耕す動作付きで乗るさくら。必死です。(笑)

カンナ「クワさりようして…くわさりょうして…くわさり…」
さくら

カンナ「聞こえるな!」

さくら「ほんとだ!!!!」

カンナ「いやいやいや!これ不思議!!
    クワさ利用して、クワッサリー…言ってごらん!聞こえるから!」

腕を組んで黙って聞いていたマリアの元に駆け寄りながら、カンナが提案。これでマリアが乗れば首がつながりますよ!(爆)

マリア「くわさりようして…
    !…ホントだ。」

乗ったよおいおい!!(笑)

カンナ「な!な!!」

嬉しそうなさくらとカンナ。(^^;;
いやぁ、この2人は寿命が縮んだことでしょう。

マリア「ホントだじゃないわよ!
    (とん、と土手の上から下へ飛び降りて)
    そんなことより、レニ見なかった?」

さくら「一緒じゃなかったんですか?」

マリア「手分けしてお蕎麦屋さんを探しているうちにはぐれちゃったの。」

カンナ「ったくよぉ〜(二人の間に入りながら)
    マリア、お前はロシア人だろ。レニはドイツ人だよ。
    その2人がどうしてこの東京の下町のごちゃごちゃした所で蕎麦屋探しちゃうんだよ!
    誰だよ、奴らに行けって言っちゃったのは!」

マリア「あなたでしょ。」

ぴしっとマリアからもさくらからも指を指されてしまったカンナ。(笑)
しまった。(^^;;

―――5日・昼―――――

ちょっとカンナがセリフかんでしまいました(^^;;

カンナ「だいたい、ロシア人はマリアさんでしょ!(マリアちょっと笑)
    いいかよく聞けよ!!!!」

と、言い直すカンナさん。(笑)
そして、これはマリアさんのツボにはまったのか、俯いて必死に笑いをこらえようとしていますが、続くマリアさんのセリフも笑いが混じったものになっていました。(微笑)そこからは何事もなく進みましたけどね。

―――――

カンナ「あれ〜?そうだったっけ??」

マリア「そうだったけ??じゃないわよ!
    …それより、二人はどうしてここに居るの?」

さくらが落ち着いて説明しようと一歩前に出ようとしたんですが、カンナの声のほうが早かったですね。

カンナ「だぁって!4人とも帰ってこないんだもん!
    お腹空いちゃったんだもん!!」

まるでだだっこのようなカンナさん。(^^;;
まぁ、たしかに人間お腹が空くと短気になりますけどね;;

さくら「お蕎麦屋さん見つかったんですか?」

会話の軌道修正しようとさくらがコマを進めますと、マリアの顔が一変して慌て顔に。

マリア「それが大変なの!」

さくら「え?」
カンナ

マリア「お蕎麦屋さんはあったんだけど、お蕎麦がないの…」

マリアの話を聞き入るように間を詰めてきた2人に、神妙に語るマリア。(笑)

カンナ「なぁ〜〜んだ、そんなことかぁ。」

さくら「え?」

カンナ「蕎麦がねぇのか。あっはっはっはっはっは……」

笑いとばすカンナにつられて、さくらとマリアも笑ってますが……

カンナ「(しゃがみこみながら)…あひゃあうぅぅぅぅ…」

あ、やっぱり泣きに移った。(^^;;

カンナ「それじゃ蕎麦食えねぇじゃねぇかどうすんだよ〜」(泣)

さくら「か、かえでさんと織姫さんは?」

マリア「2人ともお蕎麦できるのまってるわ。」

カンナ「(立ち上がって)ええ?じゃあさ、その蕎麦屋にさ、早く行こうよ!
    もう、蕎麦できてるかもしれないじゃん!」

マリア「でもレニを探さないと…」

カンナ「だぁいじょうぶだって!(上手方面に歩きながら)
    レニだって昨日今日帝都に来たわけじゃねぇんだよ!
    みんな蕎麦屋で合流すりゃあいいじゃねぇか!」

さっきと言ってる事が微妙に違う?(爆)
と、待ちきれない様子で土手上へ行く階段を上るカンナ。

カンナ「な、な!蕎麦屋で合流だ!
    えーと両国橋は、あれだな!」

と、下手のほうに見える橋に駆けていこうとするカンナですが、後からついて来たさくらに訂正されます。(^^;;

