第三幕その1


今回が初ですが、休憩時間が二度あるというのは、いいかもしれません。
気持ちを切り替える意味でもちょうど良かった。
一ベルが鳴り、席の戻ると程なくして場内アナウンスが。

マリア「本日は、大帝国劇場にお越しくださいまして、誠にありがとうございます。
    これより花組特別公演「新・愛ゆえに」を開演させていただきます。
    どうぞ最後までお楽しみ下さい。」

客席が暗くなるなか、マリアのアナウンスが入り、壮大な音楽が響くと幕が上がる。
舞台は、華やかな宮廷の舞踏会。
レースの扇子に華やかなドレスを身に纏った女性と、白髪のカツラに豪奢な服を着た男性が舞い踊る中、二幕では真っ黒だった三角形の高台が、大理石のような模様がつき、弧を描くような階段が両端に、そして中央、空洞になっていた部分はふさがれ、大階段があります。
その大階段の上から現れたのは一際豪奢な服や装飾品を身につけた王妃マリー(すみれ)と王(雲国斎)

貴族「♪見よ 素晴らしきこの舞踏会」
マリー「♪讃えよ 我が世の春を」
貴族「♪見よ 素晴らしきこの舞踏会」

♪仮面舞踏会

仮面、とついてますが実際は誰も仮面をつけていない…と思ったら、ここにいるときの顔そのものが仮面、という意味のようです。
優雅に階段を降りてくる王妃と王の前に並び、歌う貴族たちの歌詞がそれをさらしています。

貴族「♪偽りの心を隠して 舞い踊る」

マリー「♪黄金も宝石も 全て私のものだ
     この世の全てが私を讃える」

舞台の前に出て、スポットを浴びた王妃は、まさに幸せの絶頂に居る様子。
王が静かに下手に向かいますが、王妃は高らかに歌いながら上手へ。その後姿で、貴族たちは顔をしかめます。

マリー「♪私は生まれながらに高貴な身分」
貴族「♪あの女 ゴミにまみれていた」
マリー「♪私の優しさ 王妃に相応しい」
貴族「♪美貌を武器にあれよあれよとのし上がった」

だが、そんな陰口に気づかない王妃は貴族たちに振り向き、笑顔を向けます。

マリー「身分が違っても、わたくしは貧しいものたちを愛しています。
    さぁ、パンを分け与えなさい!」

人格者を気取り、そう言うも「それは嘘だ。そんなのは自己満足で、実情は何一つわかってないくせに」と首を振るう貴族たち。
王妃の謳歌する贅沢は、今にも崩れ落ちそうなもろい上にあるようですね…

貴族「♪見よ 素晴らしきこの舞踏会
    見よ 素晴らしきこの舞踏会
    偽りの素顔隠して 舞い踊る
    素晴らしき舞踏会」

最後は、王妃と王が大階段の真ん中に立ち、それをフロアに居る貴族たちが取り囲むようにポーズ。
それでも、今宵の会は仮面をつけて華やかに。
宮廷音楽が流れる中、人々は談笑し、王妃と王は手を取って階段を上って下手のほうへ。
そのまま紗幕が下がり、音楽のみが宮廷の余韻を残しているも、それが途切れると今度は軽快な音楽に。
下手、上手からどんどんとても綺麗とはいえない、汚れた服そうの民衆がどんどん現れてきます。
その真ん中にはアイリス演じる少女、かえで演じる母、カンナ演じる少年が居て、親指を下にして世間に対する不満を歌います。

♪身分違いだってさ

民衆「♪ぶー! 身分違いだってさ
    ちぇっ そんなこと誰が決めたんだ
    心臓でも抉り出しゃ (ぽんっ)赤い血が誰でも流れる」

ちぇっで軽く蹴る動作がなんだかかわいいので好きです。
後ろで踊る民衆の前を三人が上手に向かうと、薔薇組の二人演じる平民が登場。

少年「♪王様だって生まれるときは裸じゃないか」
母親「♪そんな理屈も(ぷんぷんっ)わからないのか」
三人「♪馬鹿な威張る世間笑っちゃう」

「♪裸じゃないか〜」という部分で薔薇組の二人が「いや〜ん」と恥ずかしがるのがなんとも…(笑)
世間にケンカ、というか愚痴る三人が再び舞台の中央へ戻ると、先ほどの宮廷音楽と同じメロディーが流れ、それにあわせて踊る民衆たち。
ひとしきり踊った後、三人が下手へ向かい、他の民衆たちが一列に並ぶ前を王様、王妃、王女の振りをして下手から上手へと歩く。
上手に辿り着いたところで、跪く民衆に、少女は恭しく鞄から巨大なネズミを取り出すと、一番前に居た男にそれを授ける。
授けられた男は大慌てで後ろの人達にネズミを投げて、リレー状態。最後まで辿り着いたネズミは下手へと投げられてしまいました。(^^;;

