第一幕その2
ここで、暗転。
思い扉が音を立てて閉まるような錆付いた音と共に先ほどまでの和やかな空気と一変して、紗幕が開いた舞台はおどろおどろしい暗い世界。
下手には、投棄された物やゴミの山があり、そこには右の一部のみが黒髪の白髪の白衣を着た一人の男が。
暗闇博士「♪この暗闇に生きる俺は万能の神」
♪暗闇の創造
高らかに歌うその姿はすでに常軌を逸している感を抱かせます。
暗い住処を歩き回ると、今までボロ布で隠れていた生き物たちが動き出します。
暗闇博士「♪ゴミためにスラムに 新しい命を生み出し
天使の羽を引き裂いて この地上に大いなる罪を満たそう」
その反対側、上手ではまた別の場所が…(この間、下手の住処には照明は入りません。)
軍服を着た米田さんとかえでさんが硬い表情で、一段高くなった舞台に立っています。
さらにその後ろ、もう一段分高いところには五人の黒服の男が(うち、中央の男は杖をつき、腰を曲げているので老齢かと思われる)
その後ろにあるエンブレムは賢人機関のもの。中央の老齢の男が厳かに二人に向かって口を開きます。
賢人機関幹部「…米田一基。藤枝かえで。(はい。と返事をする二人)
都市の防衛により世界経済の安定をもたらす。それが我々、賢人機関の目的だ。
帝都を霊的に防衛するのは、ひとつの実験にしかすぎない。
それが効果的であったことは認めよう。
だが、その霊的防衛において強い霊力を持った少女たちをこの先も制御しておけるものなのか。
帝国華撃団花組が、怪物となることはないのだろうか。」
米田「制御するとかしないとか、そういう問題じゃないでしょう!
花組はずっと、帝都とそこに暮らす人々の平和を守ってきたではありませんか!
彼女たちは怪物なんかじゃありません!彼女たちは人間です!!」
ああ、ここに花小路伯爵はいらっしゃらないのですね…米田さんが反論する中、かえでさんの切ない歌声が響きます。
かえで「♪世界は憎しみに満ちている
ただ愛に溢れてもいる」
賢人機関幹部「…研究所に保管していた、降魔の肉片が盗まれた!」
老人の(こちらからみて)右手に居る男が発した衝撃の事実に、流石に驚きを隠せない二人。
再び、下手の住処に照明が入ると、男が手のひらに納まるほどの物を愛おしそうに眺めています。
そう、それは降魔の肉片…!!
暗闇博士「♪俺の命をこの肉片に与える
俺の憎しみをお前たちが晴らすのだ
この街は俺の牢獄
壊せ街を 壊せ人の心」
その肉片を、住処の中央にある繭のようなものの中に投げ入れると、天を突き破るように腕が伸び、中から人型の生き物が…
周りに居る人型のものよりも、遥かに人に近く、博士と同じ白黒が混じる髪(こちらは白、というより銀色ですが)
生まれたての男は痙攣しながらも、住処の頂点に立ちます。
米田「帝都を守る為に命がけで戦っている花組を、我々が愛さなくてどうするんです!!」
米田さんが心からの叫びと同時に、かえでさんが立っている部分が下がり、かえでさんは舞台中央に歩みだします。
かえで「♪愛は自分の全てを投げ出す」
暗闇博士「♪愛は変質する 愛は疑う 愛は消える」
かえでさんが愛の素晴らしさを歌うのに対し、博士は愛の愚かさを歌う…相対する二人の歌が交差する。
かえで「♪でも愛は儚くて強い」
暗闇博士「♪なんてつまらないものに人はしがみつく」
かえで「♪愛は人と人を繋ぐから」
暗闇博士「♪貧しい者を哀れむことか それが愛か?」
かえで「♪愛を持つことは素晴らしい」
暗闇博士「♪愛は傲慢なもの 愛はどこにある?」
かえでさんの周りを歌いながら否定し続けた博士ですが、きっと見切りをつけると住処へ。
残されたかえでさんの周りには、化け物と言っても過言ではない形相の者達が取り囲む。
住処の頂点に立っていた男は痙攣が治まり、側に刺さっていた剣の存在に気づき、それを引き抜きまじまじと刀身を見つめる。
米田「降魔の肉片を盗んだその男の名は!?」
賢人機関幹部「栄一郎…倉見栄一郎博士!」
米田・かえで「!?」
その名を聞いて、驚きを隠せない二人。特にかえでさんは信じられない、といった表情で頭を振り、囲まれた化け物たちに殴られ、がくりと膝をつきます。
歌のクライマックスは、博士の住処へ。かえでさんを取り囲んでいた化け物たちも戻り、住処の頂点へと立った博士は己の信じるものを高らかに歌う。
暗闇博士「♪俺の名前を知りたいか?
…栄一郎?はっ!そんな名前じゃない!
♪この暗闇に新しい命を生み出す!
追放された者!幽閉された者!永遠に忘れ去られた者!!
♪俺は暗闇博士!!破壊の神よ!」
博士の高笑いが響く中、博士は隣に立つ男に愛おしそうに腕を伸ばし、米田さんは硬い表情のまま。
立ち上がったかえでさんが何かを伝えたいのに言葉にならないというような表情で上を見上げます。
ここで、暗転となり場面転換。
紗幕が下りて帝劇・昼のテーマが流れる中、幕前に照明が入ると下手にバニー姿のさくらさんが立って、通りがかる裏方さん一人一人に声をかけて頭を下げます。
―――12日・千穐楽
金田先生がいらっしゃるときは、ここで金田先生が上手から登場となりました。
金田「あ〜!さくらさん!
素敵でしたよ〜ウサギちゃん!」
さくらに近づきながらバニーを褒めると、さくらさんは照れ笑いを浮かべつつも「ありがとうございます。」とお礼を言います。
金田「フェロモンが出てました!」
さくら「フェロモン?」
金田「ええ、色気でげす。
一流の役者は、みんなフェロモンが出てますな〜男も女も。」
うんうん、と頷く金田先生が前を横切るのを見つつ、そうなんだ…と納得するさくらさん。
金田「あたしゃ、さくらさんには特別なフェロモンを感じましてね〜」
さくら「ありがとうございます。」
金田「ビューティフル〜〜」
金田先生、さくらさんをべた褒めですね。
金田「さて、あたしは次回公演の台本を書かなくちゃなりません。」
さくら「次の公演は「愛ゆえに」は再演じゃないんですか?前と同じじゃないんですか?」
金田「いえ、それがね大幅に変更したいと支配人が言いましてね〜主題歌もね。」
さくら「そうなんだ……」
下手へと向かった金田先生の後ろで不安げに呟くさくらさん。
初耳だったみたいですね。その声に振り返った金田先生はぽんぽんっとさくらさんの肩をたたきます。
金田「そんな不安そうな顔をしないで。
あなたは舞台に輝く希望じゃなきゃいけませんよ。」
さくら「…はい!」
金田「フェロモン、色気でげすよ。」
金田先生に励まされて、ぱっと笑顔を見せたさくらさんに金田先生も頷き、下手へと向かいます。
それと入れ違いに、岩本と上原が一緒に登場して、さくらが挨拶をすると、にこやかに応えて立ち止まります。
さくら「お疲れさまでした!」
上原「さくらさん!すみません、いつもご丁寧に。もう、俺たちで最後ですから楽屋行ってください。」
さくら「あ、はい。じゃあ…」
上原「(下手へと去っていくさくらを見て)いや〜いい女優さんだなぁ〜」
岩本「ありゃあ、本物のスターになるぜ〜」
お、金田先生ゲスト版は岩本も素直なんですね。
―――――
さくら「お疲れさまでした。」
岩本「はいお疲れさま〜〜(上手から入るも、慌てて立ち止まる)って、誰かと思ったらさくらさんじゃないですか!
こんなところでどうしたんです?みなさんもうとっくに上がってますよ。」
さくら「みなさんにお疲れさま言わなくちゃって。」
岩本「いや、止してくださいよ〜そんなまねは。いい子ぶっちゃいけませんよ〜」
さくら「いえ、そんなんじゃありません。
役者も裏方さんも、みんなで舞台を作ってるんだって支配人に教わりました。ですから…」
上原「偉い!!」
浜風ジョニーのシーンで使っていたビットを抱えていた岩本が感心したような顔で黙って頷いてると、その背後から白い石像のセットを抱えた上原が入ってきて、大きな声でさくらを褒めます。
上原「やっぱ言う事が一味違うなぁ〜(石像を置いて)
さくらさん、今回のバニー…(ぱんっと手を大きく叩いて)とびっきり良かったっすよ!!