さくら「あれは柳橋!こっちが両国橋です〜!!」

マリア「もうすぐそこだから。」

と、さくらが先導する中、上手の方へとかけて行く2人。おっとっと、とカンナもくるりと反転して後を追います。

カンナ「待ってよ、置いてかないでよ!
    蕎麦屋蕎麦屋ぁ〜〜〜!!」

カンナも上手の方へ走り去ると、誰もいなくなった土手の舞台の照明が薄暗くなり、ヤクザの笛の音が…
口々に「鶴吉〜〜!!」と叫びながら柄の悪そうな数人の男が薄暗い舞台を上手へ下手へと走る!全員背中に「権」と染め上げられた藍色の法被を着ています。
鶴吉って、さっきカンナとさくらに脅されてしまったあの男のことですよね?追われてるのでしょうか…
舞台前方、上手寄りの所で、口にマスクをしたゴロツキ男が、下手から走ってきた帽子を被った男に呼び止められる。

帽子の男「おい、鶴吉いたか!?」
ゴロツキ「いませんでした!!」
帽子の男「いませんじゃねぇだろ!」

ばしっと頭を一発叩かれてしまうゴロツキ;;
とそこに下手からもう一人…飴を持った少し幼稚な感じのする大男が同じように「鶴吉いたか〜?」と聞きながら二人の下へ。

大男「鶴吉いたか〜?」
2人「いませんでした!!」
大男「いませんじゃねぇだろ!」(帽子の男を叩く)
帽子の男「いませんじゃねぇだろ!!」(ゴロツキを叩く)

う〜ん、どうやら、これは階級の違いが如実に現れてますね。(^^;;
そして、もう一人…今度は上手から一際偉そうな男…兄貴分かな?が同じように…

兄貴分「鶴吉いたか!?」
3人「いませんでした!!!」
兄貴分「いませんでしたじゃねぇだろ!」(ゴロツキを叩く)
ゴロツキ「いませんじゃねぇだろ!」(帽子の男を叩く)
帽子の男「いませんじゃねぇだろ!!」(大男を叩く)
大男「ご〜めんなさ〜〜い!!(泣)」

あ、落ちがついた。(爆)でも叩いてしまったゴロツキと帽子の男は「しまった!」と顔をゆがめます…この後ケンカに発展か!?と思いきや、ゴロツキが遠くに何かを発見したようです!

ゴロツキ「あ!!」
帽子の男「(それを見て同じ方向を指差す)あ。」
大男「(またまた同じように指を指す)あ〜」
兄貴分「どうした?」

ゴロツキ「あれ、鶴吉じゃないですかね?」
帽子の男「鶴吉かも。」
大男「鶴吉だ。」
3人「(敬礼しながら)鶴吉発見!!!」(^^)
兄貴分「やった〜〜…ってやってる場合か!!
    追え!追え!追えーー!!!」

指示を飛ばされて、「鶴吉〜〜!!」と叫びながら慌てて上手へ転がるように走り出した面々。
…さぁ、どうなりますことやら?
さて、それに乗じて土手のセットが回転。(青山劇場は回り舞台がありますからね。)回転して現れたのは古びた感じのする蕎麦屋。
上手の側に木の戸口、舞台の中央あたりは客席。(さらに細かく分けると、上手寄りの前方には大きめな火鉢、その斜め後ろには2人か3人用の小さなテーブル。その隣り、舞台中央あたりには6〜8人くらい座れそうなテーブル。その後ろには店の奥に行く為の通路。そして、さらに隣りにはまた同じように2、3人用の小さなテーブル。)
壁1枚区切って下手の方では蕎麦打ちの場所があります。
壁にかかった古時計がゆっくりと進み、時間の経過を物語ます。

その蕎麦屋の真ん中のテーブルで退屈そうに座っているのは、かえでさんと織姫。……なんか、飲み明かした徳利がいくつも転がってるんですが??(^^;;
そして蕎麦打ち場では、ゆっくりゆっくりと石臼をまわしているお婆さんが…

かえで「ふぅ〜〜…今年ももうすぐ終わりなのねぇ…
    (ちらっと隣に座っている織姫を見て)ん〜〜〜お〜り〜ひめぇ〜〜」

酔ってますなぁ、かえでさん(汗)織姫に抱きついてますよ〜からみ酒なんでしょうか?