ゲストが居る日はここでゲストの登場となりました。下手から少女の後ろに現れて、三人と一緒に歩くのです。
斧彦さんの場合は、平民の……こ、子供?肩にかけた鞄の中から取り出したのは…巨大かえるの串焼き。それを見た三人も驚きましたが、それ以上に民衆が…物凄く嫌そうに、素早く下手へと投げて行きました。(爆)その後、斧彦さんは上手のオケピ横にしゃがみこんで小さなトカゲを取り出して食べてます。(汗)

三人娘のときは、両手に布を被せた何かを乗せた状態で登場。頭にそれぞれ白いキャップを被り、楽しげに後ろをついていきます。三人同時に民衆の手に持っていたものを乗せると、ぱっと布を取って中身をあらわにする。中身はん、なんと爆弾!!そりゃもう大慌てで下手へと投げて行きますよ。(汗)
その様子に、やった〜っと手を合わせて喜んだ三人娘は上手へと早々に下がる…意外とイタズラ好き?

少女「♪お金があっても 友達いない」
三人「♪墓の中にお金入れるんだ」

混乱の中、再びセンターに戻ってきた三人は、オケピに向かってお金を投げる仕草。
ここで紗幕が上がって、舞台が広くなる。今度は三角形の斜面になっている方が前に。こちらも二幕とは違い、階段部分は石段のような模様が。中央部分には噴水があり、どうやら街の広場といったところでしょうか。

民衆「♪身分違いだってさ ちぇ! そんなこと誰が決めたのさ」
母親「♪身分違いだってさ (笑っちゃう〜)
    金持ちが偉いのか (笑っちゃう〜)
    みんな馬鹿野郎だぜ (わっはっはっは)」
民衆「♪ぶー!!」

最後は、真ん中に居る母親の台詞のような歌で、最初と同じように親指を下にして全員が世間に対する不満をあらわにした後、あっはははは!と笑いあう。

歌が終わると同時に、上手からカゴに花を入れたクレモンティーヌ(さくら)が登場。歌が終わって散り散りに上手に向かったり下手に向かう人たちが近くを通ると「あの、お花はいりませんか?」と差し出すもみんな「花なんか役にたたねぇだろ。」と見向きもしません。
(斧彦さんが居るときは、ここでやっと上手に向かう琴音さんに「いつまで食ってんだよ、いくぞ!」と立たされて上手に向かいました。)
それでもクレモンティーヌはめげずに中央まで出てきてあの三人連れにも声をかけます。

クレモンティーヌ「あの、お花を買ってくれませんか?」
カンナ「母ちゃん、花だってよ!」
母親「あっはっはっは!!花なんか買う金は無ぇ!!」

それでも、やっぱり答えは同じで…三人が上手側の斜面に上がっていくのを淋しそうに見つめたクレモンティーヌにスポットが当たり、回りの動きが止まる。

クレモンティーヌ「♪花は静かに咲いているけれど 炎のような恋をする」

♪炎のように

クレモンティーヌ「あの、お花を…」

歌と同時に止まっていた時間が動き出し、再び花を勧めるも、断られ続ける。
それでも、尚歌うクレモンティーヌ。今の彼女を支えているのは、たった一つの熱い想い。

クレモンティーヌ「♪わたしの心に花が咲く 揺れて縺れて運命の人
          寝ても覚めても恋しく思う」

手にした花を愛おしそうに見つめて、その人を思い浮かべて微笑むクレモンティーヌ。
ですが、その後ろ、舞台奥から下手側の斜面に現れた二人の男―――茶色の上着の男と(千葉助)黒い上着の男(大神)。身なりは悪くないので、貴族ではあるみたいですが、二人ともあまり地位は高くなさそうですね―――がそれを見つけて左右からクレモンティーヌを囲む。
先に声をかけたのは茶色の上着の男です。