なぁ、岩さん!」
岩本「けっ!」
上原「岩さんも素直じゃないなぁ〜
ついいましたがも褒めてたんですよ!新しい魅力が出てたなって!」
さくら「ありがとうございます。」
上原「さくらさん、次の新・愛ゆえにも、期待してますから!!」
さくら「がんばります!」
上原「あ、もう俺たちで最後なんで、楽屋のほうへどうぞ。」
さくら「そうですか?じゃあ、お疲れさまでした。」
上原「お疲れさまでしたー!」
って上原さん、下手に去っていくさくらさんの後姿をローアングルで見ようとしない!(笑)
ニコニコ笑顔の上原をよそに、岩本はビットに座って、難しい顔で頬杖を付いています。
上原「いやぁ〜、いい女優さんじゃねぇの!なぁ、岩さん!」
岩本「俺たちは拍手は貰えねぇ。俺たちで切符が売れるわけじゃねぇ。
お客さんは役者を見に来てるんだ!そんなこたぁ百も承知だ。
けどよ、自分一人で舞台やってるって思ってる役者は、どんなに素晴らしくてもいつかメッキがはがれる。
そういう役者をいっぱい見てきた。」
上原「ああ、そうだなぁ…」
岩本「だが!(すっくと立ち上がって)あの子はいい!!ありゃあ、本物のスタアになるぜ!」
上原「ああ!」
お互いに背中合わせで腕を組んでさくらの将来に頷いていると、上手から書類を持った親方がやってきました。
親方「岩本!上原!!」
岩本「あ、親方!」
親方「お前ら片づけ終わったのか?」
岩本・上原「(自分たちが持っていた物を見て)まだです!」
親方「馬鹿野郎!口動かす前に手を動かせ、手を!」
親方に叱られて、あわあわと動き出す二人。岩本が「手、手を動かせ!!」と上原に指示をするといい返事と共に妙な動きを(笑)
……すみません、13日はここの詳しい動きを忘れました;;
が、13日の岩本の答えは……
岩本「…はい!!朝のお母さん!」
上原「正解!!」
ものすごくボケた答えでした。(^^;;
16日は上原、ベースを激しく弾く人っぽい動き。
岩本「はい!ここにパンツが食い込んですごいかゆい人!」
17日はゴリラのように握った両拳で胸をドンドン叩く。
岩本「はい!お腹壊したゴリラ!」
18日はゲキテイの振り付け。
岩本「はい!前説の親方!!」
19日・昼はバニーの振り付け
岩本「はい!あなたが楽しければ!」上原「わたしはうれしい!」
19日・夜は一生懸命走って、ガラガラガラー!と戸をあけて、こっそり覗く動作
岩本「はいわかった!お風呂場を覗いてる大神支配人!」
うわっ裏方さんにまで知れ渡ってる上に、そこはモギリだろうが支配人だろうが変わらないんですね!(爆)
20日・夜は手を指揮者のように上下に動かして
岩本「はい!オケピで指揮している公平先生!!」
二人で「いえーい!いえー!」とハイタッチしたりして楽しそうなんですが(19日・昼はバニーの振り付けだったし、19日・夜はいや〜んと、覗かれた誰かになってました。20日・夜はハイタッチしたあと「公平先生〜〜!」とオケピに向かって手を振ってました。)
親方は首を振って手に持っていた書類を丸めて「馬鹿野郎!」と二人の頭をスパーンっと叩く!
17日はビットを踏み台にしての一回転付きジャンプツッコミ!親方すごい!思わず、岩本が拍手してますよ。
18日は普通に一回転付きの流れツッコミでした。
親方「ネタやってどうすんだよ!
お前らちょっと仕事に慣れてきたからって口ばっかり達者になりやがって…
なにが「本物のスタアになるぜ」だ。軽々しい口きくんじゃねぇ!
いいか、お前ら…スタアさんってのはな、天が授けた才能だ!
一度舞台が輝けば、その命を舞台に捧げなくちゃいけねぇ!俺たちとは立ってる場所が違うんだよ。わかったか!?」
岩本・上原「はい。」
親方「わかりゃいいんだよ……俺もちょっときつく言い過ぎた。」
岩本・上原「気にすんなよ。」
親方「だぁーー!!」
どっちが上かわからん!という感じでツッコミを入れられた親方は思わず叫んで肩を振り払うと、なんとか気を持ち直して法被を調えます。
親方「ったく…ああ、そうだ。(懐からぽち袋を出す)ほら。」
何も言わず岩本に渡された袋ははい、ほい、はい、ほい、と岩本、上原と回されて結局親方の手元に戻り「おめでと〜!」と拍手されてます。
親方、またも「違うだろーー!!」とノリツッコミしてから(笑)再度岩本に渡します。
岩本「なんすか、これ?」
親方「小遣いだよ。」
上原「小遣い!?」(親方を押しのけて岩本の側へ)
親方「それでよ、たまには美味い酒でも飲んで、そのあと蒸気カラオケでも行ってこいよ。」
岩本・上原「あ、ありがとうございます!!」
おお、親方太っ腹!二人が喜んで頭を下げる様子を見て、うんうんと頷く親方。
岩本「あ、親方!たまには一緒にどうですか?」
上原「え〜いいよ〜〜誘わなくて〜」
岩本「でも、悪いよ〜〜」
この二人の掛け合い、かなり漫才ですよね。
一応のお誘いですが、親方はそれを断って下手へ。
親方「俺はこれから埼玉の方に道具の仕入れに行かなきゃならねぇから、後のことは頼んだぜ。」
岩本・上原「はい!!」
二人のいい返事を聞いてから、親方は下手へ。
その後姿が完全に見えなくなってから、二人の会話が再開。
上原「いやー、今日の親方気前いいっすね〜!」
岩本「そうだなぁ」
上原「いや〜〜!!今日の親方気前いいっすねぇ〜〜!!」
突然勢いよく走り出した上原!!どこまで行くのかと慌てて追いかける岩本が行き着いた先は、上手のオケピ横。
上原「岩さん!岩さん!こっちこっち、早く!!」
岩本「どうしたんだよ、こんな出っ張りまで連れ出して。」
上原「それは、演劇の都合。」
一瞬疑問に首をかしげる岩本ですが、舞台を見てすぐに合点がいったのか「ああ!」と頷いてました。(笑)
―――14日、15日・昼
親方がいなかったので、当然変わってきます。
上原「…そういえば、岩さん。」
岩本「なんだ?」
上原「(腕組をといて)親方どこいったんすか?今日一回も見てないんですけど。」
岩本「ああ、親方なら今日大事な用事があるからって俺たちに現場任せて行っちゃったよ。」
上原「ええ〜?なんすか、それ。」
岩本「親方、今日は床屋だって。」
上原「床屋!?」
我が耳を疑う、という感じで開いた口がふさがらない上原ですが、岩本はそうだ。と頷いて
岩本「親方、ああ見えて髪形には人一倍こだわりを持ってるんだ。
男にはこだわりが必要だ!っていっつも言われるんだよなぁ。
この前もよ「親方、ここの柱の釘何本打ちますかー?」って聞いたら
「何本でもいいよ。」って。」
上原「それ、こだわって無ぇって岩さん!!」
で、この後急に叫んで上手のオケピ横に行くわけです。(笑)
―――16日〜
親方、戻ってきたんですが去り際に埼玉に仕入れに行ってその後床屋に行くって付け加えてました。(笑)
岩本・上原「床屋!?」
二人の疑問には答えずに、さっさと行ってしまう親方。
その後、上原が上手のオケピ横まで走り去るときに「親方どうして!!なんで床屋!?親方、髪の毛無いのに〜〜!!」と叫んでました。
なるほど、この方が自然ですね。(^^;;
19日・夜では、親方なぜかサングラスをすっと取り出してクールにかけてから去りました。(笑)
そしたら岩本は「サ、サングラス?」と呟き上原は「ちょい悪オヤジかーー!!」と叫びながらオケピ横に行きました。
岩本「(慌てて追いかけて)お、落ち着けって!!」
上原「はー…はー……」
岩本「落ち着いたか?」
上原「はい…」
岩本「よかった。じゃあ、戻ろうか。」
上原「ちょーーーっと待ってーーー!!!
舞台には、いろいろな都合があるの!この出っ張りに居ましょう!
この出っ張りが落ち着くの〜!僕は、この出っ張りが、好きだからーー!!」
岩本「そ、そうか…」
突然の上原の告白(?)に気圧されて、頷くしかない岩本です。
―――――
上原「あああーーーー!!!