織姫「んもう、かえでさーん;;
   (ボーン、と時計が9時を告げる)…もうこんな時間。
   (すくっと立ち上がってお婆さんの所へ)お蕎麦!まだですか〜!?」

かえで「まだですか〜?」

織姫に急かされて(かえでさんはまた座って徳利を傾けています;;)、お婆さんが蕎麦打ち場から客席へ顔を出す。

婆さん「はいはい、はーいはい。」

織姫「お蕎麦、まだ!?」

婆さん「えぇ、何度も申し上げてますように
    今、挽いてますんで…」

織姫「まだ挽いてるの!?」

婆さん「えぇ、細腕なもんでぇ〜〜」

いや、婆さん力こぶできてるって。( ̄□ ̄;;
織姫も、こればっかりはどうしようもないので「もぉ〜〜〜…」とただただ待つしかないですねぇ;;

婆さん「今しばらくお待ちください。」

織姫「もう、年越しちゃいまーす!」

かえで「ねぇ、お酒頂戴!」

あ、空にしてしまったんですね…(^^;;
戻ろうとした婆さんをかえでさんの声が引き止め、「はいはい只今〜」と言いながら店の奥へ通じる通路へ向かう。
その間に、織姫が素早くかえでが掲げた徳利を取り上げる。

織姫「かえでさーん、そんなに飲んでいいんですか?」

かえで「いいのよ、いいの。大晦日くらいいいの。
    ……ねぇ、お蕎麦まだ!?」

半ば呆れ顔で徳利を机に戻す織姫。へべれけ〜になりながら奥に入っていった婆さんをぴしっと指差して蕎麦を催促。
言われた婆さんは、酒を用意する間もなく顔を出し「はいはい、只今〜」といいながら蕎麦打ち場へ…

かえで「早くね。
    さささ!織姫!(織姫を隣に座らせて徳利を手に持つ)
    あんたも飲みなさい。」

困ったようにお猪口を手にしてかえでさんの徳利を受けようとする織姫ですが…お酒がありません。(^^;;

かえで「ねぇ、お酒!!」

婆さん「はいはい、只今〜〜」

もしかしてしばらくこれエンドレス!?と思ったら、今度は大丈夫みたいですね。
すっかり弱ってしまった織姫を余所に、かえでさんは頬杖をついて回想モード。

かえで「はぁ…ね〜え、織姫。
    大晦日ってなんだか少し物悲しいわねぇ…
    だって今年のことは全部終わり名古屋のこんこんちきってことにしちゃうでしょ。
    おじゃんにしちゃうのよ!
    なんだかさ、淋しいじゃない…」

と、お猪口にお酒を注ごうとするのですが…

かえで「(TT)ねぇぇえ〜〜〜
    お酒が、無いじゃないのよ!お婆さん!
    もぅやぁだ〜〜〜…!!」

フラフラと立ち上がり、こちらから見て左隣のテーブルに崩れ落ちてうっうっと泣きだすかえでさん。(^^;;
仕方なく織姫が介抱を…って、すごい。かえでさんがへべれけだと織姫がまともに見える!!(爆…失礼;;)

織姫「かえでさん!もう、泣き上戸だったですか?」

かえで「(キッと織姫を見て)泣いてないわよ!」

織姫「(後ずさりながら)怒り上戸なの?」

かえで「んっふっふふふふ…(立ち上がってフラフラと舞台中央へ)
    怒ってなんか無いわよ、やぁねもう!」

織姫「笑い上戸なの?;;」

かえで「うふふ…泣いて笑って怒って、今年のかえでも暮れて行く〜…」

織姫「一人上手か。」

かえで「一人!!…今年も一人だったわ私…!!!」(TT)

フラフラフラ〜と真ん中のテーブルに突っ伏するかえでさん。いやぁ、見てて面白いです。(爆)

織姫「あ〜ん、もう、結局泣き上戸なんだなぁ…」

と、だんだん手におえなくなってきたかえでの元に、お婆さんが両手に一つずつ徳利(熱燗)を持って戻ってきました。

婆さん「はいはい、お待たせいたしましたよ〜〜」

織姫「ああ、はいはいはい!(手早く婆さんから徳利を受け取る。)
   (テーブルの手前、かえでが座っている隣に座り)わかりました、かえでさん
   飲みましょう!ね?」