下級貴族「おい!こんなご時勢に花売りたぁ、お笑い草だぜ!」
下級貴族「(うつむいたクレモンティーヌの顔を覗き込む)お、この女そうとう綺麗だぜ!」
下級貴族「ほ〜!ホントだ!こりゃあ、けっこうな上玉だぜ。
     (クレモンティーヌの手から花を奪う)こんな花売ってねぇで」
クレモンティーヌ「あ…!」
下級貴族「(奪った花を投げ捨てる)いっそお前を売ったらどうだ?
     せいぜい高く買ってやるよ。」
クレモンティーヌ「い、嫌!!」
オンドレ「やめろ。」

茶色の上着の男が無理矢理クレモンティーヌの肩を抱き、必死に抵抗するクレモンティーヌ。
街の人々は、係わり合いにならないように去る中、舞台の奥から現れた二人の軍人のうち一人が、それをみて上手側の斜面を降りながら声をかける。(もう一人の軍人は、一般兵であり、その場を動かない)
白い軍服を身に纏ったその男を見たクレモンティーヌははっと息を呑む。彼こそが、クレモンティーヌの想い人、オンドレ(マリア)。
だが、そんなことには気づかない二人の男の内、黒い上着の男が軍人に近づく。

下級貴族「なんだ、貴様は!」
下級貴族「邪魔するんじゃねぇ!」

言いながら、殴りつけようとするが、それをひらりとかわしたオンドレは、続く茶色の上着の男の一撃も交わし、剣に手をかけて二人を睨むと、ひっと声を上げて恐れる。

下級貴族「お、覚えてろ!」
下級貴族「覚えてろ!」

先に捨て台詞を言って、茶色の男は下手へ、続いて同じ台詞を残して、黒い上着の男は上手へと走り去る。
それを見届けたオンドレは剣から手を離し、クレモンティーヌの身を気遣う。
(この間、上に残っている軍人は背を向けてなにも見ないように務めている。)

オンドレ「…大丈夫?クレモンティーヌ…」
クレモンティーヌ「オンドレ様…」
オンドレ「遅くなってごめん…」
クレモンティーヌ「会いたかった……」
オンドレ「僕も君に会いたかった。でも、すぐに宮殿に戻らなくてはならない…」
クレモンティーヌ「いいえ、ちょっとだけでも…お会いできて嬉しい。」
オンドレ「愛しい君よ…」

優しい眼差しでクレモンティーヌの手を取るオンドレですが、ここで上に残っていた軍人が声をかけてきます。

軍人「オンドレ様。将軍様がお呼びです。」
オンドレ「…わかっている。」

名残惜しげに手を離したオンドレは、去る前に先ほど貴族の男が捨てたクレモンティーヌの大切な花を持ち、それを彼女に差し出す。

オンドレ「クレモンティーヌ…僕は君を愛している。」
クレモンティーヌ「…はい。」

笑顔で受け取ったクレモンティーヌを見て、オンドレは頷くと、それ以上振り返らず上手の斜面を上って舞台の奥へとさがる。オンドレに付いていた軍人がクレモンティーヌに向かい軽く礼をしてオンドレを追うのを見送ったクレモンティーヌは舞台の中央でオンドレが取ってくれた花を見つめて歌う。

クレモンティーヌ「♪わたしの心に花が咲く 誰も出来ない 摘み取ることは
          寝ても覚めても恋しく思う」

幸せそうな顔のクレモンティーヌ。
だが、下手から入ってきた一人の男はそれを見て驚愕の色を顔に浮かべる。

ベルナール「……おい!クレモンティーヌ!!」
クレモンティーヌ「兄さん。」
ベルナール「見たぞ…お前が密会していた男は親衛隊じゃないか!」

兄、ベルナール(紅蘭)に見られた、とクレモンティーヌは手にしていた花をカゴに戻し、背を向けて頷く。

クレモンティーヌ「ええ…そうよ。」
ベルナール「ダメだ!それは身分違いだ。お前を不幸にする!
      …二度と会わないと約束しろ。」
クレモンティーヌ「嫌!あたし、あの方を愛しているの!」
ベルナール「バカ!!」

けれど、拒絶の言葉はしっかりと兄を見つめて即座に返す。そんなクレモンティーヌの頬をつい平手ではたいてしまったベルナールは、カゴの中の花を散らして、左手で打たれた膝を付いたクレモンティーヌを見て一瞬うろたえるが、すぐに顔を引き締めて自らの決意を口にする。