これから出っ張りについて一杯どうっすか?」
岩本「出っ張りについて一杯?…お前、いつも一杯じゃすまないだろうが。」
上原「一杯じゃなければ、十杯でも百杯でも飲んでやりますよ〜!」
岩本「ったく、馬鹿野郎、仕事が先だ!」
おお、岩本が随分成長しましたね!
石像とテッドを持って下手へと駆け込む二人。
すると、紗幕の中に照明が入り、そこは公演を終えた楽屋。扉
紗幕が上がるとロッカーとドアがある下手側のメイク台の前に座るマリアとすみれ。二人ともガウンを羽織っているのですがマリアは紺のシンプルなもの、すみれは柄が入った派手なものと個性が出ています。
すみれさんは念入りパック中。(笑)
レニ(夏服)は扉のすぐ側の衣装が吊ってある前で衣装整理。
更衣スペースの入り口である赤いカーテンが掛かっている個室の前、上手側の二人掛けのソファにはアイリス(夏服)が座り、台本を持って真剣な目でおさらい中。すぐ側の台の上には金魚鉢が置かれていて、赤い金魚が一匹います。
さらにその後ろ、たくさんの花束がある台の上でなにやらごそごそやっているカンナ(冬服)。
カンナ「なんだよ〜花ばっかりかよ〜〜…なんか食い物ねぇのかな。」
カンナはやっぱり花より団子、みたいです。(笑)
アイリス「日〜〜が〜〜のーぼーる〜〜 よ、おぉに(立ち上がって、センターに向かいながら)
よ、おぉに! よ〜おぉに! よ、おぉに!…あーん、今日もここが上手にできなかったぁ〜〜!」
レニ「そんなこと無いよ、上手に歌えてたよ。」
アイリス「ホント!?ホントにホント!?」
レニ「ホントにホント。」
アイリス「やった〜」
にこやかにレニがフォローを入れると、アイリスは両手を大きく上げて万歳。
でも、次の瞬間には金魚鉢に目が行き、駆け足で様子を見に行きます。
アイリス「あれ…金魚さん、ぐったりしてる!」
カンナ「(前に出ながら)ああ、その金魚もうダメかもしれねぇな。」
アイリス「ええー、ヤダ〜〜!…金魚さん、ちょっと待っててね。
(金魚鉢から金魚を掬い取って)……命よ、輝け…!」
金魚を包んだ手を高く上げて、キラキラとアイリスの手元に光が降り注ぐ。
眼を閉じて祈ったアイリスがそっと水面に金魚を戻すと、ぼんっと小さな火花と共に金魚が元気よく泳ぎだしました!
「うわっびっくりした!」と驚いて声を上げたのはカンナだけでしたがその場に居た全員が驚いてました。
カンナ「おいおい、金魚元気になったよ!」
レニ「よかったなぁ〜お前〜〜!(衣装を持ったまま駆け寄り、金魚鉢の外から金魚を愛でる)
…でもアイリス、その力あんまり使っちゃダメだよ。アイリスの命を削ちゃうよ。」
喜びつつも、アイリスの心配をするレニ。
でも、アイリスはなんでもないよ、といった顔でにっこり笑うとレニと同じように金魚鉢の外からつついて金魚と遊びます。
アイリス「これくらい平気だもん。」
カンナ「へぇ〜…恐れ入ったねぇ。」
―――18日〜三人娘バージョン
ゲストの三人娘は、ここで登場シーンが差し込まれてました。
かすみ「失礼します〜」
楽屋のドアを開けて、花束や差し入れを抱えたかすみさん、由里ちゃん、椿ちゃんが次々に入ってきます。
由里ちゃんはすぐに曲がって、上手の差し入れ置き場へ。
かすみさんは真っ直ぐ進んで、アイリスと会話。
アイリス「ねぇねぇ、かすみお姉ちゃん!今日のアイリスどうだった?」
かすみ「すご〜く大人っぽくて、素敵な卑弥呼でしたよ。」
アイリス「やった〜!」
由里「あ、差し入れたくさん届いていますよ〜こちらにおきますね。」
レニ「ご苦労様。」
かすみ「(差し入れ台に向かいながら)今回も超満員です〜!当日券も完売!立ち見も出てます〜」
カンナ「ありがてぇことだな。」
そして椿ちゃんは、ドアの前に居たのですが意を決したようにマリアの横に回りこんでいきます。
椿「あの、マリアさん…!(持っていた包みを一つ渡す)これ、差し入れのお酒です!」
マリア「ありがとう。」
マリアが優しい笑顔でそれを受け取るときに、手が触れたのをキッカケに椿が昇天。(笑)
それでスイッチが入ったのか、足早にメイク台の前に回ると、まだ手に持っていたもう1個の青い包みに入ったお酒をマイク代わりに構えます。
椿「ああ、オンドレさま…!オンドレさまオンドレさま!…お願いします!」
マリア「……クレモンティーヌ?」
ぴしっと手で示されたマリアが「ここで歌うの?」と驚きつつも、お酒を持ったまま一応立ち上がると
感激した表情で椿ちゃんがどんどん進行させていきます。(笑)
指を鳴らして合図をすると照明まで変わり、もはや独壇場。
椿「♪抱いて抱いて〜〜」
マリア「…♪離さないよ〜」
椿「(きゃあ!と嬉しそう)♪好き〜と〜言ってぇ〜〜」
マリア「♪好きと言おう〜」
椿「♪時間よ〜〜と〜まれ〜〜!!」
どんどん悦に入っていく椿ちゃんですが、上手の差し入れ台の前で顔を見合わせていたカンナ、レニ、アイリス、かすみ、由里の内かすみと由里が慌ててストップをかけて椿ちゃんに駆け寄ります。
由里「はいはいはい〜〜!!
椿、何やってるの!?(夢見心地の椿ちゃんの肩を掴んで、上手の方へ)
どうもすみません〜!」
マリア「いいのよ。」
かすみ「すみません、マリアさん。なにせ、椿はマリアさん命ですから
いつかこれをやろうと機会を窺ってたんですよ〜…」
マリア「そう……(椿を見て)ありがとう、椿。
でも、私こういう遊び……好きよ。」
椿「!!す、きぃ〜〜〜!!!」
つ、椿ちゃーーん!!(笑)…ああ、倒れちゃった;;
椿ちゃんってここまでマリア命でしたっけ……慌しく介抱するかすみさんと由里ちゃんの後ろで、すみれさんがパックを外しながらしみじみ一言。
すみれ「もう、しょうがありませんわねぇ〜」
カンナ「(手に持っていた差し入れのお寿司から、何かを見せる)はい、これ!」
すみれ「なんですの?」
カンナ「これ!お寿司のガリ!
しょうが、あるだろ!」
すみれ「まったく……」
洒落ですか。(笑)
その脇で、マリアも手伝って(これでまた椿ちゃん昇天なんですが;;)かすみさんと由里ちゃんに両方から支えられて立ち上がり、ドアへ向かう椿ちゃんなんですが
由里「椿、大丈夫!?」
かすみ「さ!しっかり立って歩くのよ!!」
椿「あ〜〜〜!!あたし、もう死んでもいい〜〜!!!
あ、マリアさん!(ドアの前でもう一度自分が持っていたお酒を差し出して)これ!」
マリア「ありがとう。」
椿「きゃ〜〜〜!!……鼻血。」
椿ちゃん、血圧上がりすぎです。(笑)
可愛らしくやって来た三人娘は、嵐のように去っていきました。(^^;;
―――――
紅蘭「はい、お疲れさん。」
物凄く自然に現れた紅蘭は、扉からではなくなんとロッカーから出てきましたよ!
流石に、これには全員驚いています。手にファンからの差し入れと思われる紙袋と箱を持って、得意げな顔で上手へと向かいます。
カンナ「紅蘭!今どこから出てきたんだよ!?お前、またへんてこなもの作ったな〜」
紅蘭「はいな!名づけて!(ちゃらららっちゃら〜ん♪)空間移動装置2号〜!
奈落と楽屋のロッカーつなげました。」
これに興味津々に食いついたのはアイリスとレニ。二人でロッカーに駆け寄ると、
紅蘭が出てきたときとは違い、掃除用具が普通に並んでるロッカーに。
なるほど、普段はロッカーとして使用できるけど、中に入れば移動できると!