かえで「うん…」

織姫の徳利をかえでがお猪口で受けるのを横目で見ながら、婆さんは蕎麦打ち場へ。

織姫「今年はいろんなことがありましたからね〜」

かえで「あったわね〜」

織姫「(正面を向きながら)薔薇組が勝手に公演してたでしょ。」

サクラ祭りの休演日に行なわれていたやつですね。(笑)

かえで「ん〜してたわねぇ〜(お酒を煽りながら)」

織姫「大神さんが支配人見習いになりましたね!」

かえで「なったわねぇ〜」

織姫「(少し目を伏せて)それに…米田支配人は引退しちゃったし…」

かえで「引退しちゃった……米田さぁ〜〜〜ん!!」(TT)

ああ、とうとう豪快に泣き出しちゃいましたよ!!さすがにこれは見かねたのか、織姫が肩に手を置いてフォロー

織姫「かえでさん!
   そんなに悲しんでちゃダメでーす!人生は悲観する為にあるのではないでーす
   楽しむ為でーす!」

かえで「…そうね!」

あ、立ち直り早。(笑)

織姫「(パンっと手を叩いて)景気づけに何か歌でも歌いませんか?」

かえで「いいわねぇ!」

織姫「(テーブルにあった箸置きから割り箸を一本持って)かえでさん何の歌が好きですか?」

かえで「ん〜〜あたしはねぇ、「つばさ」が好きよ。」

織姫「「つばさ」かぁ」

かえで「そうよ。だって若い頃の希望がい〜っぱいつまってるでしょ!
    それに(立ち上がって前に歩きながら)雲をベッドにしちゃうのよ〜〜素敵〜〜!」

織姫「(かえでの斜め後ろに立ち)わかりました、お付き合いします!
   歌いましょう、「つばさ」!!」

かえで「歌おう!」

意見一致!…と言うわけでいつかの新春公演の持ち歌交換の時よろしく、2人で立ち位置につくとメロディーが…
かえでさんが気持ち良く踊る中、織姫はそのすぐ後ろでアナウンスを。(笑)
あ、なんか婆さんも伸ばし棒持ったままこっちにやって来る。(爆)

織姫「時は太正、12月31日!
   場末の蕎麦屋の一角で、藤枝かえで、ソレッタ・織姫…
   (ちらっと横を見て手招き)そしてなぜか蕎麦屋のお婆さんでお送りする
   「つばさ」でーす!」

かえでさんは徳利を手に、織姫は割り箸、婆さんは伸ばし棒をそれぞれマイク代わりにしてさぁ歌おう!としたところで、婆さんのだみ声と木戸を叩く音にずっこけて、この場はお流れ。(^^;;

婆さん「だれだぁ〜〜って、だれだぁ〜〜って
    って。誰だぁおい?」

婆さんが木戸を開けに行くと同時に、水をさされたかえでさんは一番奥のテーブルに突っ伏してダウン!一方織姫は、あまりにも遅い蕎麦の具合を見るために蕎麦打ち場へ。石臼を回そうとしまうが、なかなかまわりません。

婆さん「おいおいおい、せっかくの「つばさ」を邪魔する奴は誰だぁおい?」

と言いながら木戸を閉めていた心張り棒を外すと、戸を開けた外に居たのは…

親方「あ!なぁ〜んだお富士さんいるんじゃないですか〜」

婆さん「こりゃ毎度、中嶋親方〜」

親方「(囲炉裏の火にあたりながら)今日はもう早終いかと思っちゃいましたよ。」

婆さん「あ〜、生憎もう今日蕎麦切らしちゃいましてねぇ…
    もう店じまいしようかと思ってたんですよぉ」

親方「ええ?そりゃ残念だなぁ…」

婆さん「ああ、でもお客様も着ていただいたんで(崩れているかえでさんの後姿を差す)
    今、新しい蕎麦打ってますんで。」(^^)

親方「…あちらのかた、ずいぶんできあがっちゃってるみたいですね;;」

婆さん「ええ、もう意識もありません。」(笑)

親方「あはは…じゃあ、あっしも、待たせてもらいましょうかねぇ
   あっしは、熱いお蕎麦一杯、お願いします。」

婆さん「はいはい、わかりました!」

親方「ああ、お富士さん!
   待ってる間に(お猪口をくいっと煽る動作)こっちのほうも…」(^^)