ベルナール「…俺たちはこの国に革命を起こす!
      あいつらは敵だ!お前は敵の男に抱かれたいのか!?」
クレモンティーヌ「どうして同じ人間なのに憎しみあうのです!
         それより、もっと愛し合う事を…」
ベルナール「もういい!!今この時から、兄でもなければ妹でもない!勝手にしろ!!」

クレモンティーヌも立ち上がり、お互いの思いのたけをぶつける。
だが、クレモンティーヌの主張など到底聞き入れられないベルナールは、それだけを言い捨てると、上手へと走っていってしまう。
その背中に声をかけたくてもかけられないクレモンティーヌは、打たれた頬をまたそっと触り、ばらばらになってしまった花をまとめてカゴを手にすると、切ない表情で立ち上がり、歌う。

クレモンティーヌ「♪花は静かに咲いているけど 炎のような恋をする」

歌が終わると同時に、クレモンティーヌを乗せたまま舞台が回る。
舞台奥にかすかに青い光を残して、回転した舞台の向こう側は宮廷内部。
作りは先ほどの舞踏会と同じですが、場所は中庭のような場所のようで、大階段と左右の階段の間には松明の明かりが揺れています。
そこにいるのは司令官クラスの軍人たち。
下手には藍色の軍服を身に纏った軍人、ラスカル(レニ)。反対側の上手にはオンドレ。
そして、大階段の上には黒く、マントを羽織った軍服の二人より年を取った軍人(米田)がゆっくりと段上を行き来する。
かすかに聞こえてくる音は、銃撃。近くで、戦いが起こっている。

将軍「もうこの国は限界だ。民衆の怒りは抑えようはない。
   だが、我々軍人は国を守るのが役目だ。民衆蜂起を許すわけにはいかない!」
ラスカル「ですが将軍…!
     民衆蜂起が各地で一斉に起こったら、我々第二軍だけでは防ぎきれません!
     どうか今一度、三部会において民衆を抑えるようにと…」

段上の将軍が中央で立ち止まり、己の責務を口にすると、ラスカルが現状を冷静に判断し口を挟みますが、将軍は首も振らず否定の言葉を告げる。

将軍「時は逸した。
   民衆は王妃マリーに退位をせまり、王妃はそれを拒絶!…三部会は分裂したよ。
   (そんな…!と互いに驚きを隠さないラスカルとオンドレ)
   だが、我々は王妃の軍だ。そのことを忘れるな、ラスカル大佐。」
ラスカル「…は、はい。」

この国を襲う時勢の流れをわかっていても、軍人であろうとする将軍に、ラスカルは頭を下げる。
ですが、オンドレは前に出て将軍に申し出をする。

オスカル「お言葉を返すようですが、我々は民衆の部隊でもあるのではなのですか!?」
将軍「馬鹿を言うなオンドレ!!我々は貴族だ。貴族がいつ民衆のものになったのだ?
   お前…町の花売り娘と仲がいいようだが、それで頭がおかしくなったのかね。
   いいか(階段を降りながら)貴族が民衆に落ちることはあっても、民衆が貴族になることは
   この国が滅びたとして無のだ!!目を覚ませ!!」

きっとオンドレを睨む将軍。それにオンドレが何も言えないでいると、将軍は正面に向き直り、二人をそれぞれに見て指令を出す。

将軍「…さぁ、戦の準備をしなさい。負け戦と決まったわけではないぞ!」
ラスカル「はいっ」
オンドレ「……………」

だが、返事をしたのはラスカルだけで、オンドレはうつむいたまま何も言わない。
将軍が上手へと歩き去ると、ようやくオンドレが重い口を開く。

オンドレ「…僕はこの戦を止めたい!そして、皆が幸せに暮らせる術を話し合いたい…!」
ラスカル「もう遅いんだオンドレ…武装した民衆が王宮を取り囲んでるんだぞ。これは戦争なんだ…!」

到底叶わぬ夢を語るオンドレに、ラスカルは厳しい目と口調で告げる。
正面から視線がぶつかり合い、曲が流れるとオンドレが前に出て舞台の中央へ。

♪命のかぎり

オンドレ「♪闇よ聞け 世界の闇よ 争うことに何の意味がある」
ラスカル「♪友よ見ろ その目を開け 全ての人が豊かになれない」

そのオンドレの後ろから、現実を見ろと歌うラスカル。歌いながらラスカルが上手へ。入れ替わるようにオスカルは下手へ。
だが、そう歌われても、オスカルは首を振りさらに続ける。