アイリス「うわ〜〜!!すごいよ!階段使わなくていいんだね!」
レニ「これは便利かも〜!」
感激している二人に、得意げに笑う紅蘭ですが、そこに冷静な一言が…
すみれ「はぁ〜、馬鹿馬鹿しい。そこじゃみんなで一緒に降りられないでしょう?」
三人娘登場時は違いますが、何も無ければここでパックを外すすみれさんの一言に、紅蘭初め、納得の面々。
まぁ、きっと緊急用としては使えますよ。
紅蘭「あ、せやな。改良やな。」
うんうん、と頷く紅蘭の手に持っている箱に気づいたカンナが駆け寄ります。
カンナ「なぁなぁ!それ、アンヂェラスだよな!?これすぐ食べないとダメなんだよ。」
紅蘭「あかん!これはさくらはんの差し入れを預かったんや。」
そう言ってソファーに座った紅蘭(箱は、目の前のテーブルへ)に、レニが話しかけます。
(それまでソファーにいたジャンポールは、アイリスがさりげなく抱き上げて上手の金魚鉢の側へ。)
レニ「ね、紅蘭。舞台装置変えたでしょ?」
紅蘭「せや〜歯車の素材を変えたんや。」
レニ「すごーくスムーズになったね。」
紅蘭「わかる〜?!」
レニ「わかるよ〜!」
ぱっと嬉しそうな笑顔の紅蘭の隣にニコニコ顔で座るレニ。
さりげなく紅蘭のこと大好きですよね、レニ。日が経つと、紅蘭と軽く抱き合ってたりもしましたよね。
すると、すぐ側に立ったままだったカンナも話に加わります。
カンナ「あー、昔はセットチェンジに時間がかかって暗転長かったもんな〜」
紅蘭「そうや。せやから、機械を導入したんや。
舞台装置は昔から人が手ぇで動かしてきたやろ。
(ばんっと手元を見ずにアンヂェラスに手を出そうとしたカンナを、箱を叩いて牽制する)
けど毎日同じ作業を正確にやるんは、やっぱり機械の方がええ。」
レニ「そうだね。」
紅蘭、カンナの動きを読んでますね。(笑)
カンナ「でも、全部機械にしちゃうのはどうもな〜…」
紅蘭「ああ、もちろんです。機械はあくまでも、人間のサポート係りや。
舞台に命を吹き込むのは人の心です。」
胸に手を当てて愛おしそうな紅蘭の様子に、機械も人も愛しているという気持ちがひしひしと伝わってきます。
アイリス「そっかぁ…(立ち上がって前に出る)だから、舞台は毎日新鮮な気持ちでやらなきゃいけなんだね、マリア!」
マリア「そうね。」
すみれ「だからと言って、毎日デタラメなアドリブや間違いをしてはいいというわけではありませんわよ
だ〜〜れかさんみたいに!」
化粧水をつけていたすみれさんが放った言葉に、もちろんカンナが反応。(笑)
カンナ「デタラメなアドリブってそりゃお前のことだろ!
お前だろ、キッカケの台詞忘れてやり直ししたことあっただろ!」
アイリス「あ〜あったあったぁ!(すみれの後ろに回り込んで)もう一回やりますわぁ〜って!
やり直したんだよね〜!」
すみれ「ああ、あれは一生の不覚ですわ。弘法も筆の誤り。」
なんとかさらりとかわしたすみれさんに、差し入れ台の端にあった紅茶一式を使ってお茶を入れてる紅蘭やソファーに座っているレニがさらに付け加え。
紅蘭「猿も木から落ちる。」
アイリス「(手を大きく上げて)カッパの川流れ〜!」
レニ「(両手をグーにして鼻の前で合わせて、それを折るような動作で)天狗の飛びそこない!」
マリア「(左手をすっと上げて)上手の手から水が漏る。」
その一つ一つに「ああ、そうとも言いますわね。」と頷くすみれさん。
ことわざがひと段落したので、席を立って紅蘭が淹れた紅茶を受け取りに向かうと、カンナが前に出て本来、ことわざと言ったら…という人を話題に上げます。
カンナ「こういうとき、織姫だったら、光陰矢のごとしぃ〜〜なのよぉ〜〜る〜〜
しぃ〜〜なのよぉ〜〜る〜〜よ〜〜」
アイリス「(きゃはっ笑顔を見せて、カンナの隣に)リオデジャネイロ〜!」
カンナ「リオデジャネイロ〜!ってな。」
お正月のネタですね〜
初日はここでカンナが「織姫」ではなく「紅蘭」と言ってしまって「違う!紅蘭じゃない織姫だ!!」と慌てて言い直してました。(^^;;
カンナ「いいか、よく聞けよ!大事なところだ!!」と大慌てでしたね。
まぁ、それは置いておきまして…笑って、楽しそうなカンナの後ろで、アイリスがふと首をかしげて訊ねます。
アイリス「…ねぇ、織姫はどうしてイタリアに帰っちゃったの?」
レニ「すごーくいい舞台の出演依頼があったんだって。」
それに答えたのは、カンナではなく、ソファーから立ち上がって金魚鉢の側に立っていたレニ。
アイリス「(レニの方へ向かい)でも、織姫も花組だよ?」
レニ「もちろん。だけど、花組も大事だけど自分のやりたいことも大事だよ。」
カンナ「あ、あのなアイリス…人生ってのはいろいろあるんだよ。
人それぞれみぃーんな違うんだよ。
ほら、織姫はめちゃくちゃ人間らしくて自由なヤツじゃん!
それがあいつの魅力じゃねぇか。なぁ、マリア!」
マリア「そうね…織姫は自由だからね。」
カンナ「いいじゃねぇか、あたいたち織姫と一緒にいーっぱい舞台やったじゃねぇか。
その思い出は消えるわけじゃねぇんだからよ。」
しみじみと呟いたマリアに、カンナが頷くと舞台中央で手に腰を当てながらちょっと声のトーンを落として続けます。
カンナ「そりゃあ、あたいだって花組はいつまでもみんな一緒に舞台に立ちたいけど…けどそりゃ無理だろ。
いつか、一人辞め、二人辞め、三人辞め、四人……」
アイリス、レニ、紅蘭と指して、振り返って四人目、で紅茶を受け取ってメイク台の前に戻ったすみれさんを指そうとしたらすみれさん、思わず紅茶を吹いちゃいました。(^^;;
カンナ「あれ〜〜?ここに、一度やめて戻ってきた奴がいるぅ〜〜!!」
ええ、そういえば!!(笑)
先ほどまでの少ししんみりしたトーンはドコへやら、茶化す口調に、思わずすみれさんは立ち上がって反論します。
すみれ「あーら!どうしても戻ってきてほしいって手を突いてお願いしてきたのは
カンナさん、あなたじゃありませんか!
(ちょっと前に出て)織姫がいないから、すみれ〜お前だけが頼りだ〜〜って…」
そうだっけかな?ととぼけた表情のカンナの後ろ、ここで楽屋のドアを開けてさくらが「お疲れさまでした」と入ってきます。
ですが、すみれさんはそれに構わず続けます。
すみれ「ですからわたくしは神崎重工の仕事を放り出して、こうして舞台に立っているのですわ!
(イスに座り)感謝こそされ、馬鹿にされることはありませんわ!」
レニ「(急ぎ足ですみれとマリアの間に立って)ありがとう、すみれ。感謝してるよ。」
アイリス「(同じくレニにくっついてきて)してるよ!」
レニとアイリスがすみれにそういうと、ほっとしたようにすみれさんは笑ってました。
その間に、カンナは上手の差し入れ台の前までいき、さくらはバニー姿のままロッカーに向かって、中からホウキとちりとりを持って、楽屋の掃除をしはじめます。
マリア「さくら、着替えちゃったら?」
さくら「はい。」
それを見たマリアがやんわりと言うのに対し、すみれさんは信じられないものを見るような表情で
ちりとりで取ったゴミを捨てるさくらを見て立ち上がります。
すみれ「さっくらさん!!」
さくら「はい?」
すみれ「衣装のままお掃除なんてもってのほかですわ!!