婆さん「はいはい、只今〜」(^^)

(笑)さて、石臼に挑戦していた織姫ですが、にっちもさっちもいかなかったようで、スタスタと店内に戻ってきました。

織姫「まだぜんぜんでーす!」(言いながらかえでの肩を軽くゆする)

親方「あら?織姫さん!?」

織姫「ああ、親方!!」

親方「ってことはそちらの出来上がっちゃった方は……かえでさんっ!!」

あれ?なぜだか親方ぴしって固まっちゃいましたよ。自分の名前を呼ぶ声に気がついたかえでさんは、立ち上がって破顔一笑。親方へ駆け寄ります〜

かえで「まぁ〜〜〜〜!!親方じゃないのぉ〜〜!!(パンっと手を合わせる)
    一緒に飲みましょ〜〜〜〜!(^^)」

くるりと回りこんで真ん中のテーブルの奥に座るかえでさん。その隣りに座る親方。
そして織姫はと言うと…婆さんを先導して、一緒に蕎麦打ち場へ。

かえで「はいはいはいはい…」

親方「ああ、どうもありがとうございま――おっとっとっと!!」

かえでの徳利を受けていたんですが、危うく溢れそうに!急いでくいーっと喉に流し込む親方。う〜ん、粋な感じがしますねぇ

かえで「いつもご苦労様ねぇ、親方。」(^^)

親方「ああ、いえいえ…」

かえで「…親方。(親方の顔を覗き込みながら)
    親方がいるから、助かってるのよ。」

親方「あ、あ…そ、そうですか…」(照)

かえでさん、いつもより2割増し位で色っぽいですよ!(笑)このままじゃ親方メロメロ?
と、一方蕎麦打ち場に行った織姫ですが、先ほど石臼がちっとも回らなかったのは逆回しでやってたからだったみたいです。婆さんに説明を受けて、再びチャレンジすると、今度はすんなり、ゴリゴリ回ってます!(笑)
婆さん、細腕どころじゃないでしょ、それは。(^^;;
まぁ、とにかく織姫の助太刀で何とか挽き終わりそうですね。石臼を織姫に任せた婆さんは店の奥へと進んでいきました。
…さて、また目線を店内に戻しますか。

親方「いや、こう言っちゃなんなんですけどね。
   花組さんの舞台の仕事は裏方としてやりがいがあるんですよ〜!
   口はばった言い方ですが、あっしが支えなくっちゃ!!なんてね。」

かえで「そうだ!!(ばしっと親方の背中を叩いて)
    親方が支えてる!!」

う〜ん、カッコよく決めたのに、かえでさんのへべれけパワーの前にちょっとむせてしまいましたね。(^^;;
調子に乗ったかえでさんは大声で蕎麦打ち場に居る織姫にも…

かえで「織姫!!」

織姫「はい!」

かえで「あんたも支えてるぅ〜〜」(^^)

苦笑いで答えると、それはそれで満足そうにかえでさんは頬杖をついてさらにぼそっと一言。

かえで「…あのモギリだって支えてる。」(笑)

あのモギリ呼ばわりですか、大神さん!( ̄□ ̄;;

かえで「もう、みんなでみんなで支えてるんだぁ…
    (立ち上がって舞台の前方に出ながら)それに、お客様だって支えてくださってる!」

かえでさん、絶好調で。(^^;;
心配で後を追ってきた親方もたじたじですな;;

かえで「親方!!」

親方「はい!」

かえで「人という字は…!」

平行に並んだかえでが、親方のほうを向くとふっと倒れてきました!!慌ててそれを支える親方。そして出来たのは…

かえで「支えあうって書くのよ…!」

親方「はい〜」(^^)

人文字の「人」!なんだか金○先生なノリですな。(爆)
親方なんだか嬉しそう。(笑)
……でも、かえでさんはなんだか辛そう?