オンドレ「♪そんなことは無いぞ 理想を掲げよう
      豊かな者が富を分けよう」

二人がそれぞれの場で前に出て、互いの主張を歌う。

オンドレ「♪全ての人が」
ラスカル「♪支配の無い国は」
オンドレ「♪愛を分かち合おう」
ラスカル「♪この世にありえない」
オンドレ「♪幸せになるため 武器を捨てよう」
ラスカル「♪秩序こそ 国のさだめ」

最後は、二人の瞳が再びぶつかり合う。ゆっくりと距離を縮めて、さらにラスカルが言い募ろうと口を開くも、それより早くオンドレが歌う。

オンドレ「♪愛を知り世界は変わる 全てを捨てよう
      僕は愛に生きたい」

もう、どう言っても自分の言葉はオンドレには届かない、と顔を伏せたラスカルは、オンドレから離れ、大階段の中腹へ。そこで「愛に生きたい」と歌うオンドレを見つめるため顔を上げると、はっと目を見開いてオンドレに叫ぶ。

ラスカル「危ない、オンドレ!伏せろ!!」
オンドレ「!?」

言われるまま、咄嗟に身を低くすると同時に、響く銃声。
それは、オンドレに駆け寄ろうと階段を降りようとしたラスカルに当たり…

ラスカル「っぁ!!」
オンドレ「ラスカル!?」

さらに続いた銃弾もラスカルの胸を突き、二発の銃弾を浴びたラスカルはその場に崩れ落ちる。
駆けつけたオンドレがラスカルの身を起こすも、助からない傷だと承知しているラスカルはオンドレに語りかける。

ラスカル「オンドレ…君は、綺麗な目をしているな。
     戦いには不向きな目だ。
     さぁ…行けよ。君の愛する人のところへ…
     (オンドレの胸の勲章を取って投げる)こんな、勲章など投げ捨てて…
     君のその愛を、貫け……!」

それまで主張していた軍人としてではなく、一個人として。
オンドレに伝え終えたラスカルの瞳を閉じてがくりと首から力が抜ける。

オンドレ「ラスカル!ラスカルっーーー!!」

親友の亡骸を抱き、泣き崩れるオンドレ。
だが、時は無情にも過ぎるもの。舞台が回ると同時に、大きな銃声が上がり、上手の客席通路からあの親子三人と二人の平民が木の棒や鍬、銃を手に現れる。

平民(西村)「火の手が上がったぞ!宮殿を目指せー!」
平民(アイリスたち)「おー!!」
平民(武田)「遅れるな!!」
平民(アイリスたち)「おー!!」

そのまま下手へと走り抜ける民衆を率いているのはベルナール。
斜面が前面にきた舞台の下手側で銃を構え、険しい顔で歌う。そのすぐ下の階段ではサブリーダーらしき男(ボス)も銃を構え、辺りを警戒する

♪悲劇

ベルナール「♪何故だ 人が人を支配する」
ベルナール・平民(ボス)「♪何故だ 一人だけが富を持つ」
平民(西村)「隊列を崩すな!」

ここで、上手の舞台奥から先ほどの親子たちも合流。さらに、上手、下手から次々に民衆が集まり、ベルナールを中心に陣を作る。

ベルナール「♪こんな国を誰が望んだ」
民衆「♪そんな国を誰が望んだ」

ベルナールとサブリーダーの男が前に出て交差し、ベルナールが上手、サブリーダーの男が下手のオケピ横に向かい、舞台の中央では親子三人を中心に群舞い。

ベルナール「♪ここは私たちの国ではないのか」
民衆「♪ここは私たちの生まれた大地だ」

戻る際に、銃を掲げ合いこの戦いにかける決意を確かめて、前を見据える。

民衆「♪この土地は父母が耕した 貧しさに泣きながら死んでいった
    この国に革命の狼煙を上げよ
    武器を持とう 未来のために戦おう」

それぞれが手にしている武器を掲げると同時に、大きな銃声と共に、高台部分に火花が散り民衆が腰を低くして警戒する中、ベルナールはすぐに真っ直ぐに立ち先導する。

ベルナール「怯むな、諸君!!この泥沼の貧困を打ち破る為に戦おう!
      美しい花を愛でる心を取り戻す為に、祖国の土となろう!
      そして…自由という名の美しい花を咲かせるんだ!
      わたしに続けーー!!!」

おおーーー!!という雄叫びと共に銃弾が飛び交い、柱は崩れ市内が戦場と化す。


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