(あ、という表情で背を向けて俯くさくら)
まずショウが終わったら衣装を脱ぐ!」
……あなた、女優失格ですわ!」
すみれさんのきっつ〜い一言に、さくらは…
さくら「ガーーーン!!」
青い照明の中、ホウキとちりとりを大粒の涙に見立てて、素早く「がーーん;;;」という看板を掲げた紅蘭の前でショックを表してました。(笑)
ただ反論するだけでなく、ギャグな表現も身につけましたね、さくらさん。(^^;;
というか、紅蘭も用意がいいこと…ちゃっかりVサインまでしちゃって。(笑)みんなその反応に驚いてますよ。
照明が元に戻ると、レニが前に出てさくらに話しかけます。
レニ「ボクが片づけとくから、着替えちゃったら?」
さくら「お願いします。」(ホウキとちりとりを渡して、カーテンの掛かっている更衣スペースへ向かう)
カンナ「さくら、気にするな。」
さくら「はい。」
素早くカーテンを閉めて、着替えに入ったさくらですが…
あ、アイリスがジャンポールポシェットから「ガーン;;」とかかれた小さな黄色い看板(ちょっと大きなぺろぺろキャンディーサイズ)を持って下手から上手に移動して
レニがロッカーにホウキとちりとりを入れたところで
さくら「あ、ファスナーが引っ掛かっちゃった……あ、きゃあぁぁ!!」
どんがらがっしゃん!と、またすごい音がカーテンの向こうから聞こえました。(^^;;
レニ「…大丈夫!?」
さくら「あはは……大丈夫でーす…」
アイリス「すみれはさくらの、天敵だね。」
紅蘭「せやな。」
思わず聞いたレニに、返事だけをしたさくらはそのまま着替えを続行のよう。
内緒話のようなトーンのアイリスに、側に居た紅蘭とカンナが頷く。(この間、レニはマイペースにロッカーの中に入って紅蘭の発明を試していました。)
事態が一段落したところで、マリアがメイク台に座ったすみれに対して口を開きます。
マリア「すみれ……さくらはもう新人じゃないの。
れっきとした女役のトップなの。さっきのような言い方はやめて。」
すみれ「あら、そうでしたわよね……
(更衣室に向かって)ごめんあそばせ〜女役のすトップさ〜ん!
ま、せいぜい次の「新・愛ゆえに」では柱倒さないようにしてくださいましね。」
さくら「倒しません!!」
さすがに、今のにはかちんときたのか、カーテンを一瞬開けて、バニーの耳だけを外したさくらさんが一言だけ言ってまたカーテンを荒々しく閉めました。
驚いてソファーに座っていた紅蘭が振り返ると、マリアが諌める意味で声を。
マリア「すみれ!」
アイリス「どひゃぁ〜〜…」
アイリスはさっきの小さな「ガーン」の裏側を前にして(「ドヒャ〜」と書かれてます)こそこそした足取りで静かに紅蘭の隣に座ります。
ふんっと顔を背けたすみれにフォローをいれたのは、すみれの横に出てきたカンナ。(レニはロッカーの前に居ます。)
それとほぼ同時に、カーテンからさくらが顔だけ出してすみれをじと〜〜っと見ています。(笑…ゲームだったら三白眼のじと目さくらになるに違いない)
しかも、ただ黙ってるわけじゃなく、ゆっくりと首を上下させてるので、どこかかわいらしくて可笑しいのです。
気づいたアイリスと紅蘭は後ろを向いてそれを見学。そのすぐ後にレニも気づきましたが紅蘭と「し〜!」と内緒と目配せして見守ってます。
カンナ「まぁまぁ、マリアいいじゃねぇか。
こいつの性格わかってるだろ、くやしいんだよ。
(ん、んんっと咳払いして)……あのな、すみれ。お前の頭につけてるその水玉の布っ切れよ。
それ、衣装じゃなかったっけぇ〜?」
言われて気づいたすみれさん。たしかに、その水玉は先ほど「浜風ジョニー」のときに歌っていたそれ!
図星をずばり言い当てられたすみれさんは、慌てて笑顔を見せて立ち上がります。(この時、マリアがしょうがないわね。という感じでレニに目線を向けると、レニの視線の先に気づいて、マリアもさくらの顔に気づきます。)
すみれ「い、いやですわ〜カンナさん!
こ、これは…!衣装じゃなく小道具ですわ!」
負けず嫌いらしい言葉を残して、スカーフを外そうと向かったすみれさん、睨んでいたさくらさんと目が合って「うげっ」と怯んでました。(笑)
ぱっとさくらさんが顔をカーテンの向こうに戻したので、すみれさんも素早く追いかけるように、顔だけカーテンの向こうにつっこんで、さくらと同じように上下させているとドアから白衣に岡持ちを持った千葉助さんが登場!
千葉助「ちわーっす!中華そばの出前にきました〜!」
レニ「千葉助さん!こんにちは。」
千葉助「すみれさんは?」
アイリス「すみれなら…」
全員がじーっと未だにさくらと影の対決中(?)のすみれさんを見つめる。(笑)
「すみれさーん。」と千葉助さんの声で、慌てて振り返ったすみれさん、ちょっと恥ずかしそうです。
千葉助「ああ、すみれさん!中華そば、お持ちしました!」
すみれ「(カーテンの前から下りて)あら、頼んだのもう三時間も前ですわよ?」
出前に掛かった時間に全員が驚いていると、メイク台の横に岡持ちを置いた千葉助さんはちょっとバツが悪そうに頭をかきます。
千葉助「いやいや、ショウに見とれてしまいましてねぇ〜!」
紅蘭「(岡持ちを指差して)千葉助はん、岡持ちさげて舞台見とったん?」
千葉助「え?あ!こりゃあ、面目ねぇ!」
アイリス「出前を忘れるほどおもしろかったんだよね〜!」
千葉助「(びしっとアイリスを指差して)そう!そうですその通り!!
いや〜、なんていうかもうキラキラしててね…まるで天使が舞い降りたようで!
もう、夢のようでしたよ〜」
夢見心地になった千葉助さんに、こっそりと頭の布を外したすみれさんが、満面の笑みで近寄って行きます。
すみれ「あ〜ら、おっほほほほ…!!いやですわぁ〜〜天使だなんてぇ〜!」
カンナ「はいはい、お前ぇのことじゃないと思うよ。」
浮かれているすみれさんを、どんっと押して止めるカンナ。
うーん、こうしてるとすみれさんが居なかった時期があるというのが嘘のようですね。
止められたのをキッカケに、すみれさんはちゃんと着替える為かドアから楽屋を出て行きました。
その間、千葉助に話しかけるのはカンナ。
カンナ「それよりよ、紙芝居屋はどうしたんだよ。商売変えか?」
千葉助の格好と、岡持ちで出前という登場に、全員が疑問に思っていた事を口にすると、千葉助さんはああ…といった表情で首にかけた手拭いに手をかける。
千葉助「まぁ…それが、いろいろありましてね……みなさん、ちょっと…聞いてもらえますかねぇ…」
カンナ「ああ、いいよ。」
花組が聞き体制になると、舞台の照明が落ちて、青黒い中、千葉助にピンスポットが当たります。
その空気の切り替わりにマリアとレニはあれ?あれ?という表情で辺りを見渡し、
カンナはソファーのほうにずれて、アイリスと紅蘭は差し入れ台の側にあった道具を取りに静かに向かい、千葉助の横にスタンバイ。
千葉助「……実はあっしは、貰われっ子でしてね。
船橋の漁師の家で育てられました。
ですが、十二歳の冬…その家に子どもが生まれましてね。
どうにも居心地が悪くなっちまって…で、町にやって来ていた旅芸人の一座にくっついて
そこから流転の人生がはじまりました…(ぶへっくしっとくしゃみ一つ)…今日は東か、明日は西。
そして行き着いた先が、深川のどぶ板横丁……
隣に住んでた紙芝居屋から道具一式買い取って
その日その時から、紙芝居屋になりました。
だが、それも……五年たぁ続かず…」
千葉助の身の上話にあわせて、アイリスは長い棒の先につけられたカゴから紙の雪を降らし、紅蘭はローラーに厚地の布を被せたもので北風の音を表現。(笑)
話が一段落したところで、二人は退散。それに続いてカンナもツバメの小道具を持って参加。
千葉助「秋に行ってしまったツバクロさえ(「ピュ〜〜!」とカンナがツバメを千葉助の頭に乗せる)
夏には帰ってくるだろうに!(「ユピィ〜〜!」とツバメを戻すカンナ。)
あっしには、その帰る故郷さえありやせん…!」
くっと千葉助さんが涙を目元に光らせると同時に、ロッカーから響く三味線の音色!!
雲国斎先生、突然の乱入です!!思わず涙ぐんだレニやマリアも驚きで涙が引っ込みます!(笑)
マリア「えぇ!?」
レニ「雲国斎先生!?なんでそこから!?」
そして、ここから千葉助さんの日替わり芸!!
登場した雲国斎先生は基本的にこれから行う演目を言うようです。
初日、15日・昼、18日、20日・夜は「国定忠治」でした。
刀を一本腰に下げて下手の方に立つ千葉助さんの右脇に紅蘭、左脇にアイリスが膝をつき台詞となります。
雲国斎「男一匹、国定忠治!