かえで「…親方。」

親方「はい。」

かえで「…起してくださる?」

親方「え?え、あ!大丈夫ですか?!よいしょっと!」

よっと親方に勢いづけてもらって無事に戻るかえでさん。(^^;;
自分じゃ戻れなかったんですね;;

かえで「ああ、ありがと。」

さぁ、もう一杯!といった雰囲気のなか、再びドンドンドンッと戸をたたく音が。

かえで「はいはいは〜〜い」

つい出ようとしてしまったかえでさんを親方が腕をつかんで引きとめてる間に、婆さんが店の奥から出てきて、突っ張り棒を外したその瞬間!乱暴に戸が開けられて、冷たい風と共に先ほどの柄の悪い男どもがぞろぞろと入ってきました!一人、親分と思われる恰幅のいいあの男も一緒です。どうやらその筋の人間たちみたいですね。店の空気が一変して緊迫なものに…

恰幅のいい男「ごめんよぉ!」

婆さん「こりゃあ、本所の権太郎親分。」

事態の異常さを察知したのか、織姫も蕎麦打ち場から出てきて、かえでさんと親方の傍へ。

ゴロツキ「鶴吉っ!!」

織姫「きゃっ!」

用件も言わず、手下の2人が店の中を捜索!ここは鶴吉と所縁のある場所なんでしょうか…ですが、お目当ての人物はどうやら居ないようです。
勝手にどっかと右端のテーブルに座る親分に、婆さんは努めて冷静に話を進めます。

婆さん「生憎、今蕎麦きらしちまいましてねぇ。」

親分「鶴吉はいねぇのか?」

婆さん「はぁ?」

帽子の男「鶴吉は居ねぇのかって聞いてんだよ!」

背後から、婆さんに凄む声に、婆さん「あ〜」と納得の声を上げて…

婆さん「うちの亀じいさんなら5年前になくなりましたぁ…!」

と、ボケたおしました。(爆)うーん。富士子ばあちゃんに、亀じいさんの息子が鶴吉……名前だけは縁起のいい一家なのですな<そこは感心するところなのか?
まぁ、そんなボケがヤクザな方々に通じるはずもなく。

大男「とぼけてんじゃねぇぞ、くそババア!!」

びしっと婆さんの胸元に手にしていた角棒を当てると、婆さんもさすがに一瞬詰まって語りだしました。

婆さん「…はい、はい。鶴吉ですか?
    あれは…勘当しました。あの馬鹿がなにか〜?」

大男「ああん!?」

婆さん「ああ、いや…聞かなくていいんです。(ゆっくりと火鉢の傍へ移動しながら)
    あいつはもう、あたしの息子じゃないんだ。
    (イスに座って、火鉢の所に置いてあった煙管をふかす。)
    親でもない。子でもない。
    何処で野垂れ死にしても、わたしには関係ないこと知らぬこと。」

飄々と言う婆さんですが…その真意は?
それを見取ってか取らずか、親分が立ち上がり事情を説明しだす。

親分「なぁ、婆さん聞いてくれ!
   お前ぇの息子、博打場の借金踏み倒しやがったんだ。」

博打場の借金と聞いて、それまでただ黙って様子を見ていた織姫やかえでさん、親方の顔に戦慄が走ります。そりゃあ、大事ですね……婆さんも少し体を固めて聞いています。

兄貴分「博打場の借金は、女房を質に入れてでも
    鶏がコケコッコーっと鳴くまでに返さなきゃならねぇ
    それが決まりだ!!」

兄貴分にあたる男が、織姫たちを睨みながら大声で仕来りを語る。それはまるで婆さんに言い聞かすかのように…

親分「(婆さんの肩に手を置いて)ま、立ち寄ったら知らせんだよ。
   いいな?」

大男「下手に庇うと、痛い目みるぜ婆さん!」

脅しの仕上げに大男がそう言うと、婆さんは耳障りだな、と言わんばかりに顔をしかめて煙管の灰を火鉢に落とすと一言…

婆さん「…はいはい、どうぞ見つけたらお好きになさってください。
    世間様に申し訳ないような馬鹿息子ですからねぇ。
    煮るなと、焼くなとご存分に!
    あ!そうだ!(立ち上がって親分を見ながら)
    東京湾に沈めて、魚のエサにでもしてやってください。
    そうすりゃあ、少しは役に立ったってことになりましょうかなぁ?」

あまりにも薄情で挑発的な発言に、織姫までもが抗議をしようと動きますが、そこは親方に止められてややこしくならずにすみました。(^^;;
子分達が「なんだと、こらぁ!」と食って掛かろうとしますが、親分が「待て!」と止めます。