赤城の山も、日本晴れぇぇ〜〜〜!!」
千葉助「定八!!」
紅蘭「へい、親分!」
千葉助「…赤城の山も今宵限り。生まれ故郷の国定村や
縄張りを捨て、国を捨て、かわいい子分のてめぇたちとも別れ別れになる門出だ。」
紅蘭「(空を見上げて)そういやぁ、なんや、いやに寂しい気がしますぜ…!」
アイリス「ああ…!雁が鳴いて、南の空に飛んでいく…!」
雁の鳴き声を、カンナがホイッスルで表現。(笑)
千葉助「月も西山に傾くようだ…」
紅蘭「俺ぁ明日からどっちに行こう…」
千葉助「心の向くまま、足の向くまま、あても果てしもねぇ旅に出るんだ。」
アイリス・紅蘭「親分!!」
すると、千葉助演じる国定忠治がすらっと刀を抜いて掲げる。
千葉助「加賀の国の住人、小松五郎義兼が鍛えた業物、万年溜の雪水に清めて、俺にゃあ生涯…てめぇという強えぇ味方があったのだ!!」
この話は、ドラマCDを追いかけていた人には馴染みあがるかもしれませんね。(あれは「忠臣蔵」も混じってますが)
国定忠治は実在した人物の生涯から生まれた演目なので、あらすじというのもなかなか難しいのですが義賊話になっているものが多いみたいです。
賭博に入り込み、そこから生まれた私財で飢饉に立ち向かったあたりが義賊話に繋がっているようです。
千葉助さんたちが演じたのは天保の大飢饉の際、悪代官を斬ったことから追われる身となった忠治が追い詰められるところですね。
―――――
雲国斎「瞼の母のぉ〜〜物語ぃぃ〜〜〜」
19日昼と21日は「瞼の母」雲国斎先生、本当は「ものがたぁぁ〜〜あぁぁ〜〜あぁぁ〜〜(ポンッとマリアに肩を叩かれる)りぃぃ〜〜」な感じですごい伸ばしてました。(笑)
演じるシーンのあらすじは、母親を探して江戸へ出てきた忠太郎が柳橋の料理屋の女将となった母、おはまを訊ねるも、おはまには既にお渡世という娘もあり気づいているものの忠太郎を実の子じゃないとつっぱねて追い返してしまい、忠太郎は探し、慕っていた母に冷たくされて、あての無い旅に出る…というもの。
相手役のおはまはレニ!紅蘭とアイリスに手伝ってもらい、真っ黒の法被を肩にかけて、キセルを片手にたばこ盆の前に座って、千葉助さんは下手側に控えます。
千葉助「おっかさん…!」
レニ「お前さん、いったい誰だい?」
千葉助「忠太郎でございます…」
レニ「なんだって?」
千葉助「五つの時に縁が切れて早四十年。
縁は切れても血は繋がる。切れて切れねぇ母子の間には
眼に見えねぇが結びついて、互いの一生を離れやしねぇ…!」
レニ「おだまり!(コンッと灰吹きに灰を落とす)おまえはあたしの産みの子とは違っているよ。
第一、親を訪ねてくるのに(キセルに新たな火を入れる)どうして堅気になっていないんだい?」
千葉助「おかみさん!…その指図は辞退すらぁ…堅気になるのは、遅すぎた。
ヤクザ渡世の泥沼に足も脛までつっこんだ喧嘩鳥
洗ったってもう落ちねぇ旅人癖だ!
母を恋しがっても(立ち上がり)そっちとこっちじゃ、立場が違うか…
こうして瞼の上下をぴっっっっっっ――――」
千葉助さん溜めすぎ溜めすぎ!(笑)
やっと言ったときには、レニも周りのみんなもおっと、という感じでこけてますよ;;
千葉助「―――ったりとあわせりゃ、その姿がくっきりと映らぁ…!
…おさらばでございます!」
レニ「はっ(去っていく後姿を見て)忠太郎〜!」
レニの女役、しかも母役なんてここでしか見れませんよ!
いやぁ、いいものを見させてもらいました。
―――――
雲国斎「芸子踊りの乱れ髪〜
一本刀のぉぉ、のぉぉ〜〜〜!!(見かねてぽんっと肩を叩いて先へ進めるマリア)
土俵入りぃぃ〜!」
13日・夜、16日、19日・夜、千穐楽は「一本刀の土俵入り」
あらすじとしては、相撲取りを目指していた駒形茂兵衛。だが、才能がないと親方から見放されて帰郷する途中、一文無しで空腹で途方にくれていると安孫子屋のお蔦に助けられる。
それから十年。ヤクザに落ちぶれた茂兵衛がお蔦と再会を果たしたとき、お蔦は夫である辰三郎が博打で作った厄介ごとに巻き込まれていた。
今回の相手役は、マリア!席から立ってメイク台の前に出ると、ガウンの襟元に手を添えて、紅蘭から受け取った刀を腰に下げて膝をついている千葉助さんに斜め後姿で相対。
千葉助「お久しぶりでございやす…!」
マリア「どなた?…なんでございましょう。」
千葉助「お見忘れはごもっともでございます…茂兵衛でございます。」
マリア「さぁ……思い出せないね。」
千葉助「お約束を無碍にしてこんなヤクザに成り果てまして、お目通りはかなわないつもりでしたが
十年ぶりにこっちに流れて思い出し、訊ねてみたらこの騒ぎだ…
ご恩返しの真似事がしてぇ!(懐から袋を取り出して、手に握らせる)
さっこれをお納めください!」
さて、あらすじどおりに物語を進めるために、下手にいたカンナが小道具の短刀を片手に前に出ます。
辰三郎ともめていたヤクザ一味の一人ですね。
お蔦を脅そうとしますが、茂兵衛がその間に立ちはだかる。
カンナ「こんなところにいやがったのか、このアマ!
(マリアが倒れ、千葉助が前に出る)なんでぇ、お前は!邪魔立てすると命は無いぞ!」
今この時が恩返しの時、とヤクザの相手をし、張り手でそれを退けるとお蔦がはっと顔を上げて茂兵衛を見る。
マリア「思い出した…!!あんたあのときの!…取関(とりせき)さん!」
もう一度がんばりな、と助けてくれたのに再開したときにはヤクザに身を落としていた茂兵衛は頭を下げる。
千葉助「そうでございます…面目ねぇ…!さっ早くお逃げください!!」
マリア「…お名残おしゅうございます…!!」
そして、窮地に立たされているお蔦を逃がそうとする。
……まぁ、ここはマリアさんのお茶目(?)で一歩進んでは振り返り、一歩進んでは振り返りをしていたので
千葉助「早く行けってんだよ!!」
終いには怒鳴られてしまいました。(笑)
まったく…と、マリアがさっと走って下手の端で反転して、遠回りにメイク台の前に戻ると、千葉助さんにスポットライトが当たります。
千葉助「ああ、お蔦さん…棒ッ切れ振り回してする茂兵衛の
これが、十年前に櫛、簪、巾着ぐるみ、意見をもらった姐さんに
せめて見てもらう駒形茂兵衛!
しがねぇ姿の土俵入り〜!!」
べべんっとここで三味線が鳴り響く!
マリアの女役もめずらしいですよね〜ギャグっぽいアレンジもあって楽しかったです♪
―――――
14日、17日は「玄冶店」(げんやだな)でした。
歌舞伎では有名なお話だそうです。
切られ与三郎の異名をとる与三郎が悪い仲間に連れられて小銭をゆすりに入った妾宅に
かつて恋仲だったお富が囲われ者として暮らしているのを見たときのシーンを演じてました。
相手役のお富はアイリス。上手の方に千葉助さんが膝をつき、下手ではすました顔でお膳の前に座ってお酒を飲む仕草のアイリスが。
千葉助「お富さんえ、いやさ、お富!久しぶりだな。」
アイリス「そういうお前は?」
千葉助「おぬしは俺を見忘れたか〜!」
アイリス「えっ?」
千葉助「この傷を忘れたとは言わせねぇぜ!」
帽子を取り、額にある刀傷の後を見せると、お富は「…し、ぇぇ〜〜!!」と驚いて両手を挙げて横に倒れてました。(笑)
その後ろでは紅蘭がカン!カン!!と拍子木をたたきます。
その刀傷は、3年前、当時のヤクザ親分の妾だったお富と、人目を盗んで契りを交わしたことがバレてつけられたもの…だそうです。
千葉助「しがねぇ恋の情けが仇。
命の綱の切れたのを、どう取りとめてか木更津から、めぐる月日も三年(みとせ)越し
江戸の親にゃあ勘当受け、よんどころなく鎌倉の
谷七郷(やつしちごう)は食い詰めても、面(つら)に受けたる看板の
傷がもっけの幸せに、切られ与三と異名をとり
押し借り強請りも習うより、慣れた時代の源氏店(げんやだな)
その白化(しらばけ)か黒塀の、格子作りの囲い者。
死んだと思ったお富たぁ、お釈迦様でも気づくめぇ…
よくお前、達者でいたなぁ!!」
アイリス「…し、ぇぇぇ〜〜!!」
千葉助さん演じる与三郎の見事な台詞に、再び驚き倒れるアイリス演じるお富。
…といったところで、この演目は終了となりました。
千葉助さん、これらが日替わりだなんて……なんて豪華。なんて贅沢!
―――――
そして。千葉助さんの熱演に対抗するかのごとく、カンナが学生帽にやたら長い(笑)黒い外套を羽織って背後からあの名前を!
カンナ「……宮さん!」
すみれ「あ、貫一さぁ〜〜ん!」
タイミングよく冬服に着替えて戻って来たすみれさんも素早く乗って、演じ手、バトンタッチ!
ちゃかちゃんちゃん♪と三味線の音に合わせて、隣に立つレニが中央で演技する二人を唄でサポート
レニ「熱海の海岸二人連れ 貫一、お宮の二人連れ
共に歩くも今日限り 共に語るも今日限り〜」
最初は真面目〜なんですが、どこかギャグパートになるのがこの二人のお約束。(笑)
共に歩くも〜ですみれさんが長すぎる外套の裾を踏んでしまって足踏み状態になったり。(笑)
でも、レニの唄が終わると同時に、立ち上がり、すみれさんは下手にカンナは上手に向かい同じメロディーで繋ぎます。
カンナ「僕が学校終わるまで 何故に宮さん、待たなんだ〜
僕の愛に不足ができたのか、さもなきゃお金が欲しいのか!?」
すみれ「いいえ、愛に不足は無いけれど…」
ついっと目線を下げるすみれさん。すると千葉助さんが岡持ちをちょっと持ち上げてすみれさんの後ろに立つと、岡持ちの下段からするりとマイクを取り出して…
すみれ「♪どんなにあなたが愛していても 愛する心じゃわかりません
(カンナ、後ろを振り向きなにやらごそごそ)
愛する心じゃ わかりません」
カンナ「♪本当の気持ちを わたしにくださいな」
二人「♪ダイヤモンドをくださいな」
カンナも、外套の中からハンドマイクを取り出して、一緒に歌う歌う。(笑)
♪愛はダイヤ
伴奏が入ると同時に、冬服に着替えたさくらも更衣室から出てきて全員で大盛り上がり!
ラスサビのみでしたが、マイク片手にこれを歌うというのは一年目の「愛ゆえに」みたいでなんとも懐かしいですね〜
踊るメンバーもいいですが、千葉助さんと紅蘭がベースを弾いてるマネをしているのも好き。(笑)
カンナ「ええ〜い、このバイタ(売女)〜〜!!」
すみれ「あぁれぇぇ〜〜!」
最後はカンナがすみれを蹴り、すみれが勢いで飛ばされるも最後は二人で「愛はダイヤ」のポスターとおなじ、すみれがカンナの足に縋り寄るポーズで終了!
いやぁやっぱりこの曲もいいですね!
盛り上がりが一段落したところで千葉助さんがすみれさんの持っていたマイクを受け取って締めに。
千葉助「ま、いろいろあったんですがね。最終的に愛は形ということで…わたくしこの度結婚いたしました!」
花組「結婚!?」
おお、突然の嬉しい報告!!
驚く花組ですが、すみれさんだけはこっそりと微笑んでメイク台へと向かいます。
レニ「おめでとうございます!」
アイリス「おめでと〜!」
千葉助「それで、新橋のガードしたで中華そばの屋台を始めたんですよ。」
なるほど〜…と思っていると、すかさずすみれさんが自分のメイク台から、白い袋を取り出して千葉助さんに差し出します。
(この間に、カンナは学生帽や外套を外して衣装コーナーに戻します。)
すみれ「これ、結婚のお祝いですわ。」
千葉助「えっ!?いやそんな…!」
すみれ「どうぞどうぞ。」
千葉助「あ、ありがとうございます…!
あ!すみれさんおそばね!」
すみれ「ああ、もうおそばは結構ですわ。」
岡持ちの中からとりだした中華そばを、すみれさんが断ったので変わりに受け取ったのでもちろんカンナ。
カンナ「じゃあ、あたいがもらうよ!いくらだい?」(中華そばを持ってソファーの前のテーブルに置く)
千葉助「い、いえお代は……」
カンナ「いいからいいから!開店祝いだよ、取っとけよ。取っとけ取っとけ!」
ポケットから小銭を取り出したカンナは、それを千葉助さんに笑顔で握らせると嬉々としてラーメンを食べだします。
千葉助さんが花組の優しさに触れて感激していると、ふと雲国斎先生と目が合いまして
千葉助「ん?どういうことか…先生の心の声が聞こえる!
え?結婚祝いに一杯奢ってくれるって?
いや、そこまでしてもらちゃあ〜〜〜!!…どうも、ゴチになります!」
雲国斎「い、いやそんなこと全然…今なんにも考えないでぼーっとしてただけですよ。」
千葉助「あ、じゃあみなさん失礼します!先生、行きましょか!」
雲国斎「いや、だからぼーっとしてただけですってば!」
岡持ちを持って、花組に挨拶をして去る千葉助さんを成り行きで追いかける雲国斎先生。(笑)
それにしても、雲国斎先生、本当になんでロッカーから出てきたのでしょう。(^^;;
カンナ「ん、これ…完全にのびきってるけど結構うまい。
おい、すみれ。お前この中華そば出前頼んだの祝儀やるためだろ。」
すみれ「わたくしは庶民の中華そばも食べてみたいなぁ〜と思っただけですわ。」
メイク台に座って髪をとかすすみれさんの真意は、もう言わなくてもわかりますよね。
カンナは中華そばを食べ、その隣に座るアイリス、紅蘭も後ろに立って和やかな空気の中(マリアはメイク台の側に立ち、その隣にレニが居ます。)
千葉助さんが出て行ったドアを見てさくらがしみじみと呟きます。
さくら「そっか…千葉助さん結婚したのか。」
マリア「羨ましい?」
さくら「え…い、いいえ!」
すみれ「(すかさず立ち上がりさくらの手を取る)さくらさ〜ん!
あなたはきっといいお嫁さんになりますわよ〜〜
舞台に立つより、ず〜〜っとお似合いですわ。」
立ったついでにすみれさんは差し入れ台の上へ。今度は自分で紅茶を淹れるのですが、その前にさくらがはっきりと反論します。
さくら「お嫁になんかいきません!
あたしは…ずっと帝国歌劇団の舞台に立ちます。」
カンナ「うん、わかってるよ。」
カンナが笑って相槌を打つと、みんな顔が綻ぶのですがその中でレニがまたしみじみした顔で遠くを見上げます。
レニ「でも…いつかは客席から舞台を見るようになっちゃうんだろうなぁ…」
紅蘭「そらしゃあないわ。
残酷なようやけど、時の流れには逆らえまへん。(カンナに詰めてもらい、ソファーに座る)
いくら霊力を持ってしても、不老不死やなない。
不死身に見える光武かて、寿命はあるんや。
ウチらにも、必ず、終わりはきます。」
さくら「そんなことはわかってます。わかってる……
でも…言葉にしちゃいけないと思うんです。
あたしたち舞台に立つ人間は、永遠に輝く存在でいなくちゃいけないと思うんです。
消えていくから…儚いものだからこそ……不死身のようにいなくっちゃって…」
さくらの舞台にかける思いに、カンナも中華そばを置いて真面目にさくらを見つめます。
カンナ「不死身、か…」
アイリス「さくらの言ってること…ちょっとわかる。」
マリア「そうね…そういう気持ちで舞台に立たないといけないわね。」
すみれさんも、最初は背を向けているのですが、その後静かに微笑んでいるのが印象的。
全員が舞台にかける思いを新たにしていると、紅蘭が弾かれたように顔を上げて立ち上がる。
紅蘭「あ!次の舞台装置、裏方はんと打ち合わせせな!」
マリア「お願いね。」
紅蘭「はいな!」
足早に駆けて行き、マリアにもきちっと返事をした紅蘭は、迷う事無くロッカーの中へ…(笑)
それを見たアイリスがすかさずロッカーに近づき、紅蘭が戸を閉めてすぐにそ〜っとロッカーを開けると、そこには紅蘭の姿は無くて普通に掃除用具が入ってました!
アイリスの後ろからそれを見ていたレニもすごい!と興奮して感心している模様。
アイリス「うわ〜〜〜〜!!やっぱり紅蘭の発明はすごいよ!