親分「わかったわかった!!
   …婆さん。お前ぇの馬鹿息子、望み通り好きにさせてもらうぞ。
   ……おい。」

子分「へい!」

親分が合図を送るなり、すっと戸を開けて見送り。それに続いてどんどん出ていきます…冬の寒波に、嵐が去っていきましたね…ただ響くのは木枯らしだけ……
物思いにふける婆さんを見ていた織姫がすたすたと戸に進み、辺りを見回してから戸を閉めて突っ張り棒を当てて…

織姫「……………お婆さん…」

婆さん「…あ、これは…お見苦しい所をお見せしましたね…
    (立ち上がって蕎麦打ち場へ向かおうとする)ご勘弁ください。」

親方「…お富士さんも、大変なんですね……」

親方が重い口どりでそう一言。かえでさんは、中央のテーブルの奥の席に座って、あえて何も言いません。

婆さん「今すぐにお蕎麦を…」

と、婆さんが言ったらまたドンドンドン、と戸を叩く音が!

婆さん「はいはいはい。」

織姫「あ!わたしが出まーす!」(戸を背にして張り付きながら)

親方「お富士さん!奴らが戻ってきたのかもしれねぇ!
   こっちへ!早く早く……」

と、親方がとっさに店の奥に婆さんを隠す。緊張感の漂う中、織姫がゆっくりと突っ張り棒を外して戸を開けて来訪者の顔を見ると……

織姫「……レニ!!」

レニ「織姫!!(店内に入ってきて)
   あ、かえでさんも!
   あ、親方も!こんばんは。」

あ、まるでレニが空気清浄機のよう。(笑)
見知った相手に安心して、親方が手招きで婆さんを呼びます。

親方「あ、あぁこんばんは。」

レニ「親方も、年越し蕎麦を食べに来たんですか?」

親方「え、ええ!そうなんですよ。」

レニ「ボクね、ここまでとっても陽気なチンドン屋さんに連れて来てもらったの〜」

親方「あぁ、そうですか。」(^^)

よかったわね、とかえでさんも頷く。ああ、本当にレニが場の雰囲気を変えてくれました〜
と、婆さんも安心したのか、再び蕎麦打ち場へ。
そして、織姫は右側のテーブルに置いてあった急須を持ち出して、火鉢で暖められている鉄瓶の中にあるお茶をそちらに注いでいます。

レニ「それにしても今日は寒いですね。」

親方「ああ、冷えますねぇ〜」

両手で自分を包むように肩をさするレニ。この日の帝都は雪が降るほど冷え込んでたんですものね。

織姫「(急須を持ってレニたちの方へ戻りながら)
   さっきまでマリアさんいたんですよ。会いましたか?」

レニ「…いや、会ってない。はぐれたまんま…」

織姫「そう…
   (にっこり笑って)寒かったでしょ、はい!
   (右端のテーブルの上にある湯飲みを一つひっくり返して、お茶を注ぐ)
   これ、蕎麦茶。」

レニ「(イスに座りながら)うわぁ、ありがとう。」(^^)

織姫「暖まりますよ。」

はぐれたまま、にちょっと心配顔を見せた二人ですが、蕎麦茶で和んでますね。

レニ「いい香り。」(^^)

織姫「でしょ〜」(^^)

レニ「(お茶を一口飲んで)……あったか〜い。」

寒い空間にずっといた後の温かい飲み物っていうのは、また格別ですよね!
レニの、ほわ〜っとした顔がそれを物語ってます。

レニ「…で、お蕎麦は?」

あ、やっと本題に戻りましたね。(爆)
この話題には織姫も顔をしかめます;;

織姫「…まだ打ってまーす!」

織姫がそう言った直後に、婆さんが蕎麦打ち場で引き終わったそば粉を捏ね鉢に危なげに移してます。(^^;;
おいおい、大丈夫か?(笑)

レニ「…でも…かれこれ3時間だよ。」

織姫「そぉなんだけどぉ〜〜!!(泣…立ち上がって舞台中央方面へ)
   お婆さん、金粉蕎麦作るんだって張り切ってるの。」

レニ「金粉蕎麦?!」

うん?レニは聞いたこと無かったみたいで声のトーンがかなり不思議そうです。

親方「ええ、金粉蕎麦ですか。」

織姫「そっ。」

親方「へぇ〜そりゃいいや!江戸趣味ですな。」

レニ「え?江戸趣味なの?」(親方のほうに身を乗り出して)

親方「いや、なんでもね、聞いた話じゃあ
   江戸時代の中頃に金細工の職人が飛び散った金粉を蕎麦にまぶして食べたのが
   年越し蕎麦の由来とか。」

レニ「へぇ〜、そうなんだ。」

織姫「高価だからかな?」(下手側の前方でストップ)

親方「いやぁ、一年の終いに職人が蕎麦に金粉をまぶすたぁ
   なんだか粋じゃありませんか。そういうのが、江戸の遊び、だったんでしょうね。」(^^)

レニ「遊びかぁ〜」

納得したような、面白い、と感心しているようなレニと織姫に、そして黙って言葉を聞いているかえでさんに親方がしみじみと語ります。

親方「いやぁ、豊かですよねぇ生活の仕方が。
   最近はほら…どうもなんか、忙しないじゃないですか。
   なんでも電話でしょ。ちょっと前なら会いに行きましたでしょう。
   人と会うってのはいいもんですよ。」

親方の、人と人の本質をついたような言葉に、軽く首を縦に振る面々。

レニ「そうかもね…忙しなくなったかなぁ。」

織姫「東京は何処も近代化ですからねぇ〜
   みぃ〜んなビルだらけ!」

レニ「震災後の帝都の復興は、目覚しいものがあるからね。(湯飲みを置く)
   …でも、全部がビルになっちゃうのは寂しいなぁ」

と、おもむろに蕎麦屋の壁や戸を見るレニ。そうですね、どこもビルではなんだか息が詰まりますよね……

レニ「初めて、木と紙で出来た家を見た時はビックリしたもの。
   おとぎの国に来ちゃったかと思った。」(^^)

織姫「(ぴしっとレニを指差して)そーでーす!
   わたしもそう思いました〜!ローマンチックだなぁって!!」

えっ!?………そ、そんな好意的な印象だったんですか?(爆;;…いや、帝劇に対して2人は来日当初かなりあれだったじゃないですか。)

織姫「ニッポンには、まだまだ素晴らしいものがた〜っくさんありますよ!!」

あ、日本文化は宜しかったんですね。そうか、そうか、そういう事か…と納得していると、ポロロロロン♪と琴の音色が流れる中、照明が薄暗くなり、織姫とレニにソフトトーンのスポットが。

織姫「…お雛様。」
レニ「ぼんぼり。」
織姫「…燈篭流し。」
レニ「こいのぼり!」
織姫「お月見。」
レニ「…紅葉狩り。」
織姫「わた雪!」
レニ「綿帽子!」
織姫「……金襴緞子。」
レニ「……花嫁御陵。」

かえで「……初恋。」

しみじみと2人の言葉に聞き言っていた親方とそれぞれの言葉に関する動きをしながら語っていた2人。それに突然夢見心地な目線で乱入してきたかえでさんを一瞬驚きの目で見ますが、織姫はそれも日本情緒の続きと、言葉を紡ぎます。

織姫「…まだあげ初めし前髪の」(一歩、一歩とレニとの間を詰める)
レニ「林檎のもとに見えしとき」(同様に、舞台中央へ揃うように)
織姫「前にさしたる花櫛の」(かえでさんが立ち上がり、二人の間に入る)
3人「花ある君と 思いけり。」

3人でしっとりとまとめ上げた所で、照明が元に戻ってきました。う〜〜ん…いいですねぇ、この情緒が。

親方「島崎藤村!」

かえで「そう!」(^^)

ぱんっと膝をたたきながら立ち上がった親方に、かえでさんたちで正解!との意を示す。
うわぁ、ごめんなさい…私この詩知りませんでした;;

親方「いいですねぇ〜
   なんだか、日本人の方が、日本のことよく知らないみたいですね。」

織姫「そのようですな。」(笑)

ぽんっと親方の肩を叩いて軽く笑う織姫。あはは、まったくその通り!
お恥ずかしいかぎりですが、伝統文化ってものはわかっているようでわかってないですからねぇ(^^;;
親方が作者を言う前は、何の詩歌かもわかりませんでしたからねぇ…島崎藤村作「初恋」からの引用だったのですね。
その前の「金襴緞子」「花嫁御陵」も、おそらく「花嫁人形」という歌からの引用なのですね…って全然知らなかったです;;

と、そんな反省交じりに思っているとまたまたドンドンドンッと戸を叩く音が!!


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