(さくらを見て)そのうち、みんなを不死身にしちゃったりして〜!」
レニ「かもね!」
二人が紅蘭の凄さにロッカーの周りにいる間に、カンナが先ほど紅蘭に止められたアンヂェラスの箱を持って、素早くさくらの側へ。
カンナ「なぁ、さくら。これお前に来た差し入れなんだけどよ。(さくら、箱を受け取る)
これは、不死身じゃねぇから今食っていいかな?」
さくら「はい、どうぞ。」(笑)
やや笑いながらさくらが箱の蓋を開けると、カンナがぱっと笑顔をみせて「いいってよ〜みんな!」といち早く一つ掴むと遠慮なくぱくり。(笑)
さくらは一人一人アンヂェラスを勧めて行きます。マリア、レニ、アイリスは一つずつ受け取り、紅茶を持ったすみれさんはソファーに座りながらやんわりと断ってました。
レニ「そういえば、マリアとさくらの主演って久しぶりだね。」
アイリス「海神別荘以来じゃない?」(そうね、と頷くさくら。)
レニ「先月歌舞伎座でも泉鏡花やってたね。」
すみれ「ああ、海神別荘もやってましたわね。でも、あちらには赤ザメくんなんてお下品な役はありませんでしたけど。」
カンナ「(すみれをちらりと気にして)あ〜うめぇな〜アンヂェラス〜〜」
レニ「出せばいいのにね、赤ザメくん。」
レニの軽い一言にマリアとすみれが「えっ…?」と怪訝そうな声を上げてますが、レニは我関せず。(笑)
歌舞伎座で泉鏡花はこちらの時間で考えても本当ですね。(「夜叉ヶ池」「山吹」「海神別荘」「天守物語」を上演していたそうです)
すみれのイヤミなツッコミに、カンナはちょっとわざとらしくアンヂェラスの感想を言って、座り込んでいたのを立ち上がるとすぐ後ろにいたレニに話しかけます。
(マリアはメイク台の上に座って、アンヂェラスはその前に置いてあるだけ。アイリス、すみれさんはソファーに隣同士に座り、アイリスはアンヂェラスを食べています。すみれさんは一口だけもらっていた様子。)
カンナ「もう1個ちょうだ〜い。」
レニ「(自分が持っていたアンヂェラスを渡す)はい。」
すみれ「まぁ、まだ召し上がるんですの?」
カンナ「ああ、食べますよ。うまいものは早く食えってこれ沖縄じゃ常識なんだよ。」
下手側へと歩きながら反論するカンナでしたが、突然甘えるようなトーンの声に。
カンナ「あ〜あ…いつかあたいも、あま〜〜いケーキになりたいな。」
さくら「え?カンナさん、ケーキになりたいんですか?」
カンナ「うん!だって、乙女の夢だろ?ケーキになるっていうのがさ。」
差し入れ台に空になった箱を置いて、金魚鉢の側に立つさくらが全員の疑問を代表して聞くとカンナは堂々と言い返し、全員が首を傾げて静止モードになるともちろんあの流れに!(笑)
赤いカーテンの更衣スペースの上にちゃんとカンナの妄想にバッテンされて「乙女の夢」とピンク色でかかれた看板が現れ、赤いカーテンの中からはフォークになった琴音さんとスプーンになった菊ちゃんに挟まれる形で苺ショートケーキの着ぐるみを着た紅蘭が!!(笑)
♪ケーキいいですね
紅蘭、かわいい妄想…じゃない、乙女の夢でよかったですね?(^^;;
帽子が意図後の形で、胴体にケーキのスポンジ部分、下は細かい水玉のミニスカートに赤いハイヒールと普通にショートケーキのイメージ通りのきぐるみで前に出てくると一礼をして歌へ。
紅蘭「♪ケーキケーキケーキ 甘い甘いケーキ
わたしはケーキ
ケーキケーキケーキケーキケーキ あま〜いあまあまあま〜いケーキ
世間は景気(ケーキ)…
えらいよろしおすしなぁ。(お札をケーキの中から取り出してビラビラと見せて、すぐにしまう)
皆さんもご一緒に!ケーキケーキケーキ、はい!
♪ケーキケーキケーキ 甘い甘いケーキ
ケーキケーキケーキケーキケーキ あま〜いあまあまあま〜いケーキ
幸せの別腹 ケーキ」
琴音さんは下手、菊ちゃんは上手のオケピ横まで出てきてご一緒に〜の部分はみんなで「ケーキケーキケーキ」と唱和。(笑)
最後はかわいらしくすたたーと走って、更衣室の中へ。
薔薇組「グサッ」
紅蘭「イテッ」
でも、せっかくポーズを決めたのに横の二人に刺されてしまいました。(笑)
まぁ、ケーキですものね。(爆)
照明が元に戻り、カンナの笑い声が響く中いままで静止していた仲間たちも動き出します。
カンナ「あっはははは…!!
みんな、見ただろ紅蘭のケーキ!」
全員「見てな〜〜い」
カンナ「あれ?い、いやだって今、幸せの別腹〜って…」
全員が軽く首を振る中、カンナがさらに言おうとしたそのとき…!!
緊急警報のブザーが鳴り響く!!つい先ほどまで和やかだった顔に一瞬にして緊張が走る。
マリア「みんな、行くわよ!」
全員「はい!!」
カンナ「なぁ、さくらは見たよな紅蘭のケーキ!」
さくら「ええ!」
マリア「カンナに構わないで。」
さくら「はい!」
カンナ「いやいや、構ってよみんな!構ってよ〜〜!!」
マリアを先頭に、次々にドアを出て指令室に向かう。
でもカンナはさくらにだけは聞くんですが、さくらの返事はあまりに素っ気無く、マリアの「構わないで」発言に素晴らしくはっきりと返事をしてドアの向こうへ。(笑)
結局、カンナが叫びながら最後になり、ここで暗転。
―――15日・昼、16日斧彦バージョン
そりゃ薔薇組ですもの!妄想には出ますって。(笑)
とはいえ、更衣室からではなく、ロッカーから紅茶のきぐるみで登場。(大笑)
ちなみに、レモンが一枚浮いてるカップなのでレモンティーですね。
のそのそ動いてるのですが、それがまた…!!すぐ近くのマリアとレニが、ものすごぉぉ〜〜〜く目で追ってて、けど必死に肩を動かさないようにしているのですよ。(笑)
でも、その必死の抵抗もむなしく、二人の間に座ってメイク直しを始める斧彦。もう二人の「え、ええぇぇぇ??」みたいな目線がすごいツボです!
紅蘭、ごめんねあんまり見られなくて!!(汗)
その様子をアイリスは見えていたのか、昨日までとは全然違う余裕の無い表情でなんとか笑わないようにしようと手にしていたアンヂェラスをじーーーっと睨んでました。(笑)
その後、歌が終わり、紅蘭と琴音さん、菊ちゃんは予定通り帰るのですが、斧彦さんだけはちょっと舞台に残ってカンナからアンヂェラスの残りを貰って、ゆっくりと下手へと歩いて行きました。(^^;;
カンナ「あっはっはっはっは!!
幸せの別腹〜〜ってか!それからいろんなものを見ただろ!」
全員「……みてなーい」
カンナ「いやいや、(マリアに向かって)目合ってたし!」
さすが、カンナさん、マリアさんに鋭いツッコミです。(笑)
でもこの後すぐに警報がなるので、マリアさんなんとか持ちこたえて心なしかいつもよりも急ぎ足で扉に向かいました。(爆)
この時カンナは「いやいや別腹見ただろ!?さくら!さくらは大きな塊、見たよな!?」ときいてるのですが、やっぱりスルーしてました。(^^;;
16日はさらに斧彦さんはじけてました!!今回はアイリスは比較的無事だったのですが、その分レニとマリアに集中。(笑)
すみれさんがゴミ箱に捨てたパックを拾ってレニの手に乗せたり(怯えている、困惑しているという言葉に嘘が無いくらい、レニ困って固まってます。)
マリアとレニの間に座って、マリアのメイクを直そうとしたり(これには、さすがのマリアさんも動いて「いいです。いいです」と必死に目を合わせないようにしつつも動きで断ってました。)
紅蘭たちが去った後の残った斧彦さんに、カンナさんが「食べる〜?」とアンヂェラスを渡して終了となりました。(笑…もちろん、斧彦さんは食べながら下手へ。)
カンナ「あっはっはっはっは!!なぁ、みんな今の見たか?」
マリア「見てない!」
直前まで笑いを一生懸命こらえていたのですが、見てない!と否定するのは素早くて真顔そのものでした。(笑)
カンナの「いやいや、化粧されてたじゃん!」のツッコミにまた笑いそうになるのを、警報に助けられてましたね。
いやぁ……斧彦さん、いるだけで会場の目線を釘付けにできるのですね!<ちょっと違うだろ
―――――
警報が鳴り響く中、紗幕が下りると一転して静かな場所へ。